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脳卒中の膝折れは膝に触れず改善する

脳卒中者の歩行で多く遭遇する問題の一つに、『膝折れ』があります。

今回のnoteでは、膝折れはなぜ生じるのか、どのように改善すれば良いのかについて考えてみたいと思います。

実は、膝折れの原因の多くは膝に起因しておらず、膝に触れずに改善できることがほとんどです。

「そうなの?」「ホントに?」と思ったセラピストのあなたは、是非読み進めていただければと思います。


膝折れとは

そもそも、膝折れとは何なのか。

定義を確認しておきたいと思います。

膝折れ(ひざおれ)とは、どちらかの脚に体重がかかることにより、膝に力が入らず膝が折れる現象のことである。(Wikipedia)

安直にWikipediaから引用しましたが、大きく間違ってはいないように思います。

脳卒中者の臨床場面で遭遇する膝折れとして読み替えると、次のようになるのではないでしょうか。

膝折れとは、麻痺側下肢に体重がかかった際に膝関節伸筋の出力が得られず、膝が折れる現象のことである。(筆者)


脳卒中者の膝折れの原因

Wikipediaの定義でいくと、大腿四頭筋や下腿三頭筋、大殿筋の筋力低下により生じる現象であるため、予防として筋力トレーニングが有効ということになります。

しかし、少なくとも脳卒中者の場合、膝折れの原因はこのように単純なものではないと考えます。(脳卒中じゃなくてもこんなに単純じゃないと思いますが)

では、脳卒中者の膝折れはなぜ生じるのでしょうか。

下の図をご覧ください。

スクリーンショット 2020-08-22 6.21.33

膝折れしそうなのはどちらでしょう?

直感的にわかると思いますが、左ですよね。

右は安定して立てていそうです。

なぜこれが直感的にわかるのでしょうか?

重心線を考慮すると、よりわかりやすくなると思います。

下図をご覧ください。

スクリーンショット 2020-08-22 6.21.41

わかりやすいように少し大袈裟にしましたが、姿勢を観察・分析できれば、この矢印を直感的にイメージできます。

ゆえに、直感的に膝折れしそうな姿勢もわかるわけですね。

左の姿勢では重心線が膝の遠くを通過するため、膝を曲げようとする重力の力が強くかかります。

一方、右の姿勢では膝が曲がろうとする力は弱く、少ない力で膝を伸展位にキープすることが可能です。

脳卒中者では、筋力発揮が困難になる場合が多いのは確かです。

しかし、多くの場合は随意的な運動が困難なのであって、不随意的な筋収縮は可能である場合がほとんどです。

立位保持や歩行中、私たちは「脚を伸ばそう」などとは考えません。

下肢への荷重により反射的に伸筋の収縮が生じるからです(網様体脊髄路反射)。

このように考えていくと、脳卒中者の膝折れに対し、膝を伸ばす作用を持つ筋の筋力トレーニングを行うというのはナンセンスではないでしょうか。


膝の負担は骨盤と足部のアライメントで決まる

先ほどの図でわかるように、膝にかかる負担(膝と重心線の距離)は骨盤と足部のアライメントで決まります。

これは、骨盤と足部のアライメントを適切な位置関係にすることができれば、膝伸筋群の反射的な収縮が得られ、支持が可能になるということです。

矢印が足底の後ろに落ちてしまえば、足底に荷重できず、当然伸筋群の反射的な収縮を得ることもできません。

であるならば、足底に荷重ができるように、足部と骨盤の位置関係を改善することが必要であると言えます。


膝折れを膝に触れずに改善する

最後に具体的な介入方法を提案したいと思います。

それは、立脚の練習を足底のどこに荷重しているかを確認しながら・聞きながら行うという方法です。

適応としては、少なくとも前足部と後足部(踵)への荷重の違いが知覚・識別できる必要があります。

※足底への荷重が知覚・識別できない場合、そちらへの介入を優先して行い、その上で立脚の練習へ進めるべきであると考えます。→こちらのnoteも参考に

具体的には、骨盤と足部の位置関係を徒手的に操作しながら、非麻痺側のステップ練習を行います。

当然、手で手すりや平行棒などを把持しながら行います。

非麻痺側下肢のステップを行う際、前足部へ荷重した場合と後足部へ荷重した場合、加えて前後足底全体へ荷重できた場合というパターンを設定(操作)し、その違いを比較するよう求めます。

違いがわかれば、ご自身が最も支えやすいと感じた荷重位置を再現してもらうよう、セラピストの徒手的誘導なしでステッピングを行います。

骨盤と足部のアライメントを適切にすることができれば、足底への荷重感を明確に感じられてくるはずですし、それに伴い膝伸筋群の筋収縮も強くなってくるはずです。

この練習を行う場合、膝折れのリスクが非常に強いという場合は、長下肢装具の併用なんかも考慮しても良いかと思います。

その場合も、あくまでも骨盤と足部の位置関係、足底への荷重を学習してもらう、という視点が重要であると考えます。


まとめ

脳卒中者の膝折れの原因、その対処法について考えました。

単純に運動学的知識だけで考えれば、膝折れの原因は膝を伸ばそうとする筋の筋力低下です。

しかし、脳卒中は筋力低下を生じる疾患ではありません。

筋力低下は廃用により二次的に生じるものに過ぎません。

このnoteを読んでくださったセラピストのみなさん、そしてみなさんの関わるクライアントの手助けとなれば幸いです。

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まじい@マジメな理学療法士・公認心理師
読んでくださってありがとうございます。 いただいたサポートは今後の勉強、書籍の購入に充てさせていただくとともに、私のやる気に変換させていただきます。