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『生理は個性』 あなたは共感?それとも違和感?|REING NIGHT

Creative Studio REINGでは隔週の火曜日に『REING NIGHT(リング・ナイト)』というイベントを開催しています。主に広告・表現についてジェンダー的観点からお互いの意見や感じ方を対話するオンラインコミュニティです。

💜 REING NIGHTとは?
日本のジェンダーイシューについて視点を掛け合わす場、REING NIGHT。身の回りに溢れるTV番組、雑誌、広告、映画等、コンテンツにおける表現に触れることで、誰しもが知らず知らずのうちに「性別」によって、人としてのあり方や生き方を想定してしまっているかもしれない。これまで長い歴史の中で築かれてきた「男性として」「女性として」こうあるべきという見せ方や表現について、私たちは何をどう捉え、考えていけばいいのだろう。


「『生理は個性』 あなたは共感?それとも違和感?」

ー『生理は個性』、kosei-fulプロジェクトを問う

花王が8月にローンチした、生理用品のプロジェクト『kosei-ful』がSNSで賛否両論を巻き起こした。

現在、特設サイトは閉鎖され、kosei-fulプロジェクトは既に終了しているようだが、サイトでは「生理を“個性“ととらえれば 私たちはもっと生きやすくなる。」というメッセージを掲げ、同社の女性社員に対して実施されたアンケートの結果や、清野菜名さんを起用したspecial movieが公開されていた。

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このプロジェクトに対し、SNS上では「ネガティブな要素も“個性“として捉えるのはいいと思う」など肯定的な意見も上がったが、その一方で生理をキラキラさせることに対する違和感や、“個性“とすることで生理の辛さが透明化されるなど批判的な声も少なくなかった。

2020年9月1日に開催したREING NIGHTでは、

・『個性』というワードの使い方
・生理は誰のものか?

などについて約1時間半話した。この日は様々なジェンダー・セクシュアリティの11名の方がそれぞれの思いを語ってくれた。


🗣『生理は個性』という表現への違和感

・生理をポジティブなものだけに見せているような印象を受けて、違和感を感じた。…PMSがつらい方もたくさんいるのに、あまりに生理をクリーンなものだけに見せるのは違うなぁと思っている。
・今ある生理にまつわる社会問題の1つは、生理の辛さがあまり知られていないということ。生理の無い人もいるし、個人差があるのでPMSの軽い人もいる。個人差が大きいことだからこそきちんと話したいのに、今回のムービーやサイト上の表現では、生理の辛さの透明化に繋がると思う。生理はNOTキラキラしたモノ。ドロドロしていてめちゃくちゃ具合悪い。
・一見すると生理に理解を求めるキャンペーンに見えるけど、実際はなぜ生理は辛いのか、そのメカニズムなどには言及していない。
・生理用品のパッケージは質素でいいと思う。今回のサイトのようにキラキラ〜みたいにしちゃうと女性らしさのステレオタイプみたいなのを感じてしまう。生理に関してもっと公にすべきだと思うけど、やっぱりキラキラみたいなのが多いってことは”生理は汚い、他人に公に見せることができない”ということなのかなぁと思う。(生理の実態を)理解してもらう為にはもっと根本的な部分からアピールしていくべきだと思う。
同じ生理を持つ女性は一人もいない。女性同士のコミュニケーション不足が様々なすれ違いを引き起こしていると思う。例えばメンタル的・体力的に強い女性が上司だと、その人と同じくらい強くないと上に行くことができない。生理で辛いなんていえない。シスターフッドとは言ってもいろいろ女性間における問題がある。だから今回、個性という言葉はおかしいけれど、”生理は一人一人違うものだ”ということを会社の1つの取り組みとして話したことはすごく意義があるなと思う。このプロジェクトが”ファーストステップ”であることに期待している。


🗣 公衆衛生*問題としての「生理」を伝えていない

・「生理は個性」というと、まるで自分で選択したことみたいなニュアンス。生理は自分では選べないモノで、本来生理用品などは非課税に政治がすべきだと考える。でも、「生理は個性」というスローガンがあると、他の普通の買い物と同じレベルにされちゃう気がする。ファッションと同じレイヤーの話では無いよね。
・生理を個性とすることは、生理を公衆衛生問題と捉えることに真っ向から反対することではないだろうか。相容れない主張だと思う。


公衆衛生=地域社会の人々の健康の保持・増進をはかり、疾病を予防するため、公私の保健機関や諸組織によって行われる衛生活動。母子保健・学校保健・老人保健・環境衛生・生活習慣病対策・感染症予防など。(参照:goo国語辞書

🗣広告表現における問題点も浮き彫りに

・わたしの周りにも月経困難症の人がたくさんいるけれど、生理の重い人って残ってないなと感じている(会社内で生き残れない)。だから広告に関しても生存者のバイアスがすごく強いのかなと思う。
・そもそも企業として生理休暇ないやんって感じで、詭弁になってしまっているなというのが一番大きいと思う。企業がそもそもその問題にどう向き合っているのかという文脈をすっ飛ばして、消費者の意識を変えようとするみたいな広告の作り手の感覚が嫌だなと感じる。広告やCMで伝えることと、企業がアクションとしてやっていることをセットにしなきゃいけないと思っている。
・言葉ってすごく暴力だなと思っていて、短ければ短いほど一人一人解釈も違ってくる。日本のCMはキャッチコピーを必要とするけれど、それをするから雑になっちゃって結局炎上するのかなと思う。


すベての人を尊重する表現を、諦めない


ここ数年で、広告・プロジェクトがSNSで炎上することが増えてきた。企業が社会問題やジェンダーの課題に向き合う姿勢にエールを送りたい一方で、意図が見えづらかったり、歴史的に議論されてきた背景や課題を踏まえられていない発言等が原因で、残念ながら中止や撤回に追い込まれる例も少なくない。

今回の議題元となった生理にまつわる表現。この国では、生理用品の広告はしばしば「晴れの日」「白いズボン」「にこやかな女性達」で構成され、”ハッピーなもの” "キラキラしたもの”として表現されてきた。広告の中では商品の機能性や使い心地が強調され、吸水力の実験では”赤”ではなく”青い”液体が使用されたりする。

近年、海外では生理用品の機能性よりも生理自体の辛さや生理中の女性のリアルな姿を取り上げる広告が話題となり、議論の中でも実際に幾つかのCMを見て感想を話し合った。一部をご紹介する。

生理のタブー視に疑問を投げかける(イギリス)

生理は具合の悪いものであることを表現(インド)


このCMを見たメンバーからは肯定的な感想もあった一方で、

自分の性器のことについてあまり男性に知られたくない。血を赤で表現するのはいいと思うけど、実際に男性に自分がトイレで具体的にどういう行動をしているのかを知られるのは嫌だなと思う。

という声も上がった。

まだまだ生理についてオープンに語ることがタブー視されている日本。

生理は個人差の大きいものであり、生理のある人同士でもすれ違いは起こり得る。お互いを知るため、尊重し、共に生きていくために。生理の辛さが透明化されない社会、生理のある人たちが生理を理由に損をすることのない社会のために人々の意識を変えたい。広告にはそんな力があると私たちは信じている。

「生理」は誰のものなのか?


議論の最後にはこんな意見が上がった。

・どうしてここまでプロジェクト内で女性を前面に押し出してきたのかな?と疑問に思う。生理は”女性性の象徴”として捉えられていて、閉経した女性のことを「女として終わったババァ」などという人もいる。本来「生理=女性」ではないはず。だから広告やパッケージに気をつけないと、トランス男性が買いにくかったりするんじゃないかなと思う。


全ての”女性”に月経があるわけではないし、”女性”だけに月経があるわけでもない。
例えばトランスジェンダー女性、子宮を摘出した女性、また閉経した女性は”生理のない人”である。また”生理のある人”の中には、トランスジェンダー男性やノンバイナリーの人も勿論含まれる。

その他にも、例えばインターセックス(DSD=Disorders of Sex Developmentの略。男性と女性の生理学的性質を不完全ながら両方とも有している人をさす)には、両性の生殖器・染色体・ホルモンなどの組み合わせによって60以上とも言われるパターンが存在し、その中には”生理のある人”も”ない人”もいる。

REINGでは「生理=シスジェンダー女性」と捉えていない。様々なジェンダーの人に関わる問題だ。生理用品の広告やパッケージデザインには、まだまだ議論の余地が残されているが、どのような表現であれば「生理」に向き合う人々に寄り添っていけるのだろうか。

皆さんと視点を交わしながら考え、二人三脚で進んで行きたい。


Writer : Ai O’Higgins
Editor:Yuri Abo


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