アハロン・アッペルフェルド:トラウマと記憶を刻む作家
こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!
今日は、アハロン・アッペルフェルドを紹介します。
アハロン・アッペルフェルド(1932-2018)は、ルーマニア生まれのイスラエルの作家です。
ホロコーストを生き延びた経験を背景に、記憶、喪失、アイデンティティといったテーマを探求する作品を数多く発表しました。
彼の作品は、簡潔な文体と詩的なイメージ、そして夢のような幻想的な雰囲気で特徴づけられています。
ノーベル賞の候補にも挙げられましたが、残念ながら亡くなってしまったので、それはかないませんでした。
幼少期のトラウマ
アッペルフェルドは、1932年にルーマニアのブコビナ地方で生まれました。8歳の時、第二次世界大戦が勃発し、ナチスドイツによるユダヤ人迫害が始まります。
彼は母親と離れ離れになり、ウクライナの強制収容所に送られました。そして、離れ離れになった瞬間に母親は殺害されました。
その後、収容所のなかで父親も亡くなります。その後、彼は強制収容所を脱走し、3年間森や村をさまよいながら生き延びました。
その後ソビエト連邦の部隊に加わって生き延び、戦争後はイタリアに難民として移住します。そのあとパレスチナに移住し、その後イスラエルに移住してなんとか生き延びました。
そして、ヘブライ大学を卒業して、大学教授を務めました。
この幼少期の過酷な体験は、彼の文学に深い影を落とすことになります。
幼時からドイツ語・イディッシュ語・ルーマニア語・ウクライナ語・ロシア語などに接し育った影響も文学に現れています。
代表作
こちらの作家の作品、ぜひ皆さんに読んでもらいたいと思って記事にしたのですが、残念ながら日本語訳は以下の二冊しか発行されていません・・・
そして、中古本しかもうないのですが、ぜひ読んでみてほしいので紹介します。
「バーデンハイム1932」
1932年のオーストリアの保養地バーデンハイムを舞台に、ヨーロッパ中のユダヤ人富裕層が集う夏のひとときを描いた作品。
一見牧歌的な雰囲気の中にも、迫りくる暗い影が暗示され、登場人物たちの不安や予感が繊細に描かれています。
「不死身のバートフス」
ホロコーストを生き延びた少年が、終戦後のヨーロッパを放浪する物語。記憶、喪失、そしてアイデンティティの模索が、寓話的な筆致で描かれています。
少年は、名前や過去を失いながらも、生きることへの強い意志を持ち続けています。
アッペルフェルド文学の特徴
ホロコーストの記憶
アッペルフェルドの作品は、直接的な描写を避けながらも、ホロコーストの経験が根底にあります。登場人物たちは、喪失感、罪悪感、孤独感といったトラウマを抱え、過去と向き合いながら生きています。
簡潔な文体と詩的なイメージ
無駄を削ぎ落とした簡潔な文体と、鮮烈なイメージの対比が、独特の読後感をもたらします。寓話や民話のような要素も取り入れられ、普遍的なテーマを浮かび上がらせています。
夢と現実の交錯
アッペルフェルドの作品では、夢と現実、過去と現在が入り混じり、幻想的な雰囲気が漂います。これは、トラウマを抱えた人間の精神状態を反映しているとも言えます。
アッペルフェルドは、ホロコーストという歴史的な悲劇を、個人的な記憶と結びつけ、文学という形で昇華させた作家です。
彼の作品は、人間の心の奥底に潜む闇と光を照らし出し、読者に深い感動と問いを与え続けています。
小説ではなくノンフィクションでホロコーストを学びたい方は、以前に書いたこちらの記事を参考にしてください。
いま、世界がとても不安定な状況だからこそ、記事にしてみました。ぜひ、誰かの心に刺されば幸いです。
【編集後記】
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