脳卒中のリハは週1回の訪問で良くなるの?
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は『脳卒中のリハ、週1回の訪問で良くなるの?』という疑問に答えたいと思います。
結論から書くと、良くなります。
そして、そのためには、毎日の生活をリハビリテーションとして捉える視点が重要です。
病院勤務の方はイメージしづらいかもしれません。
ですが、病院でのリハビリテーションにも示唆が得られる考えを提示できるかと思います。
週1回しか訪問できない場合にどのようなことを考え、何をしているのか。
そんなことを解説していきます。
入院中と退院後の介入時間
病院に入院していれば毎日関わることができますし、回復期病棟に入院していれば最大で毎日3時間も関わることができます。
在宅でのリハビリテーション(訪問リハや訪問看護)では、週1回しか訪問できない場合は少なくなく、週1回40分というケースもよくあります。
私が勤務する訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問(介護保険)では週に120分までという制限があり、1回40分なら3回まで、1回60分なら2回までというのが介入時間の限界となります。
クライアント自身も、入院中は毎日3時間もリハの時間があったのに退院後時間も回数も大幅に減るため、不安に思う方は多いです。
では、こんなに少ない回数・短い時間の訪問の中で、我々療法士は何ができるのでしょうか。
自宅では生活の全てがリハビリテーション
入院中は、<リハビリテーションの時間>と<それ以外の時間>というように生活の時間が分けられるように思います。
部屋のベッドで待っていたら療法士が呼びに来て、リハの時間が始まる。
リハが終われば部屋に戻ってきて、次のリハの時間まで休憩する。
休憩中は特にすることがないので、テレビを観て過ごす。同室の方と話す。
そんなところでしょうか。
病棟生活が自立できている方は自主練習をしたり、病棟を好きに歩き回ったりもできますが、そのような方の方が少ないでしょう。
そんな病院生活を長くて6ヶ月程度過ごした後、自宅に帰ってきます。
自宅ではこれまでの生活パターンが一気に変わります。
朝起きて、身支度から始まります。
整容、更衣、排泄、朝食の用意と食事。
部屋の掃除は?洗濯は?食器を洗うのは誰?
一人で買い物にも行かなければならないかもしれません。
ご家族の協力が得られるのか、家屋状況がどうなのか、といった要因も関係してきますが、入院中よりも自分でしなければならない事が増えるのは間違いありません。
このように、ご自宅での生活は忙しく、やることが山積みです。
そんな生活の中に週1回だけ訪問させていただく。
我々のように訪問というプラットホームで働く療法士は、普段の生活全てをリハビリテーションに変えていくという視点を持つことが重要です。
毎日の生活をリハビリテーションにするために
<リハビリテーションの時間>だけでリハビリテーションを行おう、クライアントの動作や行為を良くしようと考えると、療法士はクライアントに『正しい動き』を教えようとするかもしれません。
そして『正しい動き』を普段の生活でも実行・再現してもらおうとします。
そのためにはクライアントは自身の身体の動きに注意を払い、練習の内容を思い出しながら、それぞれの動作・行為を行う必要があります。
入院中であればそれも可能かもしれませんが、自宅生活ではそんなことほぼ不可能です。
生活するだけで忙しいのですから。
では、生活をリハビリテーションにするため、我々療法士はクライアントに何を教えれば良いのでしょうか。
重要なのは、クライアントが自身で気付き、自ら修正できる能力を獲得することだと考えます。
我々療法士は、クライアントに一つ一つの動作や行為を教えるのではなく、クライアント自身が自分で自分の動きの問題点に気付いて修正していけるように導いていかなければなりません。
そうすれば、毎日の生活の中で『より楽な方法』『よりスムーズな動き』を自身で探索していくことが可能となります。
これが、毎日の生活をリハビリテーションにすると書いた意味です。
クライアントが自律するために
「そんなの理想論だろ」「具体的にどうしたら良いんだよ」
といった声が聞こえてきそうなので、具体例を示しておきたいと思います。
以前のnoteで、練習はクライアントの訴えや考え(フレーム)に基づいて考えるべきということを書きました。
クライアントの訴えや考えに基づいた練習であれば、クライアントが日々の生活で困難を感じている動作・行為と練習内容が直結します。
そして練習を実施する中でクライアントが何らかの感覚に気付き、練習の効果を実感できたとします。
私は次のように声をかけて、練習を終了します。
「生活の中でこの感覚を探して、見つけられたら次回来たときに教えてください」
それは主訴としてあった動作・行為の中でも良いですし、全く異なる場面で似た感覚があればそれでも良いです。
そして、常に意識するように求めるのではなく、一週間のうち一度だけでも気付ければ十分です。
このように依頼しておくことで、毎日の生活をリハビリテーションにすることができます。
「生活の中でも必ずこのように動いてください」というのは難しい依頼です。
無力感が募り、諦めに繋がってしまいます。
動き方を強要するのではなく、練習で気付いた・学習した感覚を探す。
生活をリハビリテーションとして捉えるのであれば、これくらいの難易度・負荷量が適切だと考えています。
まとめ
『脳卒中のリハ、週1回の訪問で良くなるの?』という疑問について考えてきました。
毎日の生活をリハビリテーションとして捉える視点を持ち、クライアントが日々の生活の中で自律してリハビリテーションを行える状況を作り出すことができれば、週1回の訪問でも十分良くなる可能性があります。
重要なのは次の2点です。
■生活における動作・行為と直結した練習の実施
■練習中で気付いた・学んだ感覚を生活の中で探してもらう
「週1回しか訪問できないから無理でしょ」なんてことは言わず、毎日の生活をリハビリテーションに変えていく介入を行ってください。
クライアントが自律して改善していける。
これは本来のリハビリテーション(全人的復権)ではないでしょうか。