さかなおと

隔週日曜日に、『生活に寄り添ってくれた音楽たち』というタイトルでエッセイ形式の短い文章を更新しています。

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最近の記事

生活に寄り添ってくれた音楽たち/あの日の横顔

「SMAP×SMAP」の最終回で、SMAPのメンバーが「世界に一つだけの花」のパフォーマンスを披露して、最後は横一列になり深々とお辞儀をしながらその前を緞帳が下がっていく。テレビに映るその画面を母は泣き崩れながら観ていた。僕は母に何と声を掛けていいのか分からず、その背中をただ見ていることしか出来なかった。 2016年12月31日、SMAPは解散した。 僕が幼い頃からSMAPの大ファンだった母は、家でずっとSMAPの音楽をかけていた。その影響か僕も大体の曲を知っているくらいに

    • 生活に寄り添ってくれた音楽たち/憂鬱 蹴飛ばして

      職場に向かうだけで嗚咽が出てしまう日々が続いたことがあった。仕事中も時々口に手を当てて抑えるのに必死だったことも鮮明に思い出せる。身体が完全に拒絶反応を示していたのにも関わらず、慣れるしかないと重い腰を無理矢理起こしていた。日常に光が見えなくて時々Twitterで「死にたい」と呟いてしまったことがあり、それを見かねた親友がすぐに飲みに誘ってくれた。 この頃楽しみしていたのが「森、道、市場2023」というラグーナビーチ / ラグナシアで三日間かけて開催される音楽フェスで、大好

      • 生活に寄り添ってくれた音楽たち/「月の撮影会しようよ」

        この投稿日の三日前、今年最大のスーパームーンが見れるとのニュースを知り、今はもう疎遠になってしまった人のことを思い出していた。 中学校三年生までずっと一緒だった友人がいた。 とにかく2人で遊びに行ったりゲームもしたし、高校受験に向けて同じ塾に通ったりもした。 部活動も同じで苦楽を共にした、と言いたいところだけど正直部活は辛い思い出しか無かったような気がするので、お互い口を開けば今でも愚痴ばかりになってしまいそうだ。 彼は自分の名前がコンプレックで、大人になったら市役所に行

        • 生活に寄り添ってくれた音楽たち/生きていきましょう

          仕事帰りに車の中で「星野源のオールナイトニッポン」を聴いていた。源さんがリスナーから届いた甘酸っぱい恋の話のメールを読んだときに「くぅ〜っ!」っと言うことが多いので、その日の放送も源さんがメールを読み終わったタイミングで僕は1人で「くぅ〜っ!」と言ってみたら、源さんと僕の「くぅ〜っ!」がシンクロしたことがあった。少し恥ずかしくなってしまったけど、こういうのってラジオの醍醐味のような気がして僕は同じくらい嬉しかったし、大袈裟かもしれないけど生きてて楽しいと感じる瞬間でもあった。

          生活に寄り添ってくれた音楽たち/「さっきすごい偶然が起きたんですけど」

          遠くから鳴り響いてくる機械音のメロディが誰の何の曲かどうしても思い出せずにいた。職場の工場で機械が作動中ということを周囲へ知らせるために機械音で音楽が流れているのだが、どこかで絶対聴いたことがあるのに思い出せないというモヤモヤに悩まされていた。 僕の職場に今は異動になってしまった同い年の先輩が居た。社歴が彼の方が長かったので当然敬語を使って接していたけれど、僕と同じでロックバンドのライブによく行くという話で盛り上がったりして仲良くさせてもらっていた。先輩はユーモアがあって話

          生活に寄り添ってくれた音楽たち/「さっきすごい偶然が起きたんですけど」

          生活に寄り添ってくれた音楽たち/「先生、修学旅行に音楽プレイヤーを持ってたらダメですか?」

          すっかり暗くなった空の下、僕たちクラスメイトを乗せたバスは、ガタガタ揺れながら東京スカイツリーへ向かっていた。この時、誰よりも心を躍らせていた。 当時中学三年生だった僕は、サカナクションの音楽にとにかく夢中になっていた。自分の生活に音楽が加わったきっかけのロックバンドで、人生で初めて音楽ライブに行ったのもサカナクションだった。 「ユリイカ」は東京の風景やこの街にミュージシャンとして生きている山口さん自身の葛藤を歌った曲だと僕は思っているが、ミュージックビデオに東京の街の映像

          生活に寄り添ってくれた音楽たち/「先生、修学旅行に音楽プレイヤーを持ってたらダメですか?」

          生活に寄り添ってくれた音楽たち/あの日は真夏日じゃなかったけれど

          2年くらい前、僕は今より人生に対する絶望感がかなり強かった。仕事をするにも毎日不安に駆られながら「この仕事向いてないよ」と毎日心の中で呟いていた。どうにか一日無事に終わったと安堵しては、帰宅してからどっと疲れてしまうような日々が続いていた。当時同じ職場に居た先輩にキツイことを言われて涙を堪えるのに必死になった日もあった。この仕事を定年まで続けていく自信がない。漠然とそんなことを思いながらもどうにか毎日出勤していた。 ロックバンドの『くるり』を一番長い時間聴いていたのはこの時

          生活に寄り添ってくれた音楽たち/あの日は真夏日じゃなかったけれど