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20年越しの伏線回収。
――ドラマにしろ小説にしろアニメにしろ、「伏線回収」がヒット要素のひとつになっている風潮がありますが、それはきっとフィクションのなかの伏線回収に限らないんじゃないかと思うのです。
人生は物語。
どうも横山黎です。
大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。
最近は音声配信も始めました。毎週金曜日22:00から僕のお気に入りの本を紹介するライブ「FAVORITE!!」を開催しています。興味を持たれた方は是非遊びに来てください。
今回は「創作のなかだけでなく現実世界で果たされる伏線回収にも、人は心を動かされる」というテーマで話していこうと思います。
📚「くるみ」から20年後の未来
昨日、Mr.Childrenの最新アルバム「miss you」から、「Fifty’s map~おとなの地図」のMVが公開されました。
僕はすっごいミスチルファンというわけではないけれど、それでもデビューから30年を過ぎてもなお第一線を走るモンスターバンドの行方を追わないわけにはいきません。単純に好きな曲もたくさんありますしね。「GIFT」とか「皮膚呼吸」とか「himawari」とか「Everything(it’s you)」とか「忘れ得ぬ人」とか。
最新曲も追いかけるようにはしていて、昨日公開された最新曲のMVもすぐに視聴しました。「Fifty’s map~おとなの地図」という曲なんですが、この曲が、というより、この曲をつくろうと思った姿勢、MVの演出に凄みを感じました。
というのも、20年前にリリースされた「くるみ」のMVをセルフオマージュしたMVだったのです。
「くるみ」は、2003年にリリースされた25枚目のシングルで、映画『幸福の食卓』の主題歌にもなりました。特に印象的なのがMV。ミスチルの4人がおじいちゃんになったときの物語を描いているんです。おじいちゃんになっても一度あきらめた音楽の夢を捨てきれずにメンバーを呼んでもう一度音楽に向き合っていく様子を描いています。
「くるみ」に込められている意味は、「いつか来る未来」。未来は、今の自分をどう見ているんだろうという疑問を向き合うことで、これからの生き方を見つめ直していく物語が歌詞のなかにもあります。
20年後の今、「くるみ」のMVで描かれた未来になって、つまり50歳を迎えたミスチルになって、今までのことをどう受け止め、これからのことをどう考えているのか、「Fifty’s map~おとなの地図」の楽曲、MVを通して表現されているのです。
20年越しの伏線回収にファンは歓喜。コメント欄には温かい言葉が溢れていました。僕は20年前からミスチルを知っていたわけじゃないけれど、それでもこの演出には心を動かされたし、音楽で生き様を表現していく姿勢に感銘を受けました。
📚「桜」から20年後の未来
「20年越しの伏線回収」という言葉を聞くと、僕はコブクロの「晴々」のMVを思い出します。結成20周年の記念につくられたアニバーサリーソングで、20周年ライブで初披露されました。
「晴々」には、他のアーティストの楽曲にも見られない特徴があります。その歌詞が、これまでのコブクロの楽曲のタイトルや歌詞を繋ぎ合わせてできているんです。たとえば、1番のAメロは次のようなフレーズです。
名も無い命の塊がアスファルトを押しのけて
ここにしか咲かない花の蕾に変わった
1行目は、コブクロの結成のきっかけにもなった「桜」の歌詞、
名もない花には名前を付けましょう この世に一つしかない
冬の寒さに打ちひしがれないように 誰かの声でまた起き上がれるように
土の中で眠る命のかたまり アスファルト押しのけて
会うたびにいつも会えないときの寂しさ
分けあう二人 太陽と月のようで
から引用されたものだし、2行目の歌詞は、「ここにしか咲かない花」「蕾」という曲のタイトルから構成されています。他のフレーズも、コブクロが20年間でリリースしてきた楽曲に込められた言葉たちで構成されているんです。
そんな「晴々」のMVは、初披露された20周年ライブの様子を軸に、他の曲のMVや過去のライブ映像、デビュー前の路上ライブの映像など、20年分の映像を繋ぎ合わせたもの。
歌詞にしろ、MVにしろ、今までの20年があったからこそ生まれたというわけです。20年間のうちに張られた伏線を一気に回収しにいった感動の一曲でした。
きっと探せば似たような試みを果たした曲はたくさんあると思います。僕が知っているなかでいえば、他にゆずの「NATSUMONOGTARI」が挙げられますね。17年前にリリースされた「桜木町」のアフターストーリーとして書かれた曲です。「桜木町」のMVに出演していた石原さとみさんが「NATSUMONOGTARI」でも出演したことでも話題になりました。
長い年月をかけて伏線を回収しにいく楽曲を紹介してきましたが、今回僕が言いたいことは、「創作のなかだけでなくて現実世界で果たされる伏線回収にも、人は心を動かされる」ということです。
📚現実世界で果たされる伏線回収
今回紹介した伏線回収は、歌詞のなかの物語やMVの物語のなかではなく、現実世界でリリースされた楽曲たちの結びつきのなかで起きたことじゃないですか。ドラマにしろ小説にしろアニメにしろ、「伏線回収」がヒット要素のひとつになっている風潮がありますが、それはきっとフィクションのなかの伏線回収に限らないんじゃないかと思うのです。
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僕自身、自分の人生のなかで伏線回収に立ち合えた瞬間はたくさんあります。子どもの頃から創る人であったし、そのあたりの感度が高かったからかもしれませんが、回収された伏線にいちいち感動してきました(笑)
僕は第一志望校の二次試験の試験日を間違えて大学受験に失敗した過去を持っていますが、そのせいで東京を離れ茨城の地を訪れることになりましたが、今ではあのとき間違えて良かったと思えるようになりました。
茨城での出逢いが、生活が、活動が、あのときの間違いに意味を与えてくれました。今の僕が自分のやりたいことをやれていたり、自分の想像もしないような出逢いに恵まれたり、幸せな日々を過ごせているのは、試験日を間違えたおかげなんです。
そう思えたとき、僕は自分のなかで、「試験日を間違えた伏線が回収された」と思い至ったのです。そのときの快感、充足感は計り知れないほどです。
やっぱり現実世界で起きた伏線回収も、いや、むしろ現実世界で起きた伏線回収の方が意味や価値を感じることができるのではないかと思います。
ちなみに僕が自分の人生のなかで張られた伏線を回収しにいった小説が、『Message』です。成人の日を舞台にしたヒューマンミステリーで、20年分の思いが込められています。つまり、これも20年越しの伏線回収を果たした作品です。
僕が生まれた意味、生きてきた意味、そして、生きていく意味を閉じこめた小説です。興味を持たれた方は是非、以下の記事をのぞいてみてください。試し読みできます。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
20231004 横山黎