未練という幽霊
――実体がないし、目には見えない。でも、確かに存在している。まるで幽霊のような未練が、誰の心にも憑いているんです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。
今回は「未練という幽霊」というテーマで話していこうと思います。
📚胸のなかで燻っている光
僕のまわりにいる友達なら、僕が懐かしみたがりな人であることをよく知っていると思います。思い出に縋りがちで、その眩しさに涙を滲ませることもあるそんな人なんです。言い方を悪くすれば、未練がましい人、なんですね。
人並みに恋をしてきた僕だけど、いつまでも続くと思っていたその関係が終わる度に酷く心を痛ませて、ふたりで歩くはずだった未来の道をひとりで歩きながら、空に思い出を並べてきたものです。
もう恋なんてしない、なんて思うけれど、そんな未練を吹き飛ばすほどの突風が吹けば、僕は性懲りもなく新しい「ふたり」を始めてきました。
そんな風に心に馬鹿正直に生きていると、いつの間にか輝きを増した思い出たちが背中の向こうに生まれ始めるんですよね。もう戻れない僕のことを嘲笑うかのように、瞬いて光ってみせてくる。心に余裕がないときは目が眩んでしまうんだけれど、それでもふとしたときに振り返りたくなってしまうんです。
そして、振り返る度に、自分の胸のなかに燻っている光に気付くんです。後悔なのか、哀惜なのか、遣る瀬無さなのか、その正体は分からないけれど、悲しいくらいに光っているものが、胸のなかにあるんです。
📚振り返っても姿はなくて
大学生が終わって、学生という肩書きを使えなくなって、早いもので1カ月半が経ちました。大学生が終わることを憂えて、これでもかといういうほど自ら盛り上がりをつくっていったことを思い出します。
学生最後のイベントとして「BOOK TALK LIVE "桃太郎"」を開催しました。卒業研究のテーマだった「桃太郎」の歴史や魅力を、僕が1時間かけて物語るというイベントです。桃にちなんで、3月3日に開いたんです。イベントは無事に終了。5人の運営スタッフに恵まれ、17人のプチスポンサーに恵まれ、47人のお客さんに恵まれました。
その流れで、「桃太郎合宿」というイベントを企画しました。。参加者同士で絵本『桃太郎』の物語を共同創作しようという内容。noteで知り合った大谷さんのご自宅を宿泊場所にして、ひたすら創作するだけの3日間を過ごしました。
茨城の魅力を発信するプロジェクトSETTENのワインを飲み比べするイベントにも参加したし、同じ大学の同級生に駆け出しのミュージシャンいるんですが、彼のワンマンライブにも参加してきました。
高校の同窓会を企画して運営することもやりました。100人以上の同級生たちの再会の場をつくることができて、たくさんこ笑顔も感謝の言葉をもらうことができました。
卒業式当日は生憎の雨でしたが、4年間共に過ごしてきた学科の友達との最後の時間を過ごすことができたし、元カノと写真を撮って「また今度ふたりで呑もうね」と約束を交わすこともできた。その日の夜は元バイト先のパーティに参加して、行きつけの洋風居酒屋に立ち寄って、最後はお世話になったシェアハウス「はちとご」へ。管理人のはやぶささんからは卒業祝いの花束をもらいました。
翌日にはペーパードライバーからも卒業して、パートナーと一緒に大洗の海へ。透き通るような渚に差し込む西陽の揺らめきに、僕らは言葉を飲みこみました。
あんなにも眩しかった大学卒業間際の思い出たち。確かに存在していたはずなのに、今、こうして振り返ってみたら、そこに姿はありません。本当にそんなことがあったのか疑ってしまうほど、思い出というものは影の薄い存在です。
でも、思い出をみつめると、確かに動く心がある。物理的に力が加わったわけじゃないのに、風に、声に、匂いに、言葉に、物語に、感動を覚えます。それは「未練」と言い換えても差し支えないものでしょう。
実体がないし、目には見えない。でも、確かに存在している。まるで幽霊のような未練が、誰の心にも憑いているんです。
📚未練という幽霊
僕は今、『花火の幽霊』という物語をつくっています。僕の職場である木の家ゲストハウスで謎解きイベントを開催することが決まり、僕がそのストーリーを考えることになったんです。そのストーリーが『花火の幽霊』なんです。
僕がやるからには、えもいものがいいなと思っていて、分かりやすくえもくするために、花火を題材にすることにしました。そして、分かりやすくミステリーを表現するために幽霊を取り合わせてみることにしました。
そこからテーマを決めていく、という流れだったんですが、それを決めるのに時間はかかりませんでした。今回の記事の流れから察しはつくことでしょう。
そう、「未練」です。
未練をテーマにした『花火の幽霊』という物語をベースに謎解きイベントを展開していこうと考えているのです。
誰にだって未練のひとつやふたつあるじゃないですか。恋愛に限らず、「あのときなんでこんなこと言ってしまったんだろう」とか「選択を間違えてしまったなあ」とか「青春をやり直したいなあ」とか。誰しもに心当たりのある「未練」を題材にすることで、万人の感動を生む体験を提供できると踏んでいます。
「未練」の物語を書くとなったら、僕はどうしても自分と重ねてしまうところがあるので、より熱を込められるし、愛着が湧いて届けたいという気持ちが強まります。その勢いに任せて、物語の完成と、イベントの完遂を目指していきますね。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20240518 横山黎