世界の美しい瞬間 30
30 シナモン
一度気に入るとそればっか食べてしまう傾向がややある。
つまりわたしはリピーターになりやすいのだ。たぶん。
京都のおみやげ物として、皆様は八ツ橋を頂いたことはあるだろうか。
ここで言うのは生八ツ橋という柔らかな生地ににあんこなどが挟んである三角のやつではない。
堅い、長方形の、横から見ると半円になってる、昔からのいわゆる八ツ橋である。
八ツ橋もメーカーさん(といういいかたで合っているか分からないが……)によって、けっこう味が違う。
おみやげ屋さんによっては試食用があるので、気軽に好みを確かめられる。
わたしは、ニッキが効いたタイプが好きだ。
そして、八ツ橋の生地の原材料が少なくどシンプルなやつが大好きだ。
お店の方に話を聞くと、創業から300年も経っているが、途中でニッキ精製が良くなったので、ニッキ好きにはより美味しく感じられるとのことだ。嬉しい。
この夏そんなニッキ風味好きなわたしが「おお」とリピートしてしまったのは、こちら。
ラムネソフト×ニッキ八ツ橋
である。
まず、この期間限定ラムネソフトが旨い。
京都に遊びに来てくれた母にも薦めて二人で食べたが、味のこだわりがあるらしい彼女を
「これはもう一回食べたくなるね」
と言わしめたものだ。
そして、ラムネの味と、このニッキ八ツ橋の風味が絶妙に合うのだ。
八ツ橋増量ボタンが欲しい……‼
もしくはソフトのコーンを八ツ橋にして欲しい!!!
と思うくらい、合うのだ。(敢えて二度言う。)
開発者の方、お店の方ありがとう。わたしは見事にはまりました。
でも、この一見ソフトクリームという庶民派なものと、おみやげ物。お菓子×お菓子だけど、上品な味っていう組み合わせ、しかもラムネとニッキの味の力加減って日本にしかないのかもしれないなぁ、としみじみ思うのだ。
お互いが主張し過ぎず相手を立て、でも互いの良い味を引き立て合うみたいな……すてきな人間関係のようだ。
期間限定の味の組み合わせを楽しむのも、美しい夏の思い出である。
とくに、シナモン(ニッキ)はわたしの思い出たちと相まって、夏の味がするのだ。だから、余計に美味しく感じる。
五山の送り火を見ながら、ああ、日本の夏って美しいなぁ、夏が少しずつ去って行くなあと感じた。
雷がドーン!とどこだか近く辺りに落ちて、その瞬間降るだろう夕立にさっと皆がそれぞれの立ち位置で備える動きをするのを見るにつけても、
ああ、今年の夏も楽しかった、去って行くのだなぁと感慨深くなった。
ちなみに、生八ツ橋は来るべき秋に備えて、焼き芋味と栗味がもう出ていた。
ああ……日本に生まれ育って幸せだ。