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【読書感想】鍵のない夢を見る/辻村深月
[ネタバレを含みます]
4つ目の「芹葉大学の夢と殺人」がよかった。
純粋に夢を見続け自分にとって都合の良い解釈で生きている彼と、夢は霞んで現実に生きる主人公。主人公は彼に自分だけを見て欲しかった。執着して欲しかった。それが叶わなかった主人公は、最後は自ら飛び降り、祈る。どうか彼が死刑になりますように、と。あなたが生きる世界はこの世のどこにもない、と。これはなんと表現したら良いだろう。主人公の最後の純粋な夢と言えるだろうか。わがままとも言えるだろうか。彼女は、彼女の思いを、消えることのない決定的な形で彼に示したのだった。
大人になると皆、現実に生きる。子供の頃の純粋な夢は叶わない。現実に折り合って生きていかなければならない。
だけど、決して夢を忘れたわけではない。忘れてはいないけれど、夢を諦めながら生きている。純粋な祈りをぶつけようとしたら、彼女の場合は死をもってそれを示すこととなったのだろう。
◆読了日
2020年8月30日
◆読んだキッカケ
本を買う時にセットでついてきたのがきっかけ。直木賞受賞作だし、ミステリーじゃない辻村さんも読んでみたいと思った。
◆あらすじ
直木賞受賞! 私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集
どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。
◆おすすめポイント
新しい辻村さんを知れた気がした。4つ目の「芹葉大学の夢と殺人」が印象的だった。夢をもつことと、大人になること。その狭間ですれ違う主人公と彼。最後の展開は息が止まるほどの迫力でありながら、祈りと儚さをもった繊細な文章に魅了された。
◆おすすめ度
2/5