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目標に一歩ずつ歩まない


2021年に書いて下書きに眠らせていたものです。
今更ですが、たまに読み返したくなる学びがあるので載せます。



現在大学3年生、留学を目前に控えている私はよくある質問をされる。

「何を勉強しにイタリアに行くの?」


これに答えるのは簡単だ。

「地方創生のためのアグリツーリズモ(農村観光)を勉強しに行きます。」


だが、こう答えると次はたいていこう言われる。

「じゃあ将来、アグリツーリズモで地元に貢献するんだ!」
「就職は東京じゃなくて地元?」


正直、こう言われると困る。
そして私はあまり器用ではないので、うまく返せない。

だって、まだ留学してもないのにそんなこと分かるわけないじゃないか。
留学中にどんな出会いがあるかもわからないのに、そんな約束できない。

それに私の専門は農業でも観光でもなく、文化人類学と教育支援だ。
教育支援や人材育成に携わりたいという中学生からの思いはそう簡単に捨てられない。

私が熱中しているのはアグリツーリズモだけじゃないのだ。
ひとつになんか絞れない。
でも、社会人として責任ある立場になったら、両立することは難しいのかな…

奨学金をもらい、たくさんの人に応援してもらっている手前、必ず恩返しはしたい。
だが、期待に添える形になるかどうかは正直何とも言えない。


そんなわけで帰国後すぐに考えなければならない就職活動と、留学のテーマを考えてモヤモヤ過ごす日々が流れていた。



「『その日暮らし』の人類学」を読む


今日、なんとなく家の本棚に目をやると、買ったまま積読していたある本が目に留まった。

タイトルは「『その日暮らし』の人類学


目次をめくると、目に留まった項目は

「仕事は仕事」の都市世界-インフォーマル経済のダイナミズム

「インフォーマル経済」も「ダイナミズム」も意味は分からないが、なんとなく惹かれたのでページをめくった。


そこに書かれているタンザニア人夫婦の生き方に、私は救われた。



彼らは、しょっちゅう仕事を変えていた。
建築業をやったり、日雇い労働者になったり、服飾職人になったり、バイヤーになったり、ドーナツ売りになったり…
そのため、いろんな市に引っ越して各地を点々としていた。

なぜそんなに頻繁に職や居住地を変えるのかというと、明日がどうなるかが分からないからだ。
日本よりもずっと不安定な社会状況だ。
仕事がうまくいかなくなるなんて日常茶飯事で、仕事を変えざるを得ないのだ。
それに、うまく行きそうなアイディアが思いつくことだってある。
生活が安定したら、それを実行しない理由はない。


彼らの生活をもとに筆者は以下のように述べていた。

目標に向かって「一歩、一歩(step by step)」突き進むことが「当たり前」のように語られる日本

(中略)さまざまな事業のアイデアは捨てられることなく維持され、偶然に積み重ねた経験や人間関係、その時々の状況に応じて柔軟に変更されつつ、実現する時には実現する。

私たちはよく「理想」や「夢」を描く。
それがいつしか達成しなければいけない「目標」になる。
そして目標と「今の自分」を一直線に結び、一歩一歩進むことが当たり前なのだ。

でも私にはそれが苦しかった。
未来のことなんて分からないんだから、夢は夢のままだ。
目標に据えるほど、信頼を置けない。
信頼を置けないものに一直線に進むなんてかえって怖い。
いろんな職種やアイデアに寄り道したらいけないんだろうか。

そこに「今」を生きるタンザニア人から答えをもらった気がした。
未来のことなんて分からない。
でも「今」を生きていれば、その積み重ねで偶然つかんだ経験や人脈が、いつかアイデアを活かすタイミングが来る
、と。


ただ、そのタイミングをつかまえるために必要なことも書かれていた。

いま可能な行為には何にでも挑戦すること、そのためにはつねに新たな機会に身を開いておき、好機を捉えて、いまこのときの自分自身の持っている資源を賭けていくこと

常に「いま」に全力なのだ。それでいいのだ。
いま私ができることを、できるフィールドで全力でやる。
会いたい人とご縁をむすぶ。
いつかやりたいことは、きっとやるにふさわしいタイミングがやってくる。


将来のこと

帰国後どうするかなんて、相変わらず分からない。

でもそれでいいやと思えた。モヤモヤする必要はない。
「その日暮らし」でいいのだ。

寄り道万歳。
たくさんの道を歩めるのはしあわせなことだ。

最後に、文化人類学と偶然の本との出会いに感謝。
文化人類学のすごいところは、生き方をユニークな視点で見つめられるところだと思う。
生きづらさを感じたら、つらいことにぶち当たったら、どこかの誰かの日常に触れてみようと思う。

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