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体が衰え、記憶力も不安な老女が、かっこいい

若い時と比べて身体の動きに衰えを感じる。
以前ははっきり覚えていたことを忘れて思い出せず、記憶力にも自信がなくなる。
家族はいない。
一緒に暮らしている犬も高齢だ。
いつか、一人暮らしの部屋で死んでいるのを、他人に発見されることになるかもしれない。

そんな不安を感じている老女が、ものすごくかっこいい。
小説「破果」(ク・ビョンモ著、小山内園子・訳)は、老女の殺し屋(防疫業者)・爪角(チョガク)が主人公の物語だ。

老いのためか、殺しのターゲットに反抗されて、爪角は傷を負う。
防疫業者と繋がりがある医師に診てもらおうと向かった医院で、若い男性医師に出会う。
彼は防疫業者と繋がりはないが、爪角を手当てし、彼女が服に隠していた血の付いたナイフについて何も問わない。男性医師を殺してしまうこともできるが、爪角は彼に一つの借りをつくったままにする。

爪角の前に、若い男性の殺し屋がうろつき始める。
彼は、子どもの頃に父親を爪角に殺され、爪角の顔を目撃していた。
大人になり、殺し屋となり、爪角に執着している。

男性医師と、男性殺し屋との関わりによって物語が大きく展開する。
クライマックスとなる因縁の相手との対決で、爪角は勝利し、生き残ることができるのか。最期を迎えることになるのかは、読者のお楽しみだ。

この作品は、ドラマ化・映画化を期待する声が多いという。
老いた老女の骨や皮膚の様子、死んでいく人の身体や表情の動き、血液やマニュキアの色彩の描写が上手く、読者の頭の中に映像を浮かんでくるからだろう

週末の読書に、お勧めの1冊。


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