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大会レポート③ 特別試合 松山聖陵OB対佐久長聖OB

 大きく盛り上がった記念セレモニーを終え、阪神甲子園球場では『あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会2020-2023~』の開幕試合となります、松山聖陵高校OB(愛媛)と佐久長聖高校OB(長野)による一戦の幕が開けようとしています。

 先攻は三塁側の松山聖陵、平成31年(2019年)の春の選抜以来となる甲子園です。松山聖陵は1番の川口選手から4番の西野選手までの上位打線4人連続で左打者が並んだオーダーとなっています。
 一方、後攻の一塁側の佐久長聖は春1回、夏9回と合計10回甲子園に出場。1番の山田選手から4番の堀選手までは長野県大会決勝のオーダーと同じ打順となっています。
 両校のスターティングラインナップは以下の通りです。

 審判がグラウンドに現れると、両チームの選手たちがベンチ前に並びました。例年の夏の甲子園ではベンチ入り選手は18名(20年の甲子園交流試合、および23年からは20名)ですが、本大会はベンチ入り人数の制限がないため、選手たちの列は非常に長くなっています。20番台後半の背番号をつけた選手の姿が見られるのもこの大会ならではです。
 審判の集合の合図と共に、選手たちが駆け出しました。いよいよ開幕試合の幕が上がります。

整列する両チームの選手たち

 整備されたまっさらなマウンドに上がったのは、佐久長聖の先発の小林禅投手。
 プレイがかかってその初球、小林投手のストレートはなんと149キロを計測しました。スタンドからはどよめきが起こります。
 そしてカウント1-1からの3球目、この日最速となる152キロを計測しました。
 実はこの小林投手、高校時代は外野手だったものの、高校2年生の時にケガの影響でマネージャーへ転向。2020年の"あの夏"もマネージャーでした。
 大学進学後もマネージャーを続けていたものの、ある日遊びで151キロを計測したことがきっかけで投手へ転向したという異色の経歴を持つ選手です。

佐久長聖の先発の小林禅投手

 そんな小林投手の速球に対し、松山聖陵の上位打線もバットに当てて食らいついていきます。初回からレベルの高い攻防に、場内も盛り上がります。
 小林投手は四球でランナーを1人出したものの、無失点で抑えました。

松山聖陵の2番打者の鎌倉昇磨選手

 その裏の佐久長聖の攻撃、マウンドに上がるのは松山聖陵の先発の佐藤宗哉投手。佐藤投手は直球と変化球を織り交ぜ、打たせて取るピッチングで佐久長聖の1,2番を連続で抑えます。

松山聖陵の先発の佐藤宗哉投手

 ここで迎えるのは当時のキャプテンで3番打者の藤原太郎選手。藤原選手は高校1年生のときに夏の甲子園に出場しており、その時と同じ背番号17番を付けて打席へと向かいます。

↓藤原選手のインタビューはこちらから!

 カウント2-1から迎えた4球目、低めの変化球を捉えた当たりはライトの頭を越えて長打に。藤原選手は快足を飛ばして一気に三塁まで進みました。
 キャプテンの一打に佐久長聖ベンチは大盛り上がり。喜びを爆発させます。

三塁ベース上でガッツポーズを見せる藤原太郎選手

 この一打に続きたい佐久長聖は死球で更にランナーを1人出し、迎えた5番北村大翔選手の打席。その初球がワンバウンドしてしまい、ボールは後ろへ。その間に三塁ランナーの藤原選手がホームベースを踏みました。記念すべき大会最初の得点は佐久長聖に入りました。
 初回二死からキャプテンの藤原選手が出塁して先制点を奪う展開は、奇しくもあの夏の長野県大会決勝の飯山高校戦と同じ展開となりました。

ホームインした藤原太郎選手を出迎える佐久長聖の選手たち

 なおも二死二塁と佐久長聖の追加点のチャンスでしたが、ここは代わった松山聖稜のサウスポー上田大樹投手がピシャリと抑え、最少失点で切り抜けました。

 続く2回表、佐久長聖の当時のエース、梅野峻介投手がマウンドに上がりました。あの夏の長野県大会決勝では9回完封、三塁を踏ませないピッチングでチームの優勝に大きく貢献しました。
 その梅野投手は打者3人を相手にパーフェクトピッチング、直球と変化球を織り交ぜ2奪三振の好投を見せました。

無失点に抑えて仲間とハイタッチする梅野峻介投手

 その裏、松山聖陵のマウンドにはエースナンバー1番を背負った金城善太投手が上がりました。
 安定感のあるピッチングでアウトを2つ取った金城投手。それに対して佐久長聖の8番打者、横田大智選手は追い込まれてからのボールを振りぬきレフト前へ。1回に続いて佐久長聖は二死からランナーを出します。

ヒットを放つ横田大智選手

 更に続く中野翔斗選手もレフト線へのツーベース。二死二三塁とチャンスを広げます。
 しかし金城投手は落ち着いていました。代打の小林星太選手から低めのボールで空振り三振を奪います。金城投手は3回裏もランナーこそ出したものの、無失点に抑えました。

2イニングを無失点に抑えた松山聖陵の金城善太投手

 そんな金城投手の力投に松山聖陵野手陣が応えます。4回先頭打者の重松健人選手が四球で塁に出ると、すかさず盗塁。一気に同点のチャンスを作ります。

4回表 先頭で打席に立つ重松健人選手

 続く西野日向選手も四球で出塁し、ノーアウト一二塁とチャンスを拡大します。
 これに続きたい松山聖陵打線でしたが、代わった佐久長聖の駒村祐輝投手が低めの変化球で空振り三振を奪います。ミットからボールがこぼれている間に二塁ランナーの重松選手が果敢に三塁を狙いますが、この回からマスクを被った土居健太選手が冷静に処理してツーアウト。結果的に三振ダブルプレーという形となりました。

佐久長聖の5番手の駒村祐輝投手

 しかし松山聖陵の攻撃は終わりません。6番の藤本泰成選手が四球で出塁すると、更にワイルドピッチで一打逆転のチャンスとします。
 ここで打席には代打の新藤晴日選手。カウント3-0で迎えた4球目が高めに大きく抜けてしまい、ボールはバックネットへ。その間に三塁ランナーの西野選手がホームイン。松山聖陵が同点に追いつきました。

同点のホームを踏み、ベンチで迎えられる西野日向選手

 なおもツーアウト一三塁と勝ち越しのチャンスでしたが、ここは代わった中村悠投手が三振を奪いチェンジ。松山聖陵は勝ち越しとはなりませんでした。

 4回裏、松山聖稜のマウンドに上がったのは高松亨有投手。高松投手は2019年の春の選抜でもマウンドに上がっており、およそ4年半ぶりに甲子園のマウンドへ戻ってきました。
 高松投手は華麗なフィールディングを見せアウトを奪うなど、4回裏をパーフェクトで抑えました。

松山聖稜の4番手の高松亨有投手

 勝ち越しの1点を奪いたい両チームでしたが、その後は互いに堅い守りも光り無得点。6回表の松山聖稜の攻撃を終えたタイミングで制限時間の1時間10分に達したため、大会規定によりここでゲームセット。試合は1-1の引き分けとなりました。

試合を終え、握手を交わす両チームの選手たち

 試合を終えた両チームの選手たちからは笑顔が溢れており、かけがえのない1時間10分となったのではないでしょうか。
 1-1引き分けという結果であったり、スタンドからは他の参加チームの選手たちがグラウンドの選手たちへ拍手を贈ったりと、勝敗を超越した大切なものが感じられる、そんな試合となったでしょう。

 両チームの選手成績は以下の通りです。

文:二瓶祐綺
写真:あの夏を取り戻せ実行委員会

 試合の模様はスカパー!の配信にて見ることができます。ぜひご覧ください。


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