問題解決の道標、G.ポリア著『いかにして問題をとくか』
いまから紹介する『いかにして問題をとくか』は、1945年の初版以来、70年以上にわたって世界中で読み継がれている、まさに問題解決の金字塔と言える名著です。
これ、面白くて、本来は数学の問題を解くための本として書かれた本なんです。
ですが、その本来の目的と違う目的で読まれているんです。笑
ぜんぜん違う分野の研究者、ビジネスマン、そして日常の問題に悩む人々とか、はたまた主婦にめちゃくちゃ読まれて売れた本なんです。
なぜか?
その魅力は、単に問題を解くためのテクニックを羅列するのではなく、問題解決に必要な「思考の習慣」を身につけることに重点を置いている点にあります。
ポリアは、読者を「問題解決の達人」へと導くための包括的なガイドとして、本書を構成しています。
問題解決の4つの段階 - ポリアの思考プロセス
ポリアは、問題解決のプロセスを以下の4つの段階に分け、それぞれの段階における具体的な方法を、豊富な例題と明快な説明を用いて丁寧に解説しています。
1.問題を理解する
これは問題解決の出発点であり、最も重要な段階です。問題文を注意深く読み込み、その意味を正確に把握することが求められます。
未知のもの(求めるもの)、与えられたもの(条件)、条件などを明確にすることで、問題の全体像を把握し、解決への道筋を見出すことができます。
ポリアは、問題を自分の言葉で言い換えたり、図や表を用いて視覚化したり、具体的な例を挙げて考えてみたりするなど、様々な方法を駆使して問題を深く理解することの重要性を説いています。
2.計画を立てる
問題を理解した後は、解決のための戦略を立てる段階へと進みます。これは、いわば問題解決の地図を描く作業であり、創造性と洞察力が試されます。
ポリアは、既知の知識や類似問題の解法を活用すること、問題をより小さな部分に分解すること、関連する問題を検討することなど、様々なアプローチを提案しています。
さらに、「特殊化と一般化」「アナロジー」「逆向きに考える」といった、思考の柔軟性を高めるための発想法も紹介しており、読者の思考を刺激し、新たな視点を与えてくれます。
3.計画を実行する
立てた計画に基づいて、具体的な手順を一つずつ実行していく段階です。この段階では、論理的な思考力と注意深い計算力、そして粘り強さが求められます。
計画通りに進まない場合は、柔軟に修正を加えながら、諦めずに解決を目指します。
ポリアは、各ステップを慎重に進めること、計算ミスや論理的な誤りを防ぐこと、そして常に全体像を意識することの重要性を強調しています。
4.振り返る
問題が解けたら、そこで終わりではありません。ポリアは、得られた解を検証し、反省点や改善点を見つける「振り返り」の重要性を説いています。
解が本当に正しいかどうか、より良い解法はないか、他の問題に応用できるかなど、多角的な視点から振り返ることで、問題解決能力はさらに磨かれ、深い理解へと繋がります。
ポリアの思考法 - 問題解決の鍵
ポリアは、上記の4つの段階を効果的に進めるための様々なヒントやテクニックを、惜しみなく提供しています。
ヒューリスティック
ポリアは、問題解決を促進するための経験的な規則や指針を「ヒューリスティック」と呼び、その重要性を強調しています。
例えば、「問題を特殊化または一般化してみる」「類似問題を探してみる」「図を描いてみる」「逆向きに考えてみる」といったヒューリスティックは、問題解決の糸口を見つけるための強力な武器となります。
数学的思考
ポリアは、数学的思考が問題解決において重要な役割を果たすと考えています。帰納的推論、演繹的推論、類推、抽象化といった数学的思考法は、問題の本質を見抜き、論理的に解決へと導くための基盤となります。
心理学的側面
ポリアは、問題解決における心理的な側面も重視しています。問題に対する興味や関心、集中力、そして諦めない心は、問題解決を成功させるための重要な要素です。
『いかにして問題をとくか』は、単なる問題解決の指南書を超えた、人間の思考力と創造性を刺激する名著です。
ポリアの洞察に満ちた言葉は、読者に問題解決の喜びと興奮を伝え、知的な探求心へと駆り立てます。
本書で紹介されている思考法は、問題解決能力を高めるだけでなく、学習効果を高め、創造性を育み、人生をより豊かにする力となるでしょう。
さらに深く知りたい方へ
ポリアの思考法をより深く理解したい方は、『数学の問題の発見的解き方』もおすすめです。2巻構成の本書では、発見的思考法についてより詳細に解説されています。
ぜひ、チェックしてみてください!
【編集後記】
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