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東京駅



蒸し暑い東京駅の構内、たくさんの人たちが行き交う中、私は総武快速に乗る為に、不慣れな構内をずっと彷徨っていた。


あれ?ここさっき来たとこじゃん

通路に埋め込まれている、ピカピカ光る矢印に沿ってちゃんと
歩いて来たはずなのに、なかなか総武快速のホームに辿り着けないのだ。

あー、もう脚が疲れて、のども渇いたし、
売店でも飲み物買って、一息入れるか。 

そう独り言を言い、飲み物を買い、壁にもたれて、目の前を行き交う
たくさんの人たちをながめる。

総武快速、横須賀線は、青い矢印なんだよね・・・。間違ってないと思うんだけど。

案内板がわりに、通路に埋め込まれた矢印。
乗り換えしたい路線によって、色分けされている。私はまた青い矢印の上を歩き始めた。

矢印に従いコンコースを歩き、売店がひしめく狭い通路を通り、また広い場所にでて、を繰り返すうちに、気がつくと周りに人はいなくなり、薄暗い通路にはただ私1人きり。はるか前方にT字路が見え、
青い矢印が左に折れている。今度は左か・・・。疲れてきた脚を引きずり、一歩踏み出したそのとき、わたしの目の前で左に折れている矢印が、グニャリと右に曲がったのだ。驚いてる私の目の前で、矢印はグニャリ、また左に曲がった。

何?何?この矢印。もしかして、なかなか目的地に辿りつけなかったのは、矢印が勝手に動いていたから?

私はなんだか急に怖くなり、元来た道を引き返そうとしたその時、通路がまるでスポンジのように柔らかくなり、波打ち始めた。
怖くなってもと来た道を引き替えそうと、
後ろを振り向いたら、通路のかべが膨れて、通路を塞いでいる。驚いて前を向いたら、目の前の壁も膨れていて、先にも進めない。

どうしよう。どちらにもいけない!

そう叫ぶと同時に、また床が波打ち、私はうつ伏せに倒れる。倒れた私は、床の波に乗り前に進む。進むというか、膨れて波打つ壁や床に揉まれ、押し出されるといった方が正しいかな?
 
しばらくもにょもにょと揉まれながら、通路を進むと、いきなり視界が広がった。

助かった!

と思った瞬間、私はポンっと空中に放り出され、そして地面に落下した。

ズシンズシン、大きな地響きで目を覚ました。私は地面に落下したときに、身体をアスファルトが敷かれた道路に打ちつけ、しばらく気を失っていたのだった。ここはどこなんだろう?そう思いながら、身体を起こして
周りを見渡した。

市川だ!私のうちの近くだ。
なんで?駅の構内に閉じ込められてた
はずなのに・・・

そしてまた激しい地響き。そして建物が崩壊するような音と叫び声。一体何が?
音が聞こえる方に振り向くと


無数の足が生えた東京駅が、街を破壊しながらゆっくり歩く姿だった。
東京駅は、たくさんの建物を薙ぎ倒しながら、真っ赤な夕陽が沈みかけている、江戸川の方へ歩いていった。


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