生活に寄り添ってくれた音楽たち/憂鬱 蹴飛ばして
職場に向かうだけで嗚咽が出てしまう日々が続いたことがあった。仕事中も時々口に手を当てて抑えるのに必死だったことも鮮明に思い出せる。身体が完全に拒絶反応を示していたのにも関わらず、慣れるしかないと重い腰を無理矢理起こしていた。日常に光が見えなくて時々Twitterで「死にたい」と呟いてしまったことがあり、それを見かねた親友がすぐに飲みに誘ってくれた。
この頃楽しみしていたのが「森、道、市場2023」というラグーナビーチ / ラグナシアで三日間かけて開催される音楽フェスで、大好きなくるりの岸田繁さんやASIAN KUNG-FU GENERATION(以下アジカン)の出演も決まっていた。飲みの席でこの話を親友にするとすぐに2人で行こうということになった。
開催までほんの数日となったある日、ベッドで死んだように横たわっているとスマホに通知が鳴った。岸田繁さんが新型コロナウィルスに感染し、出演を見合わせるとのことだった。楽しみが半減してしまったような気がしたけど、また来年リベンジしてくれることと回復を祈るしかなかった。でもヘッドライナーのアジカンもいるし人生で初めて親友と音楽フェスに行くことへの期待感の方が勝っていた。
どうにか日々をやり過ごして当日を迎え、「GLIM SPANKY」「Lucky Kilimanjaro」「のん」のステージを食べたり飲んだりしながら存分に楽しんだ。そしてアジカンのステージを胸を躍らせな待機しているとき、本当に感慨深い気持ちになっていた。思えば中学校で友達になったときから彼はアジカンが好きなんだと話していた。学校終わりに家に遊びに行った時に「ムスタング」のMVを見せてくれたり、僕はもう辞めてしまったけど当時からギターが上手な彼は色々と弾いて見せてくれたりしていたのをよく覚えている。そんな日々のことを思い出していたらメンバーが登場した。彼も初めてアジカンを生で観るとのことだったので本当に嬉しそうだったし、僕も一緒に観ることが出来て嬉しかった。
音楽フェスならではのセットリストで「Re:Re」「リライト」「ソラニン」等の代表曲や、僕は恥ずかしながら『ぼっち・ざ・ろっく!』で初めて知った「転がる岩、君に朝が降る」や、「今を生きて」「柳小路パラレルユニバース」で大いに盛り上がった。アンコールではアジカンの前にステージに立っていたのんさんも登場し「Beautiful Stars」を一緒に演奏してくれた。そしてラストの「Be Alright」は感動した。みんなで歌うようなあの雰囲気が大好きで、イベントが終わった後も繰り返し聴き続けてはあの夜のことを時々思い出したりしている。
終演後、僕らは名残惜しくてすぐには帰らなかった。飲食の売店がまだやっていたので、お酒を飲んだりラーメンを食べたりして余韻に浸っていた。近くの広場でアフターパーティーをやっていて、DJが音楽を流していたのでちょっと踊ってみたり、大好きなくるりの「ハイウェイ」やFishmansの「いかれたBaby」が聴こえてきたときは一緒に歌ったりもした。窮屈で憂鬱な日々からの反動で完全に楽しく酔っ払ってしまい、お互いおかしくなってゲラゲラ笑いながら恥ずかしげもなく「最高の夜だ」とか「もうダメだ、水飲まなきゃね」なんて言いつつフラフラになりながら帰りのシャトルバスまでどうにか歩いて行った。
あの日以来、楽しく酔っ払ったことは一度も無い。普段あまりお酒を飲まない自分が、人生であんなに楽しく酔っ払うことが出来たのは、大人になるまで生きてきたご褒美のような気がして何だか嬉しかった。
そして多分このnoteを読んでくれている親友に言いたい。あの日一緒に行ってくれて本当にありがとう。来年こそはまた一緒に行きましょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?