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きっと世界の終わりは、真冬の夕暮れ時に起こる。

――世界の終わりなんて誰も確認できないし、季節や時分に関わりなく起きるはずのものですが、それでも何となくそんな気がしませんか? 真冬の夕暮れ時に起こりそうな気がします。


人生は物語。
どうも横山黎です。

今回は「小説『Message』のお気に入りフレーズ!」というテーマで物語っていこうと思います。



◆お気に入りフレーズ!


先日、Messageという小説を出版しました。

成人の日の夜に亡くなった青年が遺した110というダイイングメッセージの謎を紐解くヒューマンミステリーです。20年分の思いを込めた僕の集大成です。

現在、全文を無料で公開しています!期間限定ですので、この機会に是非読んで下さればなと思います。あと2日です!


今回は、個人的に気に入っている小説『Message』のフレーズを紹介したいと思います。



①記憶の旅

まるで夢のようだった。
どんな旅行よりも胸がときめく、記憶の旅。
もう目が覚めることは無いと知りながら、この命は人生最後の夢の旅路を歩き出した。
小説『Message』序章より

序章の最後の部分です。小山遊馬という青年が自らの行く末を悟り、現実から逃げるようにいて目をつぶりました。そのとき、20年分の記憶が、感情が、全てが蘇ってきたのです。「死の直前、頭の中で自分の人生が走馬灯のように駆け巡る」とはよく聞きますが、それを可能な限り美しく表現できるように追求しました。



②話し古した思い出

自分も同じように旧友と会おうと決めた。今夜吞みながら、話し古した思い出話にまた花を咲かせたい。由美はスマホを取り出して、大学時代の親友に電話をかけた。
小説『Message』第1章より

こちらは第1章の最後の部分。遊馬の母親が、息子と同じように自分は自分で成人の日を楽しもうと旧友に連絡をするシーンです。特に好きなのが、「話し古した思い出話にまた花を咲かせたい」という表現。何度も何度も語っているはずなのに、再びそれを持ち寄りたいと思ってしまう気持ちがここにはあります。大人になってからも、優しい思い出は変わらず過去で待っていて、いつだって何度だって帰ることができるんですよね。


③苧環を繰るように

「苧環を繰るように、昔の関係を今に繰り返す術があったらいいなあという意味だよ。一度結んだ関係はそうほどけることは無い。時を隔てても、その結び目は残っているもの。たとえ離ればなれになろうとね、何度だってやり直せるのさ」
小説『Message』第2章より

遊馬の幼馴染、飯尾瑞月の祖母の言葉です。どれだけ時代を超えようと関係の結び目は残っていて、再会すればすぐに打ち解け合うことができることを伝えています。苧環とは、昔の糸車のこと。「糸を繰る」と「関係を繰り返す」という意味の重なりがステキだなあと思い、取り合わせてみました。


④夜よりも静かに

 順一は由美に駆け寄り、自分が乗ってきた車まで案内した。扉を開け、後部座席に座らせる。順一も隣に座った。
 夜よりも静かに、2人は沈黙した。
小説『Message』第3章より

ここの「2人」とは、亡くなった遊馬の両親です。息子の死を受け、車の中で沈黙しているシーンを切り取った表現です。夜とは比較的静寂に包まれた時間ですが、それよりも静かな空気が、2人の間にはあるのです。隣に座ってはいますが、息子の死への受け止め方がお互いに違うため心理的な距離が生まれています。詳しいことは本編で確認してみてください。



⑤遊馬。その名前は

 自転車が倒れる音。
 呼吸を忘れて、駆け寄った。
 夢の中なのか、現実なのか、分からないまま。
「遊馬……」
 名前を呼んでも、返事は無かった。
「遊馬!」
 名前を叫んでも、返事は無かった。
 遊馬……。
 遊馬……。
 遊馬……。

 遊馬。

 その名前は由美が考えたものだった。
小説『Message』第4章より

遊馬の母親である由美が、自分が現場へ向かうシーンを回想しているときのものです。「自転車が倒れる音」とだけ記すことや、「遊馬」という名前を読んでも叫んでも返事はなかったという文章の運びも好きなんですが、よりもお気に入りなのが、遊馬の名前を列挙した後に、遊馬と命名したときの記憶に行き着く流れです。この後、母親が語る遊馬の人生が描かれるわけですが、めちゃくちゃ自然で効果的な演出ができたなあと自負しています。


⑥きっと世界の終わりは

 冬の街路樹は葉を落としているから寂しそうに映る。群青色の空を背景にしているからなおさらだ。きっと世界の終わりは、真冬の夕暮れ時に起きる。特別根拠は無いが、瑞月はそんなことを思った。
小説『Message』第5章より

お次は第5章のフレーズ。「きっと世界の終わりは、真冬の夕暮れ時に起きる」というフレーズがめちゃくそ気に入っています。世界の終わりなんて誰も確認できないし、季節や時分に関わりなく起きるはずのものですが、それでも何となくそんな気がしませんか? 真冬の夕暮れ時に起こりそうな気がします。


⑦1人分の空白

 由美と2人で帰ってきたが、2人で帰ってきた気がしなかった。お互いそう思っていたせいか分からないが、家の前に着いたとき、2人の間に1人分の空白があった。
小説『Message』第6章より

最後に紹介するのは、第6章のフレーズ。遊馬が一人暮らしていたアパートを訪れ、息子は幸せだったのか、二人で思いを馳せました。それから自宅に帰ってきたとき、2人の間には1人分の距離がありました。

ここで思い出してほしいのが、先程紹介した第3章のフレーズ。「夜よりも静かに沈黙した」やつです。あのとき、二人は車の後部座席で隣り合って座っていました。しかし、息子の死への受け止め方が違うために心理的距離が生まれていました。

息子の死の真相を知り、息子の暮らしていたアパートを訪ねたことによって、二人の心理的距離が縮まったのです。

この対比的な構造もふまえて、このフレーズは好きですね。



ということで、今回は小説『Message』の中からお気に入りのフレーズを作者自ら選んで紹介してみました。この他にもステキな表現はいくつもあるので、少しでも気に入ってくださった方は読んで探してみてください!

改めてご案内しますが、小説『Message』の無料公開はあと2日です! 以下の記事を覗いてみてください!


最後まで読んで下さりありがとうございました。

20220729 横山黎


小説『Message』寄贈!
よくいく飲み屋さんのマスター!
また話聴きに行く!😁

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