駄菓子屋うめちゃん閉店します。
長い間ありがとうございました。今月いっぱいで閉店します。店主
梅ちゃんが閉店なんて、俺はびっくりしてしまった。
駄菓子屋うめちゃんは、俺ら小学生の溜まり場だった。俺たちの欲しいものがぎっしり詰まった店内は、まるで宝箱。そして、店主のうめさんは女子にも大人気で、中にはうめさんファンクラブを結成している子達もいた。
どうしてやめちゃうの?
ある日、俺は思い切って聞いてみた。
腰が痛くてね、店番辛いんだよ。他にやってくれる人もいないしね。
他にやってくれる人がいたらお店はやるの?
じゃ、俺がやる!
いきなりの俺の申し出に、うめさんは吹き出し、そして、ありがとう。気持ちだけ受け取っておくよと、寂しげに言った。
そうは言っても、子供の俺に、お店のやり方なんてらわかるはずもなく、俺はうちに帰って母さんに聞いてみた。
そうね。先ずはお金の計算が出来なきゃだし、
他にもいろいろあるわよ。
母さんの話しを聞いて俺はびっくりした。こんなにいろんなことを一人でこなしてたうめさんは、スーパーバーさんだと思った。小4の俺1人では、絶対に出来ない。どうしたら‥
俺は風呂に入りながら考える。うーん‥
ひらめいた!
翌日学校の帰り、駄菓子屋梅ちゃんに寄る。
いらっしゃい。あ!学校の帰りに直接来ちゃダメじゃない。
うめさんは椅子に腰掛けたまま、俺に注意した。
今日は買い物に来たんじゃないよ。働きに来たんだ。
え!働くって?
俺が代わりにお店をやるんだよ。
俺はそう答えると、一緒にやる仲間を紹介した。
計算は算数が得意なガク、字がきれいなことみちゃんはショーカード係り。とおるは綺麗好きだからお掃除、そして俺は仕入れ。
仕入れ?
そう。この前塾で割合を習ったからね!任せてよ。
俺は胸を張ってそう言った。
あらあら。なんだか心配掛けちゃったね。みんながお手伝いしてくれるなら、閉店は延期にしようかな。
うめさんは少し涙ぐみながら、嬉しそうに言った。
あれから何年経ったのか。俺は今でも駄菓子屋梅ちゃんの店番をしている。あの頃ガキだった俺も、今ではすっかり爺さんになり、最近腰が痛くて店番も辛くなって来た。
駄菓子屋うめちゃん閉店します。
長い間ありがとうございました。今月いっぱいで閉店します。店主
そう書いた紙を、店の窓に貼っていると、
どうしてやめちゃうの?
いつも来る小学生の男の子が、俺に声をかけて来た。
(了)