【日記】子供のまま
「そうだな。大人は皆、体裁を気にして本性を上手に隠す。そうして社会に溶け込む」
私はねくら氏と変態について、
意見を交わしていた。
ねくら氏は、端的に言えば悪友である。
幾つもの企みや謀略、そして我が人生を、
彼女に相談してきた。
今回は取り立てて悩んではいなかったが、
大人っぽさとは何かを彼女に求めていた。
「それなのに、私は変態的思考を嗜好に任せて披露している。故に子供なのかもしれない」
「つまり。私が私である限り、私が大人になる日など来ない」
私は絶望に伏していた。
しかし、ねくら氏は明るい笑顔だった。
「私は、そのままでいて欲しいと思ってるよ」
甘言に誘惑されかけたが、
つられる気持ちを振り払い、私は続けた。
「最近、落ち着いた品のある街が好きだ。よく散歩する。しかしだ。俺みたいな変態は一人も歩いてない。皆、上品で所作が綺麗な垢抜けた大人だ。いつかここに住みたいと思えば思うほど、理想と現実の乖離に胸と頭を痛める」
「最近私も思う。飲み会に参加しててもね。他の女友達は変態をキモいものとして、冷めた目で見るの。私は楽しくて、変態の狼藉に拍車をかけようと唆す。やっぱり多少変態の人の方が好きなんだろうなぁって」
私は首を傾げた。
「同じ悩みか……?」
「現実と感覚の乖離がね。女性と話す頻度が低いからか、久々に話すと世間と差異があるの」
私は先ほどの言葉を掘り返した。
「先ほど、そのままでいて欲しいと言ったな」
「言ったよ? そのままで大丈夫。その貴方を好いてくれる人はたくさんいるよ」
私はねくら氏を真っ直ぐ見つめた。
「おっぱいをいっぱい合体し、一杯のハイパーおっぱいで乾杯」
「急に変態だね。さすが」
「仮に彼氏がこの発言をしたと考えたら、どうだ?」
「別れるよ?」
「無責任め」
ねくら氏は一本取られたと言わんばかりに、
けらけら笑った。
私は強く非難した。
「私が結婚できなかったら貴様のせいだ」
「大丈夫だよ。落ち着いて。というか、落ち着かせて。逸る気持ちもその可哀想な人生も」
慰めなど期待してはいけなかった。
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