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【まとめ】国家防衛戦略を読む

Ⅰ策定の趣旨

  • 国民の生命と市民生活、領土・領海・領空を守り抜くことが政府の重大な責務であり、安全保障の根幹。

  • 日本は、今後も専守防衛・文民統制の確保・非核三原則を堅持し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないという基本方針を維持していく。

  • 国際社会は、深刻な挑戦を受け新たな危機の時代に突入している。

  • 中国は、東シナ海・南シナ海で一方的な現状変更とその試みを進めている。

  • 北朝鮮はかつてない高頻度で弾道ミサイルを発射し、核弾頭の小型化を追求している。

  • ロシアもウクライナ侵略を行うとともに、極東地域での軍事活動を活発化させている。

  • 今後、東アジアにおいて第二次世界大戦以来の国際秩序を揺るがす事態が生起する可能性がある。

  • 日本はその最前線に位置しており、日本の安全保障・防衛政策の在り方が、地域と国際社会の平和と安定に直結すると言っても過言ではない。

  • ロシアのウクライナ侵略は、自国の主権と独立は自国の努力によってのみ実現するものであることを教えている。

  • 他方で、現在はどの国も一国のみで自国の安全を守ることはできない。普遍的価値と戦略的利益を共有する同盟国・同志国との協力・連携が不可欠である。

  • 日本と同盟国・同志国が共通の努力を行い、その相乗効果で力による一方的な現状変更を許さない。

  • 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境において、国民の生命、市民生活を守り抜くためには、その現実に向き合って相手の能力と戦い方に着目した防衛力強化を行う必要がある。

  • こうした防衛力とともに、国力を総合した国家全体の防衛体制の強化を実施することが、日本の抑止力を高め、日米同盟を強化していく道である。

  • 米国が新たに国家防衛戦略を策定したところでもあり、これまで、整備・維持・運用の基本的指針であった防衛計画の大綱に変わって、国家防衛戦略を策定する。

  • 本戦略と防衛力整備計画は日本の防衛政策の大きな転換点となるものである。

  • 中長期的な防衛力の強化の方向性と内容を示す本戦略の策定により、大きな転換点の意義について、国民の理解の深化に努める。

Ⅱ 戦略環境の変化と防衛上の課題

1.戦略環境の変化

  • 国家間の経済や文化をめぐる関係は一層拡大・進化している。

  • しかし、普遍的価値やそれに基づく政治・経済体制を共有しない国家が勢力を拡大している。

  • 力による一方的な現状変更は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序に対する深刻な挑戦。

  • 国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入しつつある。

  • グローバルなパワーバランスの変化により、政治・経済・軍事にわたる国家間の競争が顕在化している。

  • 特にインド太平洋地域ではその傾向が顕著。

  • 中国は一方的な現状変更を継続・強化している。

  • またロシア・北朝鮮も活動を活発化させている。

  • 中国と米国の国家間の競争は、様々な分野で激化していくと思われる。

  • この競争は、今後10年間が決定的なものになるとの認識を示している。

  • 科学技術の発展が安全保障の在り方を根本的に変化させ、各国は将来の戦闘様相を一変させる、ゲーム・チェンジャーとなりえる先端技術の開発を行っている・

  • 中でも、中国は「軍民融合反転戦略」の名の下に、技術イノベーションの活発化と軍事への応用を行っている。

  • 特に、人工知能を活用した無人アセットによる軍事力の強化を加速させている。

  • これにより、従来の軍隊の構造や戦い方に根本的な変化が生じている。

  • 加えて、サイバー領域によるリスクの深刻化、偽情報の拡散を含む情報戦の展開、気候変動等のグローバルな安全保障所の課題も存在する。

2.日本周辺の軍事動向

  • 中国の政治的意思

    • 2017年の党大会での報告において、2035年までに「国防と軍隊の現代化を基本的に実現」2050年までに「世界一流の軍隊」を築き上げることを目標に掲げている。

    • 2020年の第5回全体会議では、2027年に「健軍100年の奮闘目標」を達成することを加えた。

    • 2022年の党大会における報告において、「世界一流の軍隊」を早期に構築することが「社会主義現代化国家」の建設のための要請であることが新たに明記された。

    • そうした、目標の下で「新型挙国体制」をかかげ、「機械化・情報化・知能化」の融合発展を推進し、軍事力の強化している。

    • その上で、今後5年が「社会主義現代化国家」の全面的建設をスタートさせる肝心な時期と位置付けている。

  • 中国の国防費

    • 中国の公表国防費は、1998年に日本の防衛関係費を上回っていこう、急速なペースで増加しており、2022年度には日本の4.8倍に達している。

    • また、中国の公表国防費は実際に軍事目的に支出している学の一部に過ぎないとみられる。

    • 国防費の急速な増加を背景に、中国は日本を上回る数の近代的な海上・航空アセットを保持している。

    • 宇宙・サイバー領域における能力も強化している。

    • 核戦力については、2020年代末までに少なくとも100発の核弾頭保有を企図している。

    • ミサイル戦力については、周辺地域へのA2/AD能力の強化を行っている。

    • 地上発射型の中距離巡航ミサイルを多数配備、対艦弾道ミサイル、長射程対地巡航ミサイル、極超音速滑空弾の開発・配備を進めている。

    • 無人アセットの開発・配備を進めており、日本周辺での活動も確認されている。

  • 中国軍の活動

    • 尖閣諸島周辺などの東シナ海・日本海・伊豆諸島・小笠原諸島周辺を含む西太平洋の第2列島線内での活動を活発化させている。

    • 台湾に対する軍事的圧力を高めている。

    • 南シナ海で無人島の軍事拠点化を進めている。

    • 中国海軍艦艇が、尖閣諸島周辺で活動を活発化させる状況のもと、中国海警局の船舶が、尖閣諸島周辺の日本の領海への侵入を繰り返している。

    • また、海軍艦艇が南西諸島周辺の領海や接続水域を航行する例がみられている。

  • 台湾に対して

    • 2022年の党大会における報告で「最大の誠意と努力を尽くして平和的統一の実現を目指すが、決して武力行使の放棄を約束しない」と改めて表明。同時に、「両岸関係の主導権と主動権をしっかり握った」、「祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」と表明。

    • 中台軍事バランスは中国優勢に急速に変化。

    • 中国は台湾周辺で中国軍が活動している状態を既成事実化させつつ、実戦能力の向上を企図している。

  • まとめ

    • このような中国の態度は、日本と国際社会の懸念事項。

    • 日本の平和と安全、国際社会の平和と安定の確保、法の支配に基づく国際秩序の強化に対する、これまでにない最大の戦略的な挑戦

    • 日本の防衛力と同盟国・同志国と連携によって対処するべきである。

  • 北朝鮮の動向

    • 体制維持のために、大量破壊兵器や弾道ミサイルの集中的な増強に取り組んでいる。

    • 日本を射程に収める核兵器も保有している。

    • 弾道ミサイルの発射様態を多様化させている。

    • 機動式弾頭を開発している。

    • TEL・潜水艦・鉄道といった様々なプラットフォームから発射することで、発射兆候把握・探知・迎撃を困難にすることを企図している。

    • また、極超音速滑空弾、ICBMの実現を優先課題に掲げて開発を進めている。

    • 北朝鮮のこのような行動は国連安保理決議に違反し、地域の平和と安定を著しく阻害するものである。

    • 日本にとって、一層重大かつ差し迫った脅威

  • ロシアの動向

    • ウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがすもの。

    • 欧州方面における、最も重大かつ直接の脅威と受け止められている。

    • 日本周辺においても、極東地域での軍事活動の活発化させている。

    • 新型装備の配備、大規模な軍事演習の実施、中国と連携を強化し、艦艇・航空機との共同演習を実施している。

    • 中国との戦略的な連携と相まって、防衛上の強い懸念である。

3.防衛上の課題

  • ロシアのウクライナ侵略は、第2次世界大戦以降の国際秩序の根幹を揺るがすもの。

  • このような力による一方的な現状変更は、今後インド太平洋地域においても生起しうる。

  • ロシアがウクライナを侵略するに至った背景は、ウクライナの防衛力が不十分であり、抑止できなかったことにある。

  • どの国も一国では自国の安全を守ることはできない中、共同して侵攻に対処する意思と能力を持つ同盟国との協力の重要性が再認識されている。

  • さらに、高い軍事力を持つ国が、ある時侵略という意思を持ったところにも注目すべきである。脅威は能力と意思の組み合わせで顕在化する。

  • 意志を外部から正確に把握することには困難が伴う。国家の意思決定が不透明であれば、脅威が顕在化する素地が存在する。

  • このような国から自国を守るには、抑止力が必要であり、相手の能力に着目した防衛力を構築し、侵略の意思をくじく必要がある。

  • 戦い方も、従来の様相とは変化している。

  • 精密打撃能力が向上した弾道・巡航ミサイルによる大規模なミサイル攻撃、情報戦を含むハイブリット線、宇宙・サイバー・電磁波領域や、無人アセットを用いた非対称な攻撃、核威嚇などの新しい戦い方が顕在化している。

  • 新しい戦い方に対応できるかが課題。

  • 多くの離島と広大なEEZや大陸棚に存在する、国民の生命と財産、領域、資源を守り抜くことが課題である。

  • 海洋国家であり、エネルギー資源と食料の多くを海外からの輸入に頼る日本にとって、自由で開かれた海洋秩序と、航行・飛行の自由と安全の強化が不可欠。

  • 日本は、都市部へ産業・人口・情報基盤の集中、沿岸部には原子力発電所、LNGタンク、石油コンビナート等の重要施設が多数存在している。

  • そのうえで自然災害などの様々な脅威から国民と重要施設を防護することも課題。

  • また、急速な人口減少と少子高齢化、厳しい財政状況などを踏まえると、人員の効率的な活用が不可欠。

Ⅲ 防衛の基本方針

これまでの防衛政策と今後の方針

  • 防衛力は、日本の安全保障を確保するための最終的な担保であり、脅威の抑止と対処を担う。

  • また、日本を守り抜くという意思と能力を体現するものでもある。

  • 日本は戦後一貫して、節度ある防衛力の構築に努めてきた。

  • 1976年に防衛計画の大綱(51大綱)策定以降、防衛力の意義は、日本が力の空白となって日本周辺における不安定要因とならないこととされてきた。

  • 冷戦終結後、自衛隊の役割と任務は、国内外での災害対処やPKO活動に拡大された。また、2010年の22大綱において防衛力の存在自体による抑止効果を重視した基盤的防衛力構想によらない整備を行うことが明示された。

  • 2013年の26大綱では厳しさをます安全保障環境に合わせ、真に実効的な防衛力を構築することと捉えた。しかし、その後も周辺国の大幅な軍事力の向上と活発な示威行動が日本と地域の安全保障を脅かしている。

  • 今後、いついかなる形で意思が変わり、力による一方的な現状変更が起こるのか予測が極めて困難な状況にある。力による一方的な現状変更が起こると、長期間、幅広い分野で全世界の人々の日常生活に大きな影響を与える。

  • 以上のことから、今後の防衛力は、相手の能力と戦い方に着目して構築する。

  • 防衛力を抜本的に強化するとともに、新たな戦い方への対応を推進する。

  • いついかなる時もい一方的な現状変更やその試みは決して許さないとの意思を明確にしていく。

  • こうした努力は日本一国のみでできるものではなく、同盟国・同志国と協力・連携していく。

  • 本戦略において、日本の防衛目標(Ends)を示しうえで、達成するためのアプローチ(Ways)と具体的な手段(Means)を示す。

日本の防衛目標

  1. 力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境を創出すること

  2. 日本の平和と安全にかかわる力による一方的な現状変更やその試みを、同盟国・同志国と協力・連携して抑止すること。
    また、武力攻撃が行われた場合も、日本への侵攻につながらないように、あらゆる方法を用いて、すばやく行動し、早期に事態の収拾すること。

  3. 日本への侵攻が起こった場合には、日本が主たる責任をもって対処し、同盟国の支援を受けつつ、これを阻止・排除すること。

核兵器の脅威に対しては、アメリカの拡大抑止が不可欠である。日本自身の努力とアメリカの拡大抑止をもって、あらゆる事態から日本を守り抜く。

防衛目標を実現するためのアプローチ

  1. 日本自身の防衛体制を強化するため、防衛力の抜本的な強化と国全体の防衛体制の強化。

  2. 同盟国である米国との協力をすすめ、日米同盟の抑止力と対処力を強化。

  3. 自由で開かれた国際秩序の維持・強化のために協力する同志国との連携の強化。

1.日本自身の防衛体制の強化

  • 防衛力強化の基本的考え方

    • 防衛力については、これまで想定される各種事態に真に実効的に対処し、抑止できるものを目指してきた。

    • 31大綱において、平時から有事までのあらゆる段階における活動をシームレスにできるよう、宇宙・サイバー・電磁波領域と、陸海空の領域を有機的に結合させつつ、統合運用による機動的・持続的な活動を行える、多次元統合防衛力を構築してきた。

    • 相手の能力と新しい戦い方を踏まえ、想定される各種事態への対応を、能力評価などを通じた分析により将来の防衛力のあり方を検討してきた。

    • 多次元統合防衛力を抜本的に強化し、その努力をさらに加速していく。

  • 日本の防衛力の抜本的強化の具体策

    • ア.防衛力の意義

      • 防衛力は、日本への侵攻を日本が主たる責任をもって阻止・排除できるものであるべき。

      • 軍事的手段で日本侵攻の目標を達成できず、コストに見合わないと、相手に認識させられるもの。

      • 日本が十分な防衛力を持てば、同盟国との連携で、インド太平洋地域における力による一方的な現状変更を抑止できる。

      • 力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出につながる。

    • イ.平時の備え

      • さらに、防衛力は日本への侵攻を抑止できるよう、常続的なISR能力、FDOとしての訓練・演習、対領空侵犯措置を行い、かつ平時から有事までシームレス対応できる能力でなくてはならない。

      • そのため、活動量が増える中でも練度を維持するため、国内外に訓練基盤を持つ。

      • 柔軟な勤務体制の構築により、高い即応性と・対処力を保持し、防衛力を構築する必要がある。

    • ウ.新たな戦い方への対応

      • 新しい戦い方へ対応できるもの出なくてはならない。

      • 領域横断作戦、ハイブリッド戦、IAMDを米国と共同で実施していく。

    • エ.新たな戦い方に必要な能力

      • 侵攻を抑止するために、遠距離から侵攻戦力を阻止・排除できるようにする。

      • そのため、「スタンドオフ防衛能力」「統合防空ミサイル防衛能力」を強化。

      • 侵攻が生起した場合の対処のため、「無人アセット防衛能力」「領域横断作戦能力」「指揮統制・情報関連機能」を強化する。

    • オ.速やかな実現

      • いついかなる形で一方的な現状変更が生起するか、予測困難である。

      • そのため2027年度までに、侵攻に対しての十分な対処力を持つ。

      • 今後5年間の最優先課題は、現有装備の最大活用。

      • 部品・工具、弾薬・燃料の確保、防衛施設の強靭化を実施。

      • 将来の中核となる能力の強化。

    • カ.人員・装備の最適化、効率化

      • 経費と人員の増加が必要

      • スクラップアンドビルドの徹底

      • 最適化・効率化

      • 調達方式の見直しによる調達コスト縮減と、防衛生産基盤への配慮

      • 少子高齢化対策のための、無人化・省人化・最適化

    • キ.防衛力強化の目的の再確認

      • 防衛力強化の目的は力による一方的な現状変更の抑止と対処。

      • 防衛力強化によって、その意図を認識させる。

      • 日本の防衛力強化が日米同盟の強化につながる。

    • ク.反撃能力とは

      • 日本への侵攻を抑止するカギとなるのは、スタンドオフ防衛能力を活用した反撃能力である。

      • 弾道ミサイル等による脅威が現実のものとなっている。

      • ミサイル防衛能力の継続的な強化とともに、更なる相手からの武力攻撃を防ぐ反撃能力の必要性。

      • 反撃能力は、憲法および国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではない。

      • また、日本が反撃能力を保有することに伴い、役割分担に変更はないが、日米が協力した対処していく。

  • 日本全体の防衛体制の強化の基本的考え方

    • 日本全体で連携しなければ日本を守れないことは自明である。

    • 防衛力だけでなく、外交力、情報力、経済力、技術力を含めた国力を統合して、政策を体系的に組み合わせ、防衛体制を構築していく。

    • 縦割り排除と、地方公共団体と民間団体との連携の強化。

  • 日本全体の防衛体制の強化の具体策

    • ア.外交による取組

      • 力による一方的な現状変更を許さないための取組として、外交努力が重要。

      • FOIPのビジョンの推進を通じて、平和で安定し、予見可能性の高い国際環境を能動的に創出していく。

      • 自衛隊においては、同盟国・同志国との多層的な連携・協力を実施していく。

      • 力による一方的な現状変更やその試みを抑止するとの意思と能力を示し続ける。

      • 相手の行動に影響を与えるために、FDOとしての訓練・演習や戦略的コミュニケーションを政府一体となって、実施していく。

    • イ.常続的なISRと情報戦における各官庁間の連携

      • 平素からの常続的なISR及び分析を関係省庁が連携して実施する。

      • 事態の兆候を早期に把握し、政府全体で迅速な意思決定を行い、関係機関の連携が重要。

      • 認知領域を含む情報戦についても、ファクトチェック機能やカウンター発信機能を強化。平素から政府全体で対応強化。

    • ウ.警察・海保との連携

      • 政府全体の意思決定に基づき関係機関が連携。

      • 平素から政府全体として、連携要領を確立しつつ、シミュレーションや統合的な訓練・演習により実効性を向上させる。

      • 外部からの武力攻撃に至らない侵害や武力攻撃事態への対応については、有事を念頭に平素から警察や海上保安庁と自衛隊との間で訓練や演習を実施する。

      • 特に武力攻撃事態における防衛大臣による海上保安庁の統制要領を含め、必要な連携要領を確立する。

    • エ.宇宙・サイバー・電磁波領域における取組

      • 宇宙・サイバー・電磁波領域は市民生活の基幹インフラであるとともに、日本の防衛にも不可欠なので、政府全体で能力を強化していく。

      • 宇宙空間では、情報収集、通信、測位の目的での安定的な利用を確保。防衛省では、JAXAなどの関係機関や民間企業と協力・連携を強化する。

      • サイバー領域では、平素からの情報収集と、有事までのあらゆる段階において、情報収集と対応能力の強化を日本全体で強化すること重要。防衛省では、自衛隊のサイバー防衛能力強化とともに、関係省庁、重要インフラ事業者、防衛産業との連携を推進する。

      • 電磁波領域では、陸海空宇宙サイバーすべての領域で活用され、現在の戦闘様相の攻防の最前線。電磁波領域での優勢の確保が抑止力の強化や領域横断作戦の実現のためにきわめて重要。民生用と自衛隊の周波数管理が重要。

    • オ.先端技術の活用

      • 先端技術の防衛目的の活用が死活的に重要。

      • 府省横断的な仕組みのもと、政府関係機関が行っている先端技術の研究開発を防衛目的に活用していく。

      • 防衛産業を活用しつつ、スタートアップ企業、各種研究機関の成果を早期に実装化につなげていく取り組みも実施する。

    • カ.地方公共団体・民間事業者との協力

      • 国の行政機関、地方公共団体、公共機関、民間事業者との協力・連携が不可欠。

      • 府省横断的な取り組みの下、既存の空港・港湾等を平素から訓練を含めて使用できるように、調整の枠踏みを構築する。

      • また、自衛隊の機動展開のための民間船舶・民間航空機の利用拡大について、国民保護を行えるように、調整・協力する。

      • 防衛省においては、国民保護訓練の強化、J-ALERTの伝達機能強化に協力していく。

      • 海空域や電波を円滑に利用し、防衛関連施設の機能を十全に発揮できるよう、風力発電施設との調和を図っていく。

      • 弾薬の輸送・保管について、関係省庁との連携を確保し円滑化する。

    • キ.海洋安全保障

      • 海洋の秩序の強化、航行・飛行の自由や安全を確保することは、日本の平和と安全にとって極めて重要。

      • 領海等における国益やシーレーンの安定的利用の確保に取り組んでいく。

      • 自衛隊は、海上保安庁と緊密に協力・連携していく。また、同盟国・同志国、インド太平洋地域の沿岸国とFOIPのビジョンの下、海洋安全保障に関する協力を推進していく。

      • シーレーンの確保のために、必要な取り組みを実施。ジブチは安定的・長期的に活用する。

    • ク.自衛隊及び米軍の活動に対する理解の促進

      • 自衛隊と米軍が平素から効果的に活動できるよう、基地周辺住民の理解・協力を獲得していく。

      • 自衛隊と米軍の政策、活動について地元住民への説明、要望や情勢に応じた調整を実施する。

      • 自衛隊の部隊そのものが医療インフラや地域コミュニティーの維持に貢献していることを考慮し、駐屯地の配備・運営を行う。

2.日米同盟による共同抑止・対処

  • 日米同盟は、日本の安全保障の基軸である。

  • 日米が、共同の意思と能力を顕示することにより、グレーゾーンから核戦争に至るまでの抑止と対処を実現する。

  • 日本への武力攻撃が生起した場合には、日米共同で対処し、これを阻止する。

  • そのため、日米は戦略を整合させ、ともに目標の順位付けをすることにより、同盟を絶えず現代化し、強化する。

  1. 日米共同の抑止力・対処力の強化

    • 日米の国防戦略は力による一方的な現状変更を起こさせないことを最優先においている点で一致している。

    • 日本への侵攻を抑止する観点から、日米の役割・任務・能力に関する議論を深める。

    • 具体的には、領域横断作戦を円滑に実施するための取組を深化させる。

    • 反撃能力の運用については、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築する。

    • 日米の役割・任務の明確な分担のために日米共同計画にかかる作業を通じて、運用面における緊密な連携を確保する。

    • 演習・訓練の高度化により即応性・相互運用性を高める。

    • 拡大抑止が信頼を確保するために、日米間の協議を閣僚レベルのものも含めて、一層活発化・深化させる。

    • 平素からの取組として、共同FDOや共同ISR活動を拡大・深化させる。

    • 日頃からの日米施設の共同使用の増加、双方施設への展開を進める。

  2. 同盟調整機能の強化

    • ACMを中心とする、調整機能を発展させる。

    • 同志国との連携を強化するため、ACM等を活用し、運用面におけるより緊密な調整を実現する。

  3. 共同対処基盤の強化

    • 日米がその能力を十分に発揮できるよう、あらゆるレベルにおける情報共有をさらに強化する。そのために、情報保全及びサイバーセキュリティに罹る取り組みを抜本的に強化する。

    • また、同盟の技術的優位、相互運用性、即応性、継戦能力を確保するため、先端技術に関する、共同分析・研究・開発・生産、相互互換性の向上、各種ネットワークの共有、米国装備品の国内における生産・整備能力の拡充、サプライチェーンの強化に係る取組等、装備・技術協力を一層強化する。

  4. 在日米軍の駐留を支えるための取組

    • 日米共同の態勢の最適化、在日米軍再編の着実な進展、在日米軍の即応性・抗堪性強化を支援する。

    • 特に、安全保障上きわめて重要な位置にある沖縄においては、在沖縄米軍施設・区域の整理・統合・縮小、部隊や訓練の移転を着実に実施する。

    • 国民の理解のための意義・必要性を積極的に発信する。

3.同志国等との連携

  • 力による一方的な現状変更やその試みに対抗し、日本の安全保障を確保するためには、一か国でも多くの同志国等との連携の強化が重要。

  • FOIPというビジョンの実現に資する取組を進めていく。

  • 日米同盟を重要な基軸と位置付けつつ、地域の特性や各国の事情を考慮したうえで、多角的・多層的な防衛協力・交流を積極的に推進していく。

  • 同志国との連携強化のために、円滑化協定(RAA)、物品役務相互提供協定(ACSA)、防衛装備品・技術移転協定等の制度的枠組みの整備をさらに推進する。

  • オーストラリアとの間では、「特別な戦略的パートナー」として、日米に次ぐ緊密な協力関係を構築し、外務防衛閣僚級協議(2+2)を含む各レベルでの協議、共同訓練、防衛装備・技術協力を深化させる。

  • 英国、フランス、ドイツ、イタリア等との間では、欧州及びインド太平洋地域の課題に相互に関与を強化する。そのうえで、NATOによる米国との同盟関係を基軸として、緊密な協力関係を構築し、「2+2」などの各レベルでの協議、共同訓練、防衛装備・技術協力、艦艇・航空機等の相互派遣の実施。北朝鮮のせどり監視、海賊対処を通じて連携。

  • 韓国との間では、北朝鮮による核・ミサイルの脅威に対し、日米韓三か国による共同訓練などを通じて、連携を強化する。

  • カナダ及びニュージーランドとの間では、各レベルでの協議、共同訓練・演習、二国間で連携した第三国との協力等を推進。

  • 情報戦、サイバーセキュリティ、戦略的コミュニケーション、ハイブリッド戦等の先進的な取組を進める、北欧・バルト諸国との連携や、チェコやポーランド等の中東欧諸国との連携を強化していく。

  • 東南アジア諸国との間では、ASEANの中心性・一体性の強化を向けて、東南アジア首脳会議、ASEAN地域フォーラム、拡大ASEAN国防相会議、日ASEAN防衛相会合を通じ、その動きを支援する。そのうえで、各国の状況に合わせ2+2協議、戦略的寄港・寄航、共同訓練、防衛装備品移転、能力構築支援を実施する。

  • モンゴルとの間では、中ロの間に位置する民主主義国家という戦略的重要性に鑑み、各レベルでの交流、能力構築支援、共同訓練に加え、防衛装備・技術協力を推進する。

  • 中央アジア諸国との間では、アジアと欧州の間に位置する地政学的に重要な地域である一方で防衛交流実績が少ない空白地帯。防衛交流を積み重ねていく。

  • 太平洋諸国との間では、重要なパートナーとして、同盟国・同志国とともに連携して、能力構築支援に当たっていく。沿岸警備隊等を活用することも考慮する。

  • インド洋沿岸国・中東諸国との間では、日本のシーレーンの安定や、エネルギー・経済の観点から、防衛協力を進めていく。

  • アフリカ諸国との間でも、グローバルな課題に対応するという観点から、防衛協力を強化する。海賊対処、在外邦人保護のこの地域での運用基盤の強化等のため、ジブチとの連携を強化し、自衛隊の活動拠点を長期的・安定的に活用する。

  • 中国との間では、「建設的かつ安定的な関係」の構築に向けて、多層的な対話や交流を推進していく。中国が責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を尊守し、軍事力に関する透明性を向上するよう引き続き促す。日本としても懸念を率直に伝えていく。「海空連絡メカニズム」を運用していく。

  • ロシアとの関係については、ウクライナ侵略を最大限非難。G7をはじめとした国際社会と緊密に連携し、適切に対応する。必要な連絡を絶やさないようにする。

Ⅳ 防衛力の抜本的強化に当たって重視する能力

1.スタンドオフ防衛能力

  • 東西南北、それぞれ3000kmに及ぶ日本の領域を守るため、侵攻してくる艦艇や上陸部隊に対して、防空圏外から対処できるスタンドオフ防衛能力を強化する。

  • 日本への侵攻が生起しても、日本の様々な地点から重層的に艦艇や上陸部隊を阻止・排除できる必要かつ十分な能力を保有。

  • 各種プラットフォームから発射でき、高速滑空飛翔、極超音速飛翔といった迎撃困難な能力を保持する。

  • 2027年度までに、地上発射型及び艦艇発射型を含めスタンドオフミサイルを運用可能とする。

  • 国産スタンドオフミサイルの増産体制を確立する前に、十分な能力を確保するために、外国製のスタンドオフミサイルを早期に取得する。

  • 今後、おおむね10年後までに、航空機発射型スタンドオフミサイルを運用する。高速滑空弾、極超音速誘導弾、その他スタンドオフミサイルを運用する能力を獲得する。

  • 合わせて、スタンドオフ防衛能力に不可欠な、目標情報の継続的な収集、リアルタイムに伝達できる指揮統制能力を保有する。評価を含む情報分析能力、情報ネットワークの抗堪性・冗長性も確保する。

2.統合ミサイル防衛能力

  • 島国である日本は、経空脅威への対処が極めて重要。

  • 経空脅威の多様化・複雑化に対応し、センサ、シューターの各能力の強化と、ネットワークを通じてセンサ・シューターの最適化を図る。

  • ミサイル攻撃に対しては、まず、公海及び領域上で迎撃する。そのうえで、必要最小限度の自衛として反撃を加える能力として、スタンドオフ防衛能力を活用する。

  • こうした有効な反撃を加える能力を持つことによって、相手のミサイル発射を制約し、迎撃の可能性をあげることで抑止につなげる。

  • 2027年度までに、警戒管制レーダーや地対空誘導弾能力向上、イージスシステム搭載艦を整備。

  • 指向性エネルギー兵器により小型無人機に対処する。

  • 概ね10年後までに、滑空段階での極超音速滑空弾迎撃の研究や、小型無人機への電磁波攻撃を一層強化。

3.無人アセット防衛能力

  • 無人アセットは比較的安価、人的損耗の抑制、長期連続運用が可能といった特徴がある。

  • 無人アセットをAIを組わせることにより、ゲームチェンジャーとなりえることから、情報収集・警戒監視のみならず、戦闘支援などの幅広い任務に活用する。

  • 有人アセットの代替を通じた、無人化・省人化による装備体系の最適化にもつなげる。

  • 2027年度までに、無人アセットを導入し、日本の地理的特性を考えた機種の開発・運用する。

  • AI等を用いて無人アセットを同時制御する能力を強化する。

4.領域横断作戦能力

  1. 宇宙領域

    • 宇宙領域においては、新たな宇宙利用の形態を積極的に取り入れ、情報収集、通信、測位機能により陸海空戦力を強化する。

    • 宇宙の安定的利用のため、地上・宇宙からの宇宙領域把握体制(SDA)の確立と、抗堪性確保。

    • 今後10年後までに、宇宙利用の多層化・冗長化による強化。

  2. サイバー領域

    • サイバー領域では、サイバー安全保障に政府全体として取りむ。

    • 重要なシステムを中心に常続的なリスク管理体制に移行する。そのためのサイバー要員の大幅な増員と、高度なスキルを持つ外部人材の活用。

    • 自衛隊のイバー能力を生かして日本全体のサイバーセキュリティーの強化に取り組んでいく。

    • 2027年度までに、サイバー攻撃状況下でも、指揮統制システム、優先度の高いシステムを保全できる能力を確立。また、防衛産業のサイバー防衛を下支えできる体制を確立する。

  3. 電磁波領域

    • 電磁波領域においては、電子攻撃下でも自衛隊の電子戦及びその支援能力を有効に機能させる。

    • 電磁波管理を強化し、自衛隊全体で効率的に電磁波領域を活用する。

  4. 宇宙サイバー電磁波領域において、相手方の利用を妨げ、または無力化するために必要な能力を拡充していく。

  5. 陸海空の戦力

    • 海上優勢、航空優勢を確保するための、艦艇・航空機の着実な整備、無人アセットの活用、新型護衛艦、次期戦闘機の開発を進める。

5.指揮統制・情報関連機能

  • 正確で高速な意思決定が重要。

  • AIの導入等を含め、リアルタイム性・抗堪性・柔軟性のあるネットワークを構築する。

  • 領域横断作戦の観点から指揮統制・情報関連機能の強化。

  • 2027年度までに、ハイブリッド戦や認知戦に対処可能な情報能力を整備する。

  • 衛星コンステレーションによるニアリアルタイムの情報収集能力を整備する。

  • 概ね10年後までに、AIを含む各種手段を最大限活用し、情報収集・分析能力を強化する。リアルタイムの情報共有体制を確立する。

  • これまで以上に、日本周辺国の意思と能力を常続的かつ正確に把握する必要がある。

  • そのため、動態情報から戦略情報に至るまで、情報の収集・整理・分析・共有・保全を実施できるよう、情報本部の各機能と地理空間情報を含めた統合的な分析能力を強化する。

  • 国内関係機関との協力・連携を進めていく。情報収集衛星による情報の自衛隊への活用のために必要な措置を取る。

  • 偽情報の流布を含む、情報戦等に有効に対処するため、体制機能強化と同盟国・同志国との情報共有や共同訓練の実施。

6.機動展開能力・国民保護

  • 島嶼部への侵攻に対しては、平素配備している部隊だけでなく状況に応じて必要な部隊を迅速に機動展開する必要がある。

  • そのため、自衛隊自身の海空輸送能力の強化と民間輸送能力を最大限の活用する。

  • 後方補給態勢の強化、南西地域の空港・港湾施設の利用可能範囲の拡大。

  • 2027年度までに、PFI船舶の活用の拡大により、輸送能力を強化。

  • 概ね10年後までに、輸送能力更なる強化。

7.持続性・強靭性

  1. 弾薬、燃料、装備品の可動数の増強

    • 現在の自衛隊の継戦能力は十分ではない。

    • 弾薬の生産能力の向上、製造量に見合う火薬庫の確保し、必要十分な弾薬を早急に保有する。

    • 燃料の所要量の確保、計画整備等以外の装備品が全て稼動する体制を確立する。

    • 2027年度までに、必要量が不足している状況を解消する。

    • また優先度の高い弾薬については、製造体制を強化、火薬庫を増設。

    • 部品不足を解消し、計画整備等以外の装備品が全て稼動する体制を確保する。

    • 今後10年度までに、弾薬及び部品の適正な在庫の維持。火薬庫の増設の完了。部品の在庫確保。

  2. 自衛隊施設の防護強化

    • 平素においては、自衛隊の安全確保、有事にも作戦能力を喪失しないよう、主要司令部等の地下化・構造強化、施設の隔離距離を確保した再配置、集約化を実施。

    • 隊舎・宿舎の着実な整備や老朽化対策。

    • 装備品の隠蔽及び欺瞞等による抗堪性の向上。

    • 気候変動は自衛隊の運用・装備、日本の安全保障環境に影響をもたらすことは必至。各種課題に対応していく。

    • 2027年度までに、司令部の地下化、主要な基地・駐屯地内の再配置・集約化を進める。各施設の強靭化を図る。

    • また、被害想定と運用上の重要性を加味して、基地・駐屯地の災害対策を進める。

    • 今後概ね10年後までに、防衛施設の更なる強靭化を図る。

  3. 衛生機能の強化

    • 応急救護能力の強化。

    • 第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送体制の構築によって、衛生機能を変革する。

Ⅴ 将来の自衛隊の在り方

1.7つの重視分野における自衛隊の役割

  • スタンドオフ防衛能力については、各プラットフォームから発射できるスタンドオフミサイルを必要量整備する。

  • 統合防空ミサイル防衛能力については、海上自衛隊の護衛艦が上層、陸上自衛隊と航空自衛隊の地対空誘導弾が仮想における迎撃を担うことを基本としつつ、極超音速兵器等の将来の経空脅威への対応能力を強化する。また、スタンドオフ防衛能力を反撃能力として利用する。

  • 無人アセット防衛能力については、航空・海上・水中・陸上の能力を大幅に強化する。

  • 領域横断作戦のうち、宇宙領域では、SDA能力を強化する。サイバー領域では、日本全体のサイバーセキュリティ強化に貢献する。陸上自衛隊が人材育成等の基盤拡充の中核を担う。電磁波領域では、電子戦装備の取得・増強し、電磁波を活用した欺瞞装備の導入を推進する。

  • 指揮統制・情報関連機能については、各自衛隊の情報収集能力の強化、意思決定の迅速化、指揮命令を確実に行いえるネットワークの整備を行う。スタンド・オフ・ミサイルの運用に必要な情報本部の情報機能を抜本的に強化し、指揮統制機能との連携を強化する。

  • 機動展開能力・国民保護については、陸上自衛隊は島嶼部への展開を迅速に行うため、中小型船舶等、海上自衛隊は輸送艦等を、航空自衛隊は輸送機等を確保することで強化する。陸上自衛隊においては、沖縄における国民保護を目的として、部隊の体制強化する。

  • 持続性・強靭性については、平素より弾薬・燃料及び可動装備品数を確保する。施設の抗堪性を強化する。

2.自衛隊の体制整備の考え方

  • 統合運用の実効性を強化するため、陸海空自衛隊の一元的指揮を行う常設統合司令部を創設する。

  • 陸上自衛隊は、領域横断作戦能力の強化及び利点の多い地上発射型スタンドオフ防衛能力、持続性・強靭性、迅速かつ分散した機動展開能力、無人アセット、統合防空ミサイル防衛能力、指揮統制・情報関連機能の確保。

  • 海上自衛隊は、防空能力、省人化・無人化、情報戦能力、水中優勢、スタンドオフ防衛能力、洋上後方支援能力、持続性・強靭性の確保、高い迅速性と活動量を求められる部隊運用を持続的に遂行可能な体制の確保あるいは整備、推進。

  • 航空自衛隊は、高脅威環境下での運用のための、質・量の見直し、効果的なスタンドオフ防衛能力の保持、実効的な防空態勢の確保、各種無人アセットの導入を実施。また宇宙作戦能力の強化のため、航空宇宙自衛隊とする。

  • 情報本部は、電波情報、画像情報、人的情報、公刊情報等の情報収集・分析、情報戦対策の中心的な役割を担う。他国の軍事活動を常続的に監視し、分析・発信する能力を抜本的に強化する。

  • 領域横断作戦能力及びスタンドオフ防衛能力の強化に合わせ、関係する他機関との協力・連携を実施。

  • 能動的サイバー防御を含むサイバー安全保障分野に係る政府の取組も踏まえつつ、日本全体のサイバーセキュリティに貢献する体制を構築していく。

3.政策立案機能の強化

  • 厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するため、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を強化していく。

  • その際有識者からの助言を得るため、会議体を設置する。

  • 先端技術の活用・育成・装備化について、総合的に検討・推進する態勢を強化する。

  • 政策の企画立案を支援するため、防衛研究所を中心とする、自衛隊の研究体制の知的基盤としての機能を強化する。

Ⅵ 国民の生命・身体・財産の保護・国際的な安全保障協力への取組

1.国民の生命・身体・財産の保護に向けた取り組み

  • テロ・破壊工作・災害/感染症対処も深刻な脅威である。

  • 警察・海上保安庁・消防・地方公共団体等の関係機関と帰任密に連携して、対処する。

  • テロや重要インフラ攻撃に際しては、実効的な対処を行う。

  • 大規模災害に際しては、人命救助、応急復旧、生活支援等を行う。

  • 海外での災害・騒乱が発生した場合は、外交当局と緊密に連携して、在外邦人を保護、輸送する。

  • 平素から地方公共団体や各インフラ事業者などと総合的な訓練を実施する。

2.国際的な安全保障協力への取組

  • 国際協調、積極的平和主義の立場から、世界各地の紛争、気候変動、大量破壊兵器の拡散などの世界的課題へ積極的に取り組んでいく。

  • 国際平和協力業務、国際緊急援助活動などについても、日本が得意とする施設、衛生分野を中心に活動していく。

  • 引き続き現地ミッション司令部に要員を派遣していく。

  • 日本を取り巻く安全保障環境を改善する観点から、NBC兵器の軍縮・不拡散についても、取り組みを推進していく。

  • その際自衛隊は、国際関係機関や国際輸出管理レジームの実効性の向上に協力していく。

Ⅶいわば防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

  • 防衛生産・技術基盤は、装備品を安定的に確保し、新しい戦い方に必要な先端技術を取り込むために不可欠であり、いわば防衛力そのもの。

  • 持続可能な防衛産業の構築、様々なリスク対処、販路拡大に取り組んでいく。

  • 汎用品のサプライチェーン保護、民生先端技術の機微情報の管理・情報保全などの政府全体の取組に関しては、防衛省が、防衛目的上必要な措置を実施していく。

  • 関係省庁間の取組と連携していく。

1.防衛生産基盤の強化

  • 防衛産業は、防衛省・自衛隊とともに国防を担うパートナーというべき存在。

  • 装備品の生産・可動率の維持において必要。

  • 高度な技術力と品質管理能力の確保。

  • 装備品の生産・維持・整備・改修・能力向上のための能力の確保。

  • 防衛産業のサプライチェーン全体を含む基盤強化を図っていく。

  • 防衛産業のコスト管理や品質管理に関する取組を適正に評価し、適正な利益確保のための新たな利益率算定方式を導入。

  • 事業の魅力化、既存サプライチェーンの維持・強化、新規参入の促進。

  • 装備品の取得に際し、国内基盤の維持・強化する観点を一層重視。

  • ほかに手段がない場合、国自身が製造施設を保有する形態を検討。

  • サイバーセキュリティを含む産業保全を強化。

  • 機微情報管理の強化。

  • 同盟国・同志国等の防衛当局と、防衛産業に関するサプライチェーン保護、機微技術管理等を実施していく。

2.防衛技術基盤の強化

  • 新しい戦い方に対応するには、日本が保有する技術をいかに活用していくかが重要。

  • 防衛関連企業等、非防衛産業から提案を受け早期装備化につなげていくための取組を積極的に推進していく。

  • 特に、政策的に緊急性・重要性が高い事業の実施に当たっては、研究開発リスクを許容しつつ、想定される成果を考慮したうえで、一層早期の研究開発や実装化を実現する。

  • 試作品を部隊で運用しながら使用を改善し、必要な装備品を部隊配備する取組を強化する。

  • スタートアップ企業や国内の研究機関・学術界等の民生先端技術を積極活用する枠組みを構築する。

  • 総合的な防衛体制の強化のための府省横断的な仕組みを活用する。

  • 防衛装備庁の研究開発関連組織のスクラップ・アンド・ビルドにより、装備化に資するマルチユース先端技術を見出し、防衛イノベーションにつながる装備品を生み出すための新たな研究機関を創設する。

  • 政策・運用・技術の面から総合的に先端技術の活用を検討・推進する体制を拡充する。

  • 予見可能性を高める観点から、新しい戦い方を踏まえて、重視する技術分野や研究開発の見通しについて、戦略的に発信する。

3.防衛装備移転の推進

  • 防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域の平和と安定のために重要。

  • 防衛装備品移転三原則や運用指針をはじめとする制度の見直し。

  • 三つの原則は維持し、防衛装備品移転の必要性、要件、関連手続きの透明性の確保について検討する。

  • 防衛装備品移転を円滑に進めるため、基金を創設し、必要に応じた企業支援を行うことにより、官民一体となって防衛装備移転を進める。

Ⅷ 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

1.人的基盤の強化

  • 防衛力の抜本的強化を実現するには、定員は増やさず必要な人員を確保する。

  • 自衛隊員には、これまで以上の知識・技能・経験が求められている。

  • 偽情報等に惑わされたない素養を身につける必要が生じていることも踏まえつつ、高い士気を持ちながら、個々の能力の発揮できる環境を整備する必要がある。

  • 生活環境の改善、処遇の向上、栄転・冷遇に関する施策の推進、家族支援の拡充、女性隊員が活躍できる環境の醸成、ワークライフバランスの推進、再就職支援。

  • ハラスメントは人の組織である自衛隊の根幹を揺るがすものとの認識し、ハラスメントを一切許容しない組織環境構築。

  • 中途退職による戦力低下の防止、有為な人材の確保にも重要。

  • 募集能力の一層の強化。

  • 定年年齢を引き上げ、再任用の拡大。

  • 民間人材を含めた幅広い層からの人材確保の推進。

  • 充足率の低い、艦艇やレーダーサイトの警戒監視要員の人材確保に資する政策を総合的に講じていく。

  • 予備自衛官の採用を大幅に増やすべく、制度の見直し、体制強化に取り組む。

  • 自衛隊員リスキリング、防衛大学校、各自衛隊の学校の教育基盤の強化を図る。

  • 事務官・技官を確保し、さらに必要な制度の検討を行う。

  • 自衛隊員が育児、出産、介護といったライフイベントを迎える中でも、遺憾なくその能力を発揮できる組織作り。

2.衛生機能の変革

  • 有事において隊員の生命・身体を救う組織に変革する。

  • 衛星機能の一元化、統合的な運用を推進。

  • 防衛医科大学校も含めた自衛隊衛生の総力を結集できる態勢を構築。

  • 南西地域の第一線から本州等の後送先病院までの役割の明確化。

  • シームレスな医療後送体制の確立。

  • 後送に係る衛生機材の共通化、医療情報の共有システムの整備。

  • 部隊の救護能力強化、外相医療に不可欠な血液・酸素を含む衛生資器材の確保、南西諸島の医療拠点の整備。

  • 防衛医科大学校で戦傷医療の教育研究。

  • 遺憾及び看護間の臨床経験を充実させる。

  • 積極的な外部研修。

Ⅸ 留意事項

  1. 本戦略は、国家安全保障戦略の下、他の戦略と整合を持って実施される。目標達成のアプローチと手段が適切か、防衛体制強化が確実に実施されているか、国家安全保障会議で定期的に体系的な評価を行う。相手方の能力に着目し、必要な能力に関する評価を常に実施する。

  2. 防衛力の抜本的強化は、中長期的な観点から不断に検討を行う。

  3. 概ね10年間の期間を念頭に置いているが、国際情勢や技術水準について重要な変化が見込まれる場合には、必要な修正を行う。

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