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昔好きだった音楽を聴いて、青空の下にいるのが恥ずかしくなった話

音楽の趣味って、その時々の思考や状況を如実に表しているように思う。

ぼくが音楽を本格的に聴き始めたとき、最初に買ったアルバムは『オレンジレンジ』だった。みんながきいている曲がぼくの好きな曲だ。

そして恋をする。『GReeeeN』を聴き始める。あのコが好きな曲がぼくの好きな曲だ。

自我が芽生え、自分とは何かを問い始める。クラシックな洋楽を聴き始める。みんなが聴かない曲がぼくの好きな曲だ。

早く大人になりたいと思う。少し背伸びがしたい。昭和歌謡を聴き始める。親が聴いていた曲がぼくの好きな曲だ。


そんな好みが揺れ動く激動の青春を過ごして、いろいろなことが落ち着き始める。たぶん、今の僕は、今の僕が好きな曲がぼくの好きな曲だ。

そんな僕が、ちょっと恥ずかしい気持ちになりたくて、高校生の頃狂ったように聴き、憧れ、青春をささげたバンドの曲を聴いてみた。

青臭くて、イタくて、聴いてるこっちが恥ずかしいくらい下手で、相変わらずめちゃくちゃ格好いい。ありがとう僕の青春!きみは何も間違っていなかったよ!あのときの間違いも、間違いじゃなくなったよ!!



と思うと同時に、空虚な思考がぼくをすっかり包み込む。

冬が近づく。日照時間が不足したり、朝の目覚めが悪いと、僕はすぐに憂鬱の世界に引き込まれてしまう。そして、冷めた醒めた自分が顔を出す。

昔からそうだ。

ぼくは世の中に対して温度が低い。熱のこもったものには近づけない。近づかないんじゃない。ほんとうは近づきたい。でも、近づけない。

この苦しみはきっと誰にもわからないさ。 



…いや違う。

誰にもわからない苦しみを持っている自分でいたいだけ。周りがはしゃいでいるときに、ひとり遠くを見ていたいだけ。

本当はみんなとはしゃぎたい。でも、バカ騒ぎしている自分を見られるのが恥ずかしいだけ。何かに全力で挑戦して、失敗する姿を見せたくないだけ。



誰よりも深い思想の中にいるように見せて、一番浅いところにいる。陸上で自分を大声で主張するのは恥ずかしい。でも、水深の深いところで叫んでも誰にも伝わらない。

だから比較的浅い水深で必死に叫んでいる。



『恥ずかしいところは誰にも見られたくない。でも、誰でもない唯一無二の僕を見て!僕が一生懸命生きている姿をみんな見て!』




これって、きみも同じなんじゃないかな?




健康診断。採血。ぼくの血は年を追うごとに黒くなっていく。

鋭い思考は血流にのり、巡り巡って自分の命を短くする。

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