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エスカレーション抑止についてメモ

エスカレーション抑止とは

  • ロシア軍の部内誌等で議論されてきた核戦略。Escalation to De-Escalateを略してE2DEとも呼ばれる。

  • ただし、現在のロシアでは「地域的核抑止」という別の核戦略が採用されていると明示されている。実際に採用されているのかは議論がある。

  • 進行中の戦闘の停止を敵に強要する、もしくは大国の介入によって劣勢になる場合に、脅しや適度な損害を用いてその介入を抑止する。

  • 敵あるいは他の大国に対して、これ以上の進行は核戦争の危険があることを認識させる。

  • 紛争の段階に応じてその方法は、デモンストレーションや、ある程度の損害を伴うものになる。

適度な損害とは (tailored damage)

  • 被害の最大化を目指さない攻撃方法、様態。

  • 核攻撃によって敵の継戦能力を奪うことを目的としているのではなく、敵の継戦意思を奪うことを目的としている。

成立させるための条件

  • 戦闘を続けた場合の被害が戦闘を続けた場合のメリットを上回ると認識させること。

  • 報復が確実な大規模な攻撃、あるいは報復が直ちに核戦争につながらないであろう低列度な衝突(非軍事的行為も含む)の間に、核戦争を認識させることによって、ある程度の被害が生じていても報復をためらう段階を作り出すこと。

問題点

  • 核攻撃を受けた相手がどのような行動に出るかを予測することは難しい点。

非核エスカレーション抑止

  • 戦略的に重要な基地施設等に、精密誘導兵器を用いてピンポイント攻撃を行う。

  • 核兵器よりも報復のリスクが小さい、あるいは相手の応答を推測しやすい。

特徴

  • 損害の定性的な面に着目している。

  • 軍隊の物理的な装備や施設の破壊によって、戦争遂行能力を奪うのではなく、象徴的な場所や兵器を用いて相手の心理的損害、(継戦意思の破壊)を狙っている。

  • NATOに比して数的劣勢な戦力を機動力によって補おうとする戦略。

  • 通常兵器による戦争の上にエスカレーションラダーを追加。

参考文献

  • 現代ロシアの軍事戦略(2021) 小泉悠

  • 「大国間競争時代のロシア」 (令和2年度 ロシア研究会) 第10章 ロシアの核・非核エスカレーション抑止概念を巡る議論の動向 小泉悠


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