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「ヨシタケシンスケ展かもしれない」に行ってきた。

ーー「ヨシタケシンスケ展かもしれない」に行ってこの目で見たものは、ヨシタケさんの日常的だけれども独自性のある世界観と、デビューから10年をかけて獲得してきたファンの姿と、体験することで楽しめる物語でした。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「物語を体験することの意義」というテーマで話していこうと思います。


📚「ヨシタケシンスケ展かもしれない」

昨日のことです。絵本作家のヨシタケシンスケさんの展示会に行ってきました。

ヨシタケシンスケさんは2013年に『りんごかもしれない』でデビューした絵本作家。『ころべばいいのに』『あるかしら書店』『にげてさがして』などを出版し、大人から子どもまで幅広い世代の人に読まれています。

そんな今を代表する絵本作家の展示会が開催されているんです。「ヨシタケシンスケ展かもしれない」という展示会で、彼の絵本の原画、作品の世界観を堪能できるアトラクション、ヨシタケシンスケさんが大学時代につくった三次元作品などが楽しめます。


この展示会、実は去年から場所を変えて継続して開催されておりまして、これまでに東京、兵庫、広島、愛知、鳥取、福岡、新潟と巡っています。そして、今の時期(2023年10月15日~12月24日)までは栃木の宇都宮美術館で開催されているんです。

少し前にヨシタケさんのことを知り、『あるかしら書店』『にげてさがして』『メメンとモリ』などの作品に惹かれた僕は、同じくヨシタケシンスケファンの大学の同級生と、放射線技師の社会人の方と一緒に遥々栃木までやってきました。

今日の記事はその展示会レポートです。とっても有意義な時間を過ごせたし、これからの作家の姿勢を見つめ直すきっかけにもなったので、言語化していきます。


📚見上げて、歩いて。

ただ展示を見るだけのイベントではないことが何よりの魅力で、「お客さんが体験する余地」を確保していたんですよね。

たとえば、「見上げるスケッチ」。
#僕が名付けた

ヨシタケさんは小さな手帳にスケッチを描き溜めるそうなんです。発想の全てがそこにあって、そこから1冊の絵本が生まれている創作の源なわけですが、展示会では今までに描かれてきた2500枚のスケッチを大公開していました。

「大雪がふって
みんなが混乱している時に
一人で雪ダルマを作る。
そんなライフスタイル」
「物語はほとんど必要無い」
なんか、刺さった。


特筆すべきはその展示方法でして、2500枚のスケッチでひとつの「壁」をつくっているんですよね。たぶん3メートルくらいの高さになっていたと思います。もちろん上の方のスケッチを見ることはできないんですが、お客さんからしたら上の方のスケッチも見てみたいわけで、思わず見上げてしまうんですよね。

以前、茨城県勝田駅にあるCohakoという古本屋さんで本を天井からつるすという企画が開かれていました。そのときのレポート記事でも言ったんですが、見上げないと読めない本って面白いなあって思っていて、普段なら視線を落とさないと楽しめない本を、見上げて楽しめるようにするのはエンタメ性が高いなぁと感じたんです。

エンタメ性が高いってことは、それだけ心を動かす可能性が高いってことで、その感動をきっかけに購買意欲を高められるってことです。

この「見上げるスケッチ」でも同じような感覚になりました。どのスケッチを見るかによってお客さんによって楽しみ方が変わってくるし、見上げて楽しむというエンタメ性の高い仕掛けはときめきをくれます。

「見上げるスケッチ」


他にも、作品の世界観がベースの展示や体験コーナーがありまして、入場料以上の満足感を得られることができました。

特に最後の展示「おわりに」は、迷路のようになっている道の突き当たりに以下のような布が垂れ下がっていて、そこに言葉が綴られているんですね。ヨシタケさんらしい「おわりに」に、ちょっぴり泣きそうに、でもほっこり笑顔になれます。

普通の本ならば指でページをめくって物語を楽しみます。しかし、この「おわりに」は、自分の足を使わないと読めないんです。歩いて、次のページまで辿り着かないと読めないんですよね。

「おわりに」の①


📚物語を体験することの意義

見上げたり、歩いたり、そんな風にして楽しむ物語は、本を読むとは違った感覚と体験と満足感をくれます。

もちろん僕は本が好きだし、読書も好きだけれども、厳密にいうと「物語」が好きなんですよね。毎日noteの記事の冒頭で、「人生は物語」と記しているように、人生をかけて物語の可能性を追求していきたいんです。

だから、僕の興味の対象は「本」だけではないんです。本は物語を閉じ込める道具のひとつであって、物語の表現方法は他にもたくさんある。言語化できたのはここ数年のことだけれど、昔から僕は物語が好きだったから、今は大学生作家なんて肩書きを名乗っているけれど、小説に限らず、今までにいろんな物語をつくってきたんですよね。

絵、詩、紙芝居、演劇、音楽、動画、ビブリオバトル、イベント......。

最近は物語を作るだけじゃなくて、体験することにも興味を持ち始めていて、物語と現実を綯い交ぜにするような道に希望を見出しています。


『ころべばいいのに』に登場する「アイツ」


「ヨシタケシンスケ展かもしれない」に行ってこの目で見たものは、ヨシタケさんの日常的だけれども独自性のある世界観と、デビューから10年をかけて獲得してきたファンの姿と、体験することで楽しめる物語でした。

あの場所でしか味わえないドキドキに、自然と購買意欲が高まり、僕はまだ持っていなかったお気に入りの絵本『にげてさがして』や今回の展示会で展示されていた原画や展示会ができるまでに生まれたアイデアを収めたカタログなどを買いました。

今まで本屋さんで見かけても手に取るのが精々で、買うまでにはいたらなった本も、展示会のお土産、思い出の品としてなら買おうと思えることを身をもって知って、これは自分が本を届ける上でも役に立ちそうだなと思いました。

本を届けたいなら、先にお客さんの心を動かす。

その大切さを再認識できたし、心を動かすためにはそれだけの体験(エンタメ)が必要で、物語を体験することの意義を知る良い機会にもなりました。

そんな学びを握りしめて、これからも物語の可能性を追求していこうと思います。最後まで読んでくださりありがとうございました。

20231129  横山黎


「いつかこの日をおもいだすかもしれない」

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