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ウェルギリウスの『アエネイス』のあらすじ(挿絵つき)

 『アエネイス』は古代ローマの代表的な詩人ウェルギリウスの抒情詩である。完成までに10年ほどを費やした。彼自身の代表作であるとともに、古代ローマの代表的な抒情詩でもある。
 この作品は古代ローマがカエサルらの内乱からアウグストゥスの平和の時期へ移ったことを背景に制作された。古代ギリシャのホメロスの抒情詩『イリアス』と『オデュッセイア』の影響が指摘されている。また、本作はダンテの『神曲』などに大きな影響を与えた。


『アエネイス』(Aeneis)のあらすじ


 この物語の主人公は古代の国トロイの王子だったアエネイスである。トロイはギリシャとのトロイ戦争で敗北した。
 アエネイスはトロイの都市が滅ぼされていく中で、同胞を引き連れて、祖国を脱出する。イタリアでローマを建国するために、イタリアのラティウムを目指す。

父をかついで脱出するアエネイス

 だが、女神ユノはトロイ人がカルタゴの町を滅ぼす運命にあるとして、彼らがラティウムに移動するのを妨害しようとする。そのために、嵐でアエネイスの船を攻撃する。だが、アエネイスらはこの危機を乗り越え、アフリカ北部のカルタゴに到着する。

 アエネイスらはカルタゴで女王のディドに歓待される。アエネイスの母は女神のヴィーナスである。ヴィーナスはキューピッドを派遣して、ディドがアエネイスに恋するよう仕向ける。

 宴が開かれる。アエネイスはそこでディドに、次のようにカルタゴに到着するまでの放浪の旅を物語る。上述のトロイ戦争の最後に、ギリシャ軍が有名なトロイの木馬という計略を用いてトロイを滅亡させた。

 アエネイスは父や妻などとともにトロイを脱出した。だが妻は途中で没した。アエネイスはトロイの神々によって、イタリアに自分たちの栄光の未来が待っていると確信するようになった。そのため、イタリアを目指して出発した。
 だが、旅は困難にみまわれた。アエネイスらは途中で新しい都市を建設しようとした。だが、疫病などによって失敗した。 ハーピーに襲われ、父が道中で没するなど、苦難の末に、どうにかカルタゴに到着した。

ハーピーとの戦い

 ディドはアエネイスの話を聞き終わると、彼に恋をする。アエネイスもそれに応える。二人は恋人として過ごす。ディドはアエネイスがイタリアで建国しようとしているのを知り、いつかはそれについていきたいと思うようになる。

 神々はアエネイスに、カルタゴに留まらずに、イタリアで建国するという運命を思い出させる。そのため、アエネイスは同胞のトロイ人とともに、カルタゴを出発する。
 ディドはアエネイスの出立により、悲しみにくれる。彼なしでは生きていけないと感じ、アエネイスの置いていった品々を集めさせ、それらを燃やそうとしながら、彼の残していった剣で自害する。このディドの悲恋はこの物語でも特に有名な場面である。

ディドの死

 アエネイスらはシチリア島にやってくる。そこで、父の遺体を埋葬する。航海に疲れたトロイの女性たちは船を燃やそうとする。それは防がれる。一部の同胞をこの地に残して、アエネイスらはラティウムを目指して出発する。
 アエネイスらはナポリ近郊のクマエにやってくる。クマエでは、神託者のシビュラに導かれて冥界へ下っていく。

冥界をいくアエネイス

ここでは、亡くなったばかりの父に会う。これからアエネイスが築くことになるローマの栄光の未来がどのようなものになるかを見せられる。アエネイスは自身の使命が重要なものだと確信する。アエネイスは冥界から戻り、ラティウムへと出発する。

 アエネイスはラティウムに到着する。ここから、ローマ建国への試みが始まる。
 アエネイスはイタリアの支配者で王のラティヌスに会う。ラティヌスは自身の娘ラヴィニアが外国人と結婚するということを予言されていた。ラティヌスはその外国人がアエネイスだろうと考える。

ラティヌスと会うアエネイス

 だが、このアエネイスとラヴィニアの結婚に反対する者もいた。トゥルヌスがすでにラヴィニアに求婚していた。さらに、女神ユノもこの結婚に反対した。ユノはラティヌスの妻アマタに働きかけ、アエネイスの結婚に反対させる。
 小競り合いが生じたあと、トゥルヌスとトロイ人の間で戦闘が始まる。アエネイスは同盟相手を探しにゆく。トゥルヌスの敵だったアルカディア人が王子のパラスをアエネイスの同盟者として派遣すると決定する。トスカナ人も味方に加えるよう、アエネイスに説得する。
 アエネイスがこのように不在の間にも、トゥルヌスとトロイ人の戦いは行われていた。トロイ人はニソスとエウリュアロスが勇敢に戦って死ぬ。天上では、ユノとヴィーナスが言い争う。
 アエネイスは同盟者を率いて戦いに参加する。ヴィーナスから神々の新たな装備を受け取る。

新たな装備を受け取るアエネイス

パラスはアエネイスのために勇敢に戦う。だが、トゥルヌスがパラスを殺し、そのベルトを奪い取る。アエネイスはパラスの死を知って激怒し、敵軍を大量に殺す。主だった敵将をも倒す。
 両軍は死者の埋葬のために、一時休戦する。ラティヌスらはそもそも戦いをこれ以上続けるべきかを話し合う。外部からさらなる援軍が到来しそうになる。
 被害を抑えるために、アエネイスとトゥルヌスの決闘が提案される。決闘が準備される。トゥルヌスの敗北が予見される。二人が対峙する。

そのとき、トゥルヌスの妹らが両軍の対立を煽る。かくして、決闘ではなく両軍の戦闘が始まる。アエネイスは重症を負うが、ヴィーナスに治癒される。
 トロイ軍が優勢となる。これをみて、アマタはトゥルヌスが死んだと思い込み、自殺する。アエネイスとトゥルヌスは決闘を始める。アエネイスがトゥルヌスに決定的な一撃を加え、勝利が確定的になる。
 トゥルヌスは命乞いをする。アエネイスはトゥルヌスを殺さずにおこうかと考える。だが、トゥルヌスがパラスのベルトを巻いているのに気づく。アエネイスはトゥルヌスを倒す。


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おすすめ参考文献

ウェルギリウス『アエネイス』岡 道男訳, 京都大学学術出版会, 2001



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