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【創作落語】生田Q蔵の修業時代/『しかく』

ドアから男が入ってくる
男はメガネをかけ、羽織を羽織っている
 
Q蔵「言葉には、反対の意味を持つもの、対義語が存在します。対義語の対義語は同義語です。同義語の対義語は対義語になります
木でつくった四角形の枠(ドア)を持ってくる
これは四角形です。四角形の対義語は……マル?バツ。これは……×(カケル)か。ア、÷(ワル)。ワル?ア、割る。ア、繋げる。……割る。……悪(ワル)、ア、ヤンキーってことね。がり勉。別にズルくない!がり勉……不真面目。真面目。エ~、授業中よく寝る。黒板写すのめっちゃ丁寧。不真面目。ダメだ。……不真面目……ア、風紀委員!これあ、もうお前、完璧な対義語だろう。……風紀!?……エ~、人気者?この中に風紀委員さん、いらっしゃったらごめんなさいね。めっちゃ好かれる人。何でも否定から入る人
 
Q蔵「何でも否定から入る人だそうです。いや〜、それはないんじゃない?」
 
女子学生「ねえ〜、髪切ったんだけど、どう?似合ってる?」
 
男子学生「え?まあ似合ってるけど、俺は前の方が好きだな」
 
メアリー「……。は?誰もお前の好みなんか聞いてないんだけど?可愛いって言え!バーカ!……。でもね、メアリーもこういう所あるってよく言われるの。「メアリーはさ〜、いっつも否定から入よね~」……。何て返せば良いの!?「そんな事ないよ〜」って言ったら「ホラ、そういう所」って言われるし、かといって自分で認めるのもちょっと変だよね?ね!……ちなみに私の苦手な人はなんでも前提で話してくる人です」
 
女子学生「ほら、私〜、お菓子作るの好きじゃないですか〜」
 
メアリー「……いや、知らんけど」
 
Q蔵 「これは当時僕が好きだったお笑い芸人がやっていたコントの一部分です。小さい頃、僕は人を笑わせるのが好きで、よくお笑い芸人の真似事をしていました。特に好きなギャグがあって
「でもいいの。みんなは私のこと気づいてくれなくても、私はみんなの天ぷらそばがいい」
 
母 「Q蔵は面白いね。もしかしたらお笑い芸人になれるかもしれないよ」
 
Q蔵 「ホントに!?ボク、お笑い芸人になれるかな?」
「おや?と思いました。その瞬間、自分の落ち行く道が決定したような気がしたのです、今となってそう思うだけですが」


母 「ああ。きっとなれるよ」
 
Q蔵 「ホントに!?ボク、頑張るよ!子ども心に本気でなろうとしていたんでしょう。七つになる頃には自分でネタを創るようになっていました
「XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX」
「これで一本ネタを創ったんです。誰にも伝わりませんでした。でも子どもってえのは、案外こういうモンが好きなもので、気付けば、クラスん中でのムードメーカーになっていました。そんな中、隣町から転校生がやってきたんです。その頃、僕はカードゲームにもはまっていて、その転校生とよくバトルをしていました」
 
転校生「なあQ蔵、ちょっと、お前のデッキ見せてくれよ」
 
Q蔵 「え?別に良いけど。ハイ」
 
転校生「ふ~ん、なるほどね。じゃあ、コレとコレとコレとコレと……。ハイ、ありがとう」
 
Q蔵 「ん、何をしたんだよ。アア!お前、ボクの伝説モンスターのカード全部抜きやがったな!」
 
転校生「まあまあそんなカッカすんなって。代わりにこのカードあげるからさ」
 
Q蔵 「エエ?まあ、それなら……ってこれ全部第一形態じゃないか!酷いよ、こんなの割に合わないじゃないか」
 
転校生「ア、親が迎えに来た。じゃあな」
 
Q蔵 「アア!おい!無視するなよ!ボクのカード返してよ! ……今でも腹が立ちます。僕はね、あいつみたいな」
 ここから江戸っ子口調
「ふてえ野郎がでえきれえなんでい!味噌汁で顔洗って出直してこいってんだ!」
 元に戻る
「……僕は親にこのことを話ました」
 
母 「その時、力づくで取り返そうとしなかったQ蔵も悪いと思うよ」
 
Q蔵 「エエ……」
この頃からです。僕は今まで、自分のことをおちゃらけた明るい子どもだと思っていましたが、どうやら本性はそうではないと気づき始めました。僕の心はたいへんにもろく、それはもう割れたお皿のように尖っては、触る者みなを傷つけてしまうような、そういう性分でした
 
先生1「ハイ、今日は授業参観ですね。後ろにお父さん、お母さんがたくさん来てくれています。皆、緊張してるかもしれないけどいつも通りにやりましょう。エ~、今日は卒業文集に載せる作文を読んでもらいます。読みたい人!」
 
Q蔵 「ハイ!ハイ!ハイ!ボク!ボクが読みます!」
 
先生 「じゃあ生田君!」
 
Q蔵 「ハイ!「将来の夢」。僕の将来の夢はお笑い芸人になることです。自分で創ったネタでたくさんの人を笑わせたいです。ネタを創るためにはいろんなことを知っていなきゃいけません。だからたくさん勉強する必要があると思っています」
タイミングが良いのか悪いのか分かりませんが、この少し前から僕は、塾に通わせてもらっていたんです
 
母 「Q蔵、アンタ、お笑い芸人になりたいのかい」
 
Q蔵 「ウン、ずっとそうだけど」
 
母 「だったら塾通うの辞めなさい」
 
Q蔵 「エッ?なんで?」
 
母 「お母さんはね、Q蔵が勉強したいって言うから、塾に通わせてあげてるんだよ。お笑い芸人にさせるために通わせてるんじゃない」
 
Q蔵 「ウン、分かってるよ」
 
母 「じゃあ、塾辞めなさい」
 
Q蔵 「待って、待ってよ。勉強を頑張ることと、将来の夢って別々じゃないの?」
 
母 「別々じゃないの。Q蔵にはまだ早いかもしれないけど、大学には「学部」っていうのがあってね」
 
Q蔵 「学部?」
 
母 「そう。いろんな学部があって、やりたい仕事によって入る学部が変わってくるの。お医者さんになりたい人は医学部、弁護士になりたい人は法学部、先生になりたい人は教育学部。みたいにね」
 
Q蔵 「じゃあ、ボク、お笑い芸人になる学部に入るよ」
 
母 「そんなものは無いの」
 
Q蔵 「エエ!」
 
母 「だからお笑い芸人になるんだったら、大学に行かなくていい。大学に行かなくていいなら、塾に行かなくてもいいよね?」
 
Q蔵 「確かに、そうかもしれない。でもボク、勉強もしたいんだ。今、塾行くのが、楽しいんだ」
 
母 「……。じゃあ一晩考えなさい。お笑い芸人に本気でなりたいんだったら、塾辞めてもいいです。塾で勉強したいのなら、お笑い芸人は、ね」
 
Q蔵 「……」
僕は塾を選びました。その日の夜、自室でボーッとしておりますと、両親の話し声が聞こえたんです。「今日、授業参観に行ってきた。Q蔵がお笑い芸人になりたいっていう作文を読んだから、恥ずかしかった」と
 黙って俯く
「……エ~、進学先ですか。僕は市内の学校に行きたいと思っています」
 
先生 「エエ!そいつあ驚いた!いやあ、生田君の成績をもってすれば、もっと上のレベルの学校へ行けると思うんですよ。ねえ、お母さん」
 
母 「ハイ、私もそう思ってはいるんですけどねえ」
 
先生 「生田君、なにか市内の学校に行きたい理由でもあるんですかい?」
 
Q蔵 「理由?理由ですか。そんなの、出来るだけ早く進学先を決めたいからに決まってるじゃないか。だいたい受験勉強は嫌いなんだよ、めんどくさいし。でもそんなこと言ったらガッカリされるんだろうなあ」
 
先生 「生田君?」
 
Q蔵 「ああ、すいません。理由は、入りたい部活がありまして。ホラ、ここの学校は吹奏楽が盛んですので、是非ともこの学校に入って音楽を続けたい、と思いまして」
 
母 「でも吹奏楽ならどこでもできるじゃないか」
 
Q蔵 「ここで、やりたいのです」
 
先生 「まあ、お二人でよく話し合ってください。それでは、面談はこれぐらいにして」
 
母 「ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」
 
Q蔵 「ありがとうございました」
 
母 「どうして市内の学校が良いんだい?Q蔵ならもっと上の学校に入れると思うんだけどねえ」
 
Q蔵 「そりゃあ、さっきも言ったように、吹奏楽を続けたいからだよ」
 
母 「さっきも言ったように、吹奏楽はどこでもできるでしょう」
 
Q蔵 「でも、あそこじゃなきゃイヤなんだよ」
 
母 「まさかQ蔵、勉強しなくても入れる学校だから行くって言ってんじゃないだろうね。そんな風に楽な道ばっか選んでたら、なんにも出来ない大人になっちまうよ」

Q蔵 「楽な道じゃないよ。ホラ、通学路だってこんなに遠いし」
 
母 「マジメに聞きなさい」
 
Q蔵 「……アイ。ゴメンナサイ」
 
 
Q蔵 「結局、親の反対を押し切って市内の学校に入学した。無事に入学式も終わり、今日から授業が始まる。楽しみだなあ。あ、ここが僕の席か。窓際の良いところじゃないか。……。あ、女子が連れ立って教室に入ってきた。エエ!みんなこっちに来るじゃん!アア!周りの席、皆女子じゃないか!?なんで!?なんで!?アア……男子の席があんなに遠くに……」
 
Q蔵 「キーンコーンカーンコーン。ふう、やっと午前の授業が終わった。さて弁当でも食べるか。……ん、なんだか周りが騒がしいな。アア!周りの女子たちがお弁当を食べるのに机を動かしてグループを作っている!しかも幾つかのグループで、こう、半円状になっている。その女子たちの向こうで男子が集まって弁当を食べている。やばい、やばいぞ。考えろ、考えろ。あ、そうか、僕が向こうに行けばいいんだ。女子の間を縫って行くのか、イヤだなあ。エエイ、ままよ!」
「アイ、すまねえが、ちょっと通してくんな」
 
女子 「エ?アア……ゴメンね」
 
Q蔵 「僕の馬鹿!どうしてとっさに出てきた言葉が江戸っ子なんだよ!絶対変な奴だと思われたじゃないか。結局、誰にも喋りかけれなくて、気まずくて、そのままトイレに来てしまったし」
こうして僕は友達作りのスタートダッシュを切ることが出来なかった
 
Q蔵 「母さん、僕、演劇部に入ることにしたよ」
 
母 「アレ、アンタ、吹奏楽やるんじゃなかったのかい?」
 
Q蔵 「そうなんだけどさ、見学に行って、こりゃあ三年間続けるのは大変だぞって思っちゃったんだよね」
 
母 「まあ、別に良いんだけど、Q蔵なんかに演劇が出来るのかい?」
 
Q蔵 「そりゃあやってみなきゃ分かんねえけど、見学行って、アア、こりゃおもしれえなって思ったんだよ」
 
母 「アンタ、さっきから喋り方おかしくないかい?」
 
Q蔵 「エエ?アア、こりゃすまねえ……ゴメン。ちょっといろいろあって。見学行って、これは面白そうだなって思ったんだよ。それに、もう入部届出してきちゃった」
 
母 「エエ!?もう出してきたのかい?全くアンタって子は、変なとこだけせっかちなんだから。まあ、別に良いんじゃない?頑張んなよ」
 
Q蔵 「ウン。ありがとう。」
さて、文化祭の時期がやってきました。てやんでい!さっきから黙って聞いてりゃ口々に言いたい放題言いやがって。こちとら、ただでさえ部活の準備で忙しいってんだ!俺あなあ、江戸で一等気が短えって有名なんだ。やる気がねえならけえりやがれ、こんちきしょう!……と、そんなことを言えるはずもなく
「アノ〜、盛り上がってるところ、すまねえが、ちょいとよろしいですか」
 
クラスメイト「おいおいQ蔵、お前がしっかり取り仕切ってくれないと困るよ」


Q蔵 「それなんですが、これから部活に行かなくてなりませんで、あっしの代わりに進めていただけるととてもありがてえんですが」
 
クラスメイト
「ナアンダ、そんなことかい。お易い御用だよ。実際、お前より俺の方が仕切るのは上手いからよ」
 
Q蔵 「ありがとうございます。それでは頼みましたんで、よろしくお願えします。くそっ。だったらはなっから、てめえでやりゃあいいんだ。」
この頃には、完全に部活にのめり込んでいました。学校生活のスタートダッシュを切れなかった僕は、毎日部活の為に学校に来ているような感じでした。ずっと通わせてもらっている塾を休みがちになったのもその頃です。駅のホームや公園で時間を潰して行った振りをしたことだってあります。友人からは
 
友人1「なあ、キューちゃん。今日はちゃんと塾行かなきゃだめだぞ」
 
Q蔵 「なんて言われる有様でした
「ア~ア、アイツにあんなこと言われちまったら俺も世話ねえな。行くか!」
 
友人2「おう!誰かと思ったらQ蔵じゃねえか!久しぶりだなあ!全然見かけねえから、てっきり死んじまったもんだと思ってたよ!」
 
Q蔵 「てやんでい!そんな馬鹿な話があってたまるかい」
 
友人2「まあ、忙しいのは分かるけどよお、塾はちゃんと来ねえといけねえよ。受験勉強だ、受験勉強」
 
Q蔵 「アア、受験勉強ねえ……」
この言葉は僕に重くのしかかりました
 
友人1「キューちゃんはさ」
 
Q蔵 「ンン?」
 
友人1「進学するの?」
 
Q蔵 「……するよ」
友人1「どこ?」
 
Q蔵 「俺あよお、芸術学校へ行きてえんだ」

友人1「すごいじゃん!」

Q蔵 「でも小せえ頃から塾に通わせてもらってる手前、言い出しづれえって言うか」
 
友人1「なるほどねえ」
 
Q蔵 「結局、芸術学校に行きたいという話をしないままに進路を決めました。ろくに行きもしない塾の授業料がとんでもねえ額になっていると踏んだ僕は、早く塾を辞める為に、推薦で学校を決めました。親からすれば、また、楽な道を選んでいるように見えたことでしょう。僕は、文学部生になりました。それから二年ほど経ちまして、ひょんなことから高校の部活の指導に行くようになりました
「エ~ット、たしか、君は……」
 
真野 「真野(マノ)です。真実の「真」に野原の「野」でマノです」
 
Q蔵 「アア、そうだそうだ。エ~、真野さん? ……真野ちゃん?マーちゃん?」
 
真野 「真野でいいですよ」
 
Q蔵 「アア、真野ね」
 自分の胸を叩いて、言い聞かせるように
「真野!真野!」
 
真野 「何してるんですか?」
 
Q蔵 「こうしないとよ、人の名前覚えられないんだ」
 
真野  笑う
 
Q蔵 「どうした、何か変なことでも言ったかい?」
 
真野 「イヤア、面白いなと思いまして」
 
Q蔵 「オ、オオ。そうかい。んで、何の用だい?」
 
真野 「アア、そうでした。そうでした。アノ~、先輩ってアニメお好きなんですか」
 
Q蔵 「どうして?」
 
真野 「さっき、説明してらっしゃるときに、アニメの台詞を喋っていらしたので、好きなのかなあと思いまして」
 
Q蔵 「真野も好きなのか」
 
真野 「ハイ!わたしは原作も全部読んで、アニメを観ました!」
 
Q蔵 「オオ、そうかい。俺は、放送は観たんだけど、原作までは追えてないんだよ。それに……元々アニメとかあんまり詳しくなくてさ」
 
真野 「そうなんですか!?アレはですね、」
 
Q蔵 「ストップ。先、片付けちゃおうか」
 
後輩 「ハイ!じゃあ、この続きは部活が終わった後に?」
 
Q蔵 「アア。じゃあ、そうしよう」
 首を触りながら
「……こまったな」
 
真野 「先輩は学生の頃、どんな人だったんですか?」
 
Q蔵 「エエ?……そらあ、もう、モテにモテまくったよ。女から貰った手紙をランプの燃料にしたこともあるくれえだ」
嘘です
 
真野 「それは酷いですね」


Q蔵 「試験前は世話になりました」
嘘です
 
真野 「あら、いつの時代の話をしているんですか」
 
Q蔵 「高校時代の話だよ」
嘘です
 
真野 「先輩の芸名は何だったんですか?」
 
Q蔵 「芸名?なんの話だい」
 
真野 「アレ?当時は無かったんですね」
 
Q蔵 「アア、無かったなあ」
これはホントウです
「ってことは「真野」は芸名か」
 
真野 「そうですそうです」
 
Q蔵 「たしかに、かわいい名前だもんな」
 
真野 「エ……」
 
Q蔵 「……ミスったか」
 
真野 「そんなこと初めて言われました。意外とみんなそれぞれの芸名について触れないから。」
 
Q蔵 「エ、なんか、ソノ、ごめん」
 
真野 「違うんです、違うんです。わたし自身、けっこう気に入ってるんですけど、初めて言われたから、ちょっと驚いちゃって」
 
Q蔵 「……ア、じゃあ、その~、気分を害したとかじゃない?」
 
真野 「ハイ!そういうんじゃないです!」
 
Q蔵  首を触りながら
「そっか、ならよかった」
おい、なんか様子がおかしいな、と自分で気づきました。もともと目を合わせて話すのは苦手なんですが、いつも以上に視線が散らばっている。お道化ようとしても、なんか緊張して、言葉に詰まっちまう。仮面の下を覗かれたような気分でしたが、不思議とイヤな気分にはなりませんでした
 真野に
「なあ、これはちょいとまずいんじゃないかい」
 
後輩 「何がですか?」
 
Q蔵 「何がですか?じゃないよ。真野ちゃんさ、二人で飯はさすがにダメだと思うんだ」
 
後輩 「でも先輩、私が引退したら、ご飯行こうって言ってくれたじゃないですか」
 
Q蔵 「イヤ、そりゃ言ったけど、それは、みんなで行こうっていう意味であって」
 
後輩 「イヤなんですか?」
 
Q蔵 「イヤ……ではないけど。大丈夫かなあ」
 
後輩 「バレませんよ」
 
Q蔵 「……真野ちゃんさあ、進路とかどうすんの」
 
後輩 「どうしてそんな親みたいなこと聞くんですか?」
 
Q蔵 「アア……ゴメン」
 
後輩 「先輩はどうなんですか」
 
Q蔵 「親みたいなこと言うなよ……」
 
後輩 「どうなんですか。就活?ですよね」
 
Q蔵 「アア、そういえばまだ言ってなかったな。俺、進学するんだ」
 
後輩 「エエ!まだ勉強するんですか。勉強、好きなんですね」
 
Q蔵 「ウン。勉強は昔っから好きなんだよなあ」
 
後輩 「なんだか病気みたいですね。大学院まで入って勉強したいだなんて」
 
Q蔵 「アア~病気かあ。……。どういうこと?」
 
後輩 「そんなに勉強が好きなのはもう病気です。勉強依存症です。大学院に「入院」が必要でしょう。おあとがよろしいようで」
 
Q蔵 「腕上げたな」

後輩  腕を叩いて自慢げにする
「先輩は文学部生なんですよね。なんで文学部に入ったんですか」
 
Q蔵 「エエ?」
 
後輩 「いや、だって、いろんな学部があって、やりたい仕事によって入る学部が変わってくるんですよね。医者になりたい人は医学部、弁護士になりたい人は法学部、先生になりたい人は教育学部。みたいな」
 
Q蔵 「お前、それ誰に言われた」
 
後輩 「担任です」
 
Q蔵 「そうか。俺は、やりたい仕事が無かったからなあ」
 
後輩 「私も、やりたいこととか分からないんですよねえ。やりたい仕事を考えると、やりたくないことばかりが目に付くんですよ」
 
Q蔵 「……」
 
後輩 「先輩?」
 
Q蔵 「イヤ……なんでもない」
 
後輩 「先生に言われたんですよ。ゴールから逆算して考えなさいって」
 
Q蔵 「フン」
 
後輩 「私は、たっくさんのネコと一緒に暮らしたいんです」
 
Q蔵 「フン?」
 
後輩 「ゴールはどう生きたいか、じゃないんですか」
 
Q蔵 「そんな難しいこと考えてたのか」
 
後輩 「そりゃあ考えますよ。毎日言われるんですもん」
 
Q蔵 「……つらかったんだな」
 
後輩 「……ハイ」
 
Q蔵 「……俺のやりたいこと、聞いてもらってもいいかな」
 
後輩 「ア、聞きたいです。なんなんですか」
 
Q蔵 「目の前にいる人を、笑わせたい」
 
後輩 「あら」
 
Q蔵 「信州信濃の新蕎麦よりも、俺はお前の「そば」がいい」

後輩 「はあ。……。私もあなたの「傍」がいい。あなたと「とわり」過ごしたい。鼻を「すすって」待つ私。今すぐ「駆け」「つけ」てほしい。「いずも」、けんも「とろろ」なあなたは、返事をする気なんて「にしん」もない。メールを送るべきか送ら「ざる」べきか。昔はこ「そばゆ」い気持ちでいたけど、今はただ「ボーッロ」している。あな「たぬき」じゃダメだったけど、もう気持ちは「閉じ」てしまった。なんてね」
 
Q蔵 「はあ~!もうお手「上げ」だ」
 
後輩 「じゃあこの話は「手打ち」にしましょう」
 

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