心に余裕がないと小さなことでブチ切れてしまうんだね|仕事での気づき
お問い合わせ対応をしたことがあるだろうか。
私は以前、外部からの問い合わせが入った時に電話をつながれる部署に長くいた。繁忙期には朝から晩までコール音が鳴り響き、ひっきりなしに電話を取る、そんな所だ。
今の時代、電話で問い合わせをする人は少なくなったと思われているかもしれないが、私の感覚としてはそうでもない。
お問い合わせと一言で言っても内容は様々で、本当に困っている人もいれば、資料をよく読んでいないだけの人もいる。
そんなのはかわいいもんだ。
大変なのは、めちゃくちゃな文句を言ってくる人。
これは、心が荒みながらもどうにかお問い合わせ対応をこなしてきた筆者の記録である。
■筆者のお問い合わせ事件簿
電話で話す時、タイミングが合わなくて相手と同時に喋り出してしまったことはないだろうか。同時に喋り出してしまった時、1回ならいいけど、何回も続くと結構気まずい。
年配の男性からのお問い合わせ対応中に、会話のテンポが合わず
「こっちが喋ってんだから黙って聞けよ!」
と、すごい剣幕で怒られたことがある。
……めちゃくちゃ怖かった。
トンチンカンなことずっと言うから「それは違います」って言いたかっただけだったのだが。
確かに私のタイミングの取り方が下手だったかもしれない。が、そんなに怒らなくたって良くないか?
え?これ私が電話下手?悪いのは私ですか?こういうタイプの人って、黙って聞いてたらそれはそれで「聞いてんの?」って怒るんじゃないか?(超偏見)
どうしてこうも心が狭いのか。こんなことをぐちぐち言ってる私も狭いのか……心………。
こういう電話は一人や二人じゃない。
クレーム対応でへこへこする大人って実在するんだなと社会人になって気づいた。(気づきたくなかった)
始めの頃は普通に落ち込んだし、涙が出た。こんな大人になるはずじゃなかったのに……。
しかし負けず嫌いな私は不屈の精神で電話を捌き、1年経つころにはお問い合わせ対応の手本となっていた。
これは私にとって数少ない人に自慢できることである。
■話を聞いてもらわにゃ始まらない
では、どのようにして対応の術を身につけたのか。
"慣れ"と言えばそれまでだが、新人の頃に上司から
「ダメなものはダメだと言わないといけない」
と教えられたことは、私にとってかなり大きかった。
そう。たとえ相手がお客さまだとしても、ダメなものはダメだし、出来ないことは出来ないのだ。
お問い合わせが入った時、こちらに落ち度があればもちろんきちんと誠意をもって謝らないといけない。
しかし、本来はダメなことをハッキリと断らないと、相手に期待させてしまう。
「やっぱりダメでした」と報告するのは、相手にとっても自分にとっても不幸なことなのだ。
それに、こちらが正しいときはそれをちゃんと伝えていかないと、言ったもん勝ちのワガママ放題になってしまう。
勝手な人のせいで自分たちの仕事が増えるのは解せない。
だから私は努めて冷静に日々戦った。
そう。
お問い合わせ対応は戦いなのだ。
この戦いで最も大事なのは、冷静さを欠かないこと。
焦ると正常な判断が出来なくなるし、相手の話も入ってこなくなってしまう。
戦いは戦いでも、これは静かなる戦いなのだ。
次に、相手と対等な立場で話ができるように話を繋げる。ここで優位になろうとしてはいけない。
と、こちらの事情も伝えつつ、そういうわけだから従ってくれという話にもっていく。
無茶な要求に対して、初動から「確認します」と言ってしまったら、その時点で負けなのだ。
言葉遣いは丁寧に、でも抵抗する姿勢は崩さないこと。
優しい人にとってはこれがすごく難しいことかもしれないけれど、そこは心を鬼にしてほしい。鬼になって良いところだから。
電話口でどんなに怒鳴られても、相手は今自分の目の前にはいないから手が出ることはない。
だからこっちは毅然とした態度でいればいいのだ。
もし怒鳴られて心臓がバクバクしたら、自分の声をよく聞くこと。
自分の声は一番聞き慣れている音だから、意識的に自分の声を聞くようにすると、少しずつ落ち着きを取り戻すことができる。と、学生時代の恩師に教えてもらった。
自分の声を聞くようにすると、自然と話すスピードがゆっくりになって、自分だけでなく電話の向こうの相手も落ち着いて話ができるようになってくる。
そうやって私は戦い抜いた。
■一つの事例についての判断は一人のためのものではない
ここまで頑なになるのは、なにも面倒なことをしたくないとか、意地悪したいとかそういうことじゃない。
私だって出来ることならみんなに親切に対応して差し上げたいと思っている。
しかし、そんなことをしていたらキリがないのだ。
その場しのぎでその人だけ対応してあげれば済む話なら何とかしてあげようとも思うけど、大抵そうはいかない。
一つ事例を作ってしまったら以後全部そうしなきゃいけなくなる。そうじゃなきゃ不公平だからだ。
しかし、以後すべてに対応するとなれば、その場を乗り切るためだけではなく今後のことを含めてきちんと考えなければならない。
すると当然検討に時間がかかる。
そして、いざ対応しましょうってことになったらまた仕事が増える。
結果、不特定多数のための対応を検討していたら、先に怒ってた人への対応も遅れ、余計に怒られる……という負の連鎖。
正直こんなことやってられない。
全てを大真面目に“お客さまは神様”の精神でやってたら無限に仕事は増えていく。だから、基本姿勢は「最初の方針はできるだけ崩さない」で良いと思う。
冷たいと思われるかもしれないが、私にそんなつもりは一切ない。
ワガママを受け入れることと誠実な対応をとるのはイコールではないのだ。
この辺りがごちゃごちゃになっている人が一定数いるからカスハラみたいなことが起きるのではなかろうか。
「親切」はスタンダードではないということを、みんな肝に銘じた方が良い。
■心に余裕がないと小さなことでブチ切れてしまうんだね
ここまで書いてきたことは、厄介なお問い合わせに対する私なりの受け流し方であって、これが正解だとは思っていない。
お問い合わせで戦いなんて、無い方が良いに決まってる。受け流したとて、心がすり減ることに変わりはない。戦いは、気力も体力も削り取っていくのだ。
すり減った状態で対応を続けていたら、どこかでプツンと糸が切れてしまうか、何も感じなくなるかのどちらかだ。
私はどちらかというと後者だったが、前者だったらお客さんとケンカになっていたかもしれない。おぉ、怖い怖い。
だから、最初の話に戻るが、電話で喋り出しが被っちゃっても
「すみません、どうぞどうぞ、なんでしょう?」
と、笑って言えるような、心に余裕のある人間でありたい。
お客さんとしても、受け手としても。
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