最小限抑止戦略とは何か
最小限抑止とは
軍事的・政治的観点から判断した最小限の核兵器で、自国に対する核攻撃を抑止する戦略。
抑止を目指す対象
主に自国に対する核攻撃。同盟国への攻撃、エスカレーションドミナンス、核戦争の遂行と終結などは基本的に対象とされない。
メカニズム
主に相手国の主要都市など、対価値目標への報復を行う。(全面核戦争へのエスカレーションを制御するための対兵力攻撃も考えられている。)
核兵器による損害は非常に大きく、たとえ数発であっても報復を受けた後、戦争を遂行することは困難になる。よって相手国による核攻撃を抑止できると考える。また、拡大抑止やエスカレーションドミナンス、核戦争の遂行を目指し多様な運搬手段や複雑な指揮統制システム整備、大規模な即応体制の維持は偶発的衝突の危険を伴い、抑止の信頼性(Credibility)を高めるものではない。したがって最小限度の配備で十分であるといえる。
最小限とは具体的にどの程度か
相手国からの攻撃を受けた後も、相手国の主要都市など、対価値目標を報復攻撃できるだけの戦力。(+α、限定的な対兵力攻撃戦力)
核弾頭の数に関しては数十発から数百発と専門家の間でも議論がある
問題点
少数の攻撃であれば、核攻撃であっても損害を受け入れる国家が存在するかもしれない。
未知の脅威への対処ができる余裕が無い。
人口密集地などの非軍事目標への攻撃は、人道的に困難であり十分な信頼性があるとは言えない。
人口密集地等への攻撃は相手国による同種の報復を招き、全面核戦争に突入する恐れがある。
改善策として全面核戦争へのエスカレーションを制御する可能性を残す、対兵力報復攻撃が考えられた。
様々な定義
ローレンス・フリードマンの定義
報復によって敵に耐えがたい損害を与えるのに十分なだけの核兵器を保有することハリー・ホリンズの定義
国家が核攻撃を受けた後でも敵対国に対して耐えがたい損害を与えるのに必要最小限の数の核兵器を保有する核戦略グレゴリー・ジャイルズの定義
敵対国を抑止するのに十分なレベルの損害を第二撃によって与ええること
(十分なレベル = 人類が絶滅するには遠く及ばないレベル)
実際に採用しているとされる国
パキスタン
インド
フランス
中国は2025年から高速増殖炉が稼働しこれにより、核弾頭の製造に必要な核分裂物質の入手が可能になる。これにより中国の保有する核弾頭数が、2030年代前半までにアメリカ軍の即応弾1500発に到達する。これは、中国が米国との相互確証破壊を目指していると考えられている。
参考文献
最小限抑止概念の検証 防衛研究所(2018)
弾道ミサイル防衛入門 金田秀昭 (2003)
産経新聞 2022-06-11中国、台湾侵攻能力を確保 「最小限核抑止」から離脱 米報告書