足元を見て歩くクライアントに何ができますか?②
前回から、足元を見て歩いてしまうクライアントへの対応について、シリーズで書いています。
1回目の記事はこちら。まだの方は是非こちらからご覧下さい。
2回目になる今回は、歩行観察において特に注意して観察すべき点をもう少し詳しく書いていきたいと思います。
今回の記事を読むと、
●足元を見て歩くクライアントの歩行観察における視点が増える
●足元を見て歩いてしまう原因を考えるヒントが得られる
●足元を見て歩いてしまう状態を改善できる可能性が高まる
歩行観察のポイント
まずは歩行を観察しないと始まりませんね。
歩行を観察する中で、「あ、足元見て歩いてる!」と気付くわけですから。
では、足元を見て歩いていることに気付いた後は、どんなところを見ていけば良いのでしょうか。
私の場合、目で見て確かめているのは何かを見極めようと、そのための情報収集を行います。
具体的には、次のような点を注意深く観察します。
●Initial Contact(IC)で足がどのように床に接触するか
●視線はどこに向いているのか
●足元から視線が離れるタイミング
一つずつ詳しく見ていきます。
ICで足がどのように床に接触するか
足元を見て歩いてしまう方の多くは、ICにおける最重要課題、足底を床に接地するということが上手くできていません。
上手くできないと一言で言っても、その状態は様々です。
では、どのように床に接触するのか。
考えられる例をいくつか挙げ、その様子からどんなことが予想されるか、考えてみます。
●非麻痺側下肢の屈伸や麻痺側骨盤の挙上(下制)を使い、慎重に接地する
麻痺側の足底をスムーズに接地することができないように見えます。
足底を床に接地することを怖がっているようにも見えますね。
目で足と床の接触を確かめないと、不安なのかもしれません。
ということは、麻痺側下肢の感覚だけでは、接地のための情報が収集できていないのではないか、と考えられます。
そのための情報は、足底と床が接触したこと、そのときの足の状態(底屈・内反など)、足が接地した床の場所、床に接地した足底の部位、床の状態(硬さ、傾きなど)といった多くのものが挙がります。
●つま先で床を確かめるように接地する
片麻痺の方であれば足関節底屈筋の筋緊張が亢進している影響もあるかもしれませんが、逆につま先で確かめるために底屈筋の緊張を高めて底屈位に固定しているという可能性もあります。
本来のICは踵で行われます。ということは、踵で床を確かめるのがいわゆる正常歩行だということです。
正常歩行にこだわるのが良いわけではないですが、本来は踵で確認することをつま先で代償している、という捉え方は必要ではないでしょうか。
つま先で床を確かめながらも足元を目で見ている、ということは、つま先の感覚だけでは必要な情報が収集できていないということになります。
その情報は、つま先が床に接触したか否か、つま先が身体と床の関係性の中でどの位置に設置するのか、自身の足の状態(足趾を巻き込んでいないか、底屈内反位で外側を接地していないか、など)といった多くが挙がります。
●そもそも床から足が離れず、引きずるように遊脚している
このような場合、足が前方へ出ているかどうかを目で見て確認している可能性があります。
もしかすると、足が床から離れたか離れていないかの区別ができないために、遊脚で足を床から離すことができないのかもしれません。
そうなると、足底や足部だけでなく、膝や股関節も関係してきたり、ICでなくPre Swing(PSw)やInitial Swing(ISw)に問題がある可能性もあります。
視線はどこに向いているのか
上記のような歩行状態を観察しつつ、視線がどこに向くのかを観察することも必要です。
足元に視線を落としているということは、何らかの情報を視覚から得る必要があるということです。
何の情報を得ようとして足元を見ているのか、それを確かめなければ、足元を見ている原因を特定し、改善することはできません。
接地するときの足を見ているのか、それとも床を見ているのか。
遊脚中から足に視線を向け、後ろから前に進む足に合わせて視線が移動しているのか。
歩行中は常に足元を見ているのか、どこかの相で足元から視線が外れるのか。
最終的にはご本人に「何を見ているんですか?」「どこを見ているんですか?」と質問して確かめることも必要ですが、歩行観察から得られる情報もけっこうあります。
足元から視線が外れるタイミング
前述の『視線はどこを向いているのか』でも書いたように、常に足元を見ているのか、どこかの相で足元から視線が外れるのか、といった点は観察すべきだと考えます。
ICだけ足元を見ていて、その後は前方へ視線を向ける方もいます。
IC,Loading Response(LR),Mid Stance(M.St)くらいまで足元を見続ける方もいます。
M.Swくらいから足に視線を向け、前に出てくる足を確認した後は前方へ視線を向ける方もいます。
歩行だけでなく、立ち止まったときに足元から視線を外せるかを観察してみても良いかもしれません。
まとめ
今回は、足元を見て歩いてしまうクライアントに出会ったとき、特に注意して歩行を観察すべき点について書いてきました。
多くの場合はICに着目すべきと考えられますが、その前の相から視線を足に落としている場合もあります。
そのときの不安そうな様子、何かを確かめようとしている様子など、運動学的には説明しづらい印象などの要素も踏まえて観察できると、この後に続く評価もスムーズに行えるように思います。
今回は歩行観察に絞って書きました。
次回は、歩行観察から得られた情報を元に、クライアント本人のお話(自覚)を聞く、どういった感覚(情報)が得られていないのかを評価する、といった点を書いていきたいと思います。
おわりに
記事の内容についての質問はTwitterのDMからお気軽にどうぞ。
また、記事の依頼も受け付けています。お気軽にご相談ください。