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軍事・安全保障

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記事一覧

米韓の新たな拡大抑止体制と日米の拡大抑止

2023年4月25日、米韓は同盟締結70周年を記念してバイデン政権において二度目の首脳会談を開催された。 会談を経て、共同声明と「ワシントン宣言」と呼ばれる合意文書が発表された。 二つの文書の内容について、日本語に翻訳し、日本の安全保障と関係を考察する。 拡大抑止における新たな取り組みワシントン宣言の内容 ワシントン宣言の主な内容をまとめると、アメリカは韓国との共同防衛態勢に対する最も強い関与、すなわち核戦略レベルにおいても関与することを改めて表明し、同時に韓国はNP

【まとめ】国家防衛戦略を読む

Ⅰ策定の趣旨国民の生命と市民生活、領土・領海・領空を守り抜くことが政府の重大な責務であり、安全保障の根幹。 日本は、今後も専守防衛・文民統制の確保・非核三原則を堅持し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないという基本方針を維持していく。 国際社会は、深刻な挑戦を受け新たな危機の時代に突入している。 中国は、東シナ海・南シナ海で一方的な現状変更とその試みを進めている。 北朝鮮はかつてない高頻度で弾道ミサイルを発射し、核弾頭の小型化を追求している。 ロシアもウクラ

【まとめ】国家安全保障戦略を読む

令和4年度に発表された新たな国家安全保障戦略について、各項目ごとのまとめメモ。 Ⅰ戦略策定の背景と意図全般的な国際社会の現状 国際社会は、時代を画する変化に直面している。 グローバリゼーションと相互依存のみによって国際社会の平和と発展は保証されないことが改めて証明された。 一部の普遍的価値を共有しない国が、経済的、技術的に発展し既存の国際秩序へ挑戦している。 人類が過去一世紀近くかけてにわたって築き上げてきた武力行使の一般的禁止が、安保理常任理事国によって、あからさ

自衛隊の地対艦ミサイル装備部隊

地対艦ミサイル部隊の編制地対艦ミサイル部隊は、陸上自衛隊の特科部隊の一つであり、現在5個の地対艦ミサイル連隊が編制されている。令和4年度に発表された防衛力整備計画で、前回の中期防衛力整備計画で示された5地対艦ミサイル連隊から7個の地対艦ミサイル連隊に増強することに加えて、7個地対艦ミサイル部隊(12SSM能力向上型を装備)、島嶼防衛用高速滑空弾大隊、長射程誘導弾部隊を編制する方針が示された。 ※第7地対艦ミサイル連隊編制に関しては、令和5年度の防衛省予算 概算要求にも記され

自衛隊の対空ミサイル装備部隊

陸上自衛隊全国の各方面隊隷下及び各師旅団の隷下に高射部隊が配置されている。 令和4年度に発表された防衛力整備計画では、現在の7高射群体制から8個高射群に増強することが記された。 独立高射特科部隊 北部方面隊 第1高射特科団 第1高射特科群 (千歳) 第4高射特科群 (名寄) 東北方面隊 第101高射特科群 (八戸) 中部方面隊 第2高射特科群 (松戸) 西部方面隊 第2高射特科団 第3高射特科群 (飯塚) 第7高射特科群 (竹松) 第102高射特科

日米韓3ヵ国会談と共同声明

はじめに2023年8月18日にアメリカキャンプデービッドで日米韓の3ヵ国会談における共同声明(キャンプデービットの精神)とキャンプデービッドの原則、Commitment to Consultが発表された。 そのうち安全保障分野についての要点メモ。 共同声明における安全保障分野への言及 3ヶ国間の集団的利益及び安全保障への影響を及ぼす、地域的な挑発や脅威に対抗するために、迅速な方法での協議を行う。 協議を通じて、情報の共有、メッセージの調整、対応行動の調整を行う。 首脳

希望の世界か、困難と不信の世界の分岐点

国家安全保障戦略 結語より抜粋感想人は将来の幸福度の予測に基づいて行動を決めている。例えば、結婚や出産といった判断は、現在の所得ではなく将来の所得が増えるか、豊かな生活を送れるかという予測に基づいて決めている。仮に貧しく、豊かでない生活をしていたとしても将来、労働力として所得の増加や幸福度の増加につながるのであれば、子供を産むという選択をする。一方で、現在豊かな生活をしていたとしても、将来離婚や所得の減少が予測できるのであればその選択をとらない。つまり「将来に希望が持てるか」

近年の自衛隊の衛生機能予算額

はじめにH27年度から令和4年度までの予算概要より自衛隊の救護能力に関する予算の推移をまとめました。項目別の予算について以下の表とグラフにまとめました。 概観各項目の詳細自衛隊病院の集約・強化 自衛隊病院の拠点化・高機能化に向けた取り組み 後送病院の充実・強化 福岡病院の建替え 入間病院の建設 横須賀病院の建替え 自衛隊中央病院等の医療情報システムの換装 事態対処時における救護能力向上 事態対処時における第一線の救護能力の向上 第一線から最終後送先までのシ

近年の自衛隊の無人アセット予算

全般平成26年度から令和4年度までの予算額の推移 無人機関連予算に対する各項目の割合 各年度別H26年 H27年 H28年 H29年 H30年 H31年 R02年 R03年 R04年

最小限抑止戦略とは何か

最小限抑止とは軍事的・政治的観点から判断した最小限の核兵器で、自国に対する核攻撃を抑止する戦略。 抑止を目指す対象  主に自国に対する核攻撃。同盟国への攻撃、エスカレーションドミナンス、核戦争の遂行と終結などは基本的に対象とされない。 メカニズム  主に相手国の主要都市など、対価値目標への報復を行う。(全面核戦争へのエスカレーションを制御するための対兵力攻撃も考えられている。) 核兵器による損害は非常に大きく、たとえ数発であっても報復を受けた後、戦争を遂行することは困

核戦略、核体制、宣言政策

核戦略(Nuclear Strategy) 生産と使用のための教義と戦略の形成。 使用する戦略を他国に伝達するための計画。 核体制(Nuclear Posture) その国が持っている能力や実行している展開計画、指揮統制手順などのこと。 抑止戦略を支え、信頼性(Credibility)の確保し、核兵器の能力を管理し、戦力化するために必要。 宣言政策(Declaratory Policy) 政府が核兵器を使用するであろう状況を示したもの。 具体的な例として、非核保有国

エスカレーション抑止についてメモ

エスカレーション抑止とは ロシア軍の部内誌等で議論されてきた核戦略。Escalation to De-Escalateを略してE2DEとも呼ばれる。 ただし、現在のロシアでは「地域的核抑止」という別の核戦略が採用されていると明示されている。実際に採用されているのかは議論がある。 進行中の戦闘の停止を敵に強要する、もしくは大国の介入によって劣勢になる場合に、脅しや適度な損害を用いてその介入を抑止する。 敵あるいは他の大国に対して、これ以上の進行は核戦争の危険があることを

尖閣諸島周辺の海上保安庁と海警局①〈海保編〉

~第11管区の規模(1000トン型以上のみ)~ PLH(Patrol vessel Large with Helicopter)つがる型巡視船 公称船型:ヘリコプター1機搭載型 総トン数:3100トン(参考1) 常備排水量:3652トン(PLH-02~08)3766トン(PLH-09、10) 満載排水量:4037トン 沖縄海上保安部所属(尖閣専従部隊所属) PLH-03「うるま」PLH-06「おきなわ」 沖縄海上保安部所属 PLH-09「りゅうきゅう」 PL(Patrol