日本全国の学生の皆さんへ -ワーケーション研究の醍醐味とは-
1.はじめに
みなさん、まずは手に取っていただいてありがとうございます。
みなさんは、将来の働き方やキャリア形成に関して考えたことはありますか?
将来どこに住んで、どんな仕事をして、どんな生活スタイルを確立したいですか?
私は、社会変革がとてつもないスピードで進んでいる、
現代だからこそ「将来」について考えることは重要だと考えています。
「将来」は誰にも予想できません。
しかし、予想できない将来に対しての「アプローチ方法」はこれまで行われている施策からも、手法からも学ぶべきものが多いと感じています。
もちろん、真似できるものではないです、画一的なものでもないです。
しかし、幾多の社会変革の中で起こった
「変化」に適応していく力。
「変化」を捉える力。
は今後を生き抜いていく上で欠かせないのではないでしょうか?
ワーケーションはまさに、
①テクノロジー・IT技術の発展
②新型コロナウイルスが起因する、仕事に対するリモート志向
③(都市以外の)地方・地方移住に関する関心度の高まり
など、「何らかの変化」によって生まれた「ソリューション」と言っても過言ではありません。
今回は、私がなぜワーケーションの研究をしているのか。
そして、それに固執しているのか。
ワーケーションを研究することで、どんな未来を描けるのか。
など、多くの問いを事実ベースと主観ベースで
記述させていただければと思います。
今回の論考では、私以外の多くの方々の視点や考え方も多く含まれています。
ワーケーションに関する絶対的な解を求めるための議論というよりかは、
様々な意見の見方・考え方を参考にしながら議論を掘り下げていく形で
進めていければと思います。これを見てくださったみなさんが
読み終わった後に、「なんとなく、学生/社会人がワーケーションを
研究する/実践する価値はありそう」と思っていただければ本望です。
何卒、宜しくお願いいたします。
なお、ワーケーションに限らず「人はなぜ働くのか?」「新卒一括採用の問題点」などの視点から、「大学生が社会人・働き方にアプローチする意味」について考えている基礎的な論考もあります。ぜひこちらもご覧ください。
慶應義塾大学 総合政策学部 3年 松浦嵩
2.ワーケーションとは何か?
ワーケーションとは、Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で、
①テレワーク等を利活用し
②普段の職場や自宅とは異なる場所で
③仕事を行い
④プライベートの時間も過ごす
と定義できると考えました。
この4つの大きな特徴はワーケーションを語る上では欠かせません。
4つの観点から目的・効果について考えていきましょう。
ワーケーションの目的・効果
ワーケーションの効果・目的は導入している個人や団体によっても大きく異なってきます。そして、それぞれがワーケーションの「形」をデザインしています。
まずは、様々なワーケーションの「形」について抑え、それぞれの目的や効果を議論していくことにします。
上記はあくまでもイメージであり、実際にはこれ以外にも多くの形が存在します。
私の個人的解釈から「形」について分類してみることにしました。
①ワークと休暇の割合が8:2であるワーケーションの形(業務型)
(1)地域課題解決型
(2)合宿型
(3)サテライトオフィス型
②ワークと休暇の割合が2:8であるワーケーションの形(休暇型)
(1)福利厚生型
(2)働き方の自発的選択型
③ワークと休暇とその他活動が、7:1:2であるワーケーションの形(移住・教育型)
(1)家族型
(2)社員育成型
それぞれに関して、その目的や効果を考察していきます。
(ここからは私がフィールドワークを通して獲得した学びや知見も盛り込みます。)
①ワークと休暇の割合が8:2であるワーケーションの形(業務型)
みなさんが「ワーケーション」と聞いて思い浮かぶのは、
ほとんどが業務型に該当すると考えます。仕事を行うにあたり「業務型」は
都心のオフィス環境で得られるものとは異なる効果や目的を狙いとしています。
中でも「①仕事の質の向上、イノベーションの創出」に関しては、
ワーケーションを議論する上で非常に重要な観点であり、
意見が分かれる観点でもあります。
企業にしてみればワーケーションを導入した際に、
オフィスワークと同等・あるいはそれ以上のパフォーマンスや
クオリティを社員が発揮できるかは大きな懸念事項でしょう。
現在は在宅ワークの考え方も浸透しているため、
仕事のクオリティや効率性が上がらない限り、
あえてワーケーションを行う必要はないと考える方々も多い印象です。
ここで、ワーケーションの特徴を振り返ってみます。
ワーケーションの最大の特徴は
「非日常の場所(日々の業務や生活で立ち寄らない場所)で行われること」です。自らのコンフォートゾーン・既視感のある場所を離れ、
非日常の場所を訪れた際に、
私たちは意識的に(無意識的に)何を学び/感じているでしょうか?
一つ面白い考え方を紹介したいと思います。
「アイデアの量は距離に比例する」
私は社会人と出会う時には必ず
「大学時代にやっておいた方がいいことはなんですか?」
と問いかけるようにしています。
回答として「留学や旅行とか大学生しかできないことを経験しておいた方がいい」との回答をいただくことが多いです。
私自身現役大学生ですが、新しい土地や空気感に刺激を受けて、
自らの価値観や考え方も変わる/アップデートする経験を若いうちから経験しておくことは重要だと日々感じています。具体的には、課題に取り組む上での自分の言語化や議論でのアイデア出しなどで、
フィールドワークでの学びが生きていると痛感しています。
距離の感覚がクリエイティビティに大きな影響を与えることの研究結果も出ているので見ていきましょう。
私は、この考え方を仕事やビジネスにも利活用できると考えています。
特に、ワーケーションは、新規事業考案や
新たなイノベーションをもたらしたい時には相性抜群です。
少し視点は変わりますが、私のフィールドワーク先の一つに「口永良部島」という島があります。この島には飛行機×1、船×2で辿り着くことができます。またこの島の人口は100人程度であり、物資も1日一回の船で届くだけです。
売店、病院、警察署、アミューズメントパークなど「都心の当たり前」は
そこには存在しません。だからこそ、島にいる時には「自分自身で何ができるか」が常に問われ、当たり前ではない光景を見て、自らの価値観や考え方がアップデートされていきます。
もちろん、アイデアやクリエイティビティに留まらず、仕事のパフォーマンスに関しても、ワーケーションはクリティカルに効果を発揮します。
これはあくまでも一例であり、地域性やワーケーションの形によってもデータは異なると考えられますが、ワーケーション実施中だけでなくワーケーション期間が終了した後も、持続的にパフォーマンスが保たれていることは興味深いです。
以下を参考に、調査が行われた条件や地域を参照してみてください。
②ワークと休暇の割合が2:8であるワーケーションの形(休暇型)
続いて、休暇型の効果・目的を見ていきましょう。
福利厚生に由来するワーケーションの形は、大学生が考えられる要素は少なく、
どちらかというと企業が「オプション」で考えている場合が多いため、
今回の議論において本質的ではないと判断しました。
よって、今回は(2)の「働き方の自主選択型」について、
議論をしていくことにします。
働き方を自主的に選択するためには、「働く場所」すなわち「地域」を考える必要があります。特に休暇型は「地域」での活動がメインになるため、
「地域視点に立って考えること」が非常に重要です。「地域×個人or団体・企業」によって、多くの相乗効果を生み出すことができます。
中でも②の「交流人口及び関係人口の増加」は受け入れ先である
「地域」にとっては非常に重要な観点です。
現在、日本の人口が減少する中、地方自治体にとって交流人口や関係人口の創出は喫緊の課題となっています。ワーケーションはそれらの課題を解決する上での一つの解決策になり得ると考えています。
具体的には、平日にも仕事が求められるワーケーションにおいて、
各観光地は土日にしか観光客が来ない状況から脱却して、
平日にも客を呼び込むことができます。
また、空き家や土日にしか使われていないイベントスペースの利活用も広がります。ワーケーションによってその他数えきれないメリットを「地域」は享受することができます。
もう一つ重要な観点は「人間交際・関係性構築が生まれること」です。
地域に人が集まるということ(特に大都市から)は、
それだけのスキルやアイデアも集まってくることになります。
休暇型であれば、地域を訪れた人は、観光やフィールドワークなどで、
必ず地域の魅力を知ろうとする動きを取ります。
もちろん地域住民や地域企業の方々とのコミュニケーションも促進されます。
これらの要素をコラボレーションさせて生み出されるのが、
「地域の新たな価値」そのものだと考えています。
この価値は地域性によっても異なるため、唯一無二であり独自性のあるものです。私は地域の新たな価値が積み上がることが、
「地域活性化」の一つの要素であると考えています。
(※私が考える地域活性化の要素は
①伝統芸能、伝統料理などの承継
②地域での新規事業のモデルケース
③人口減の中で、人間が過不足なく暮らせる基盤作り
などです。これらにも多くの要素があると考えますが、特にこの3つはワーケーションの目的・効果とも深く結びついていると考えます。)
地方創生の文脈では観光庁は以下のように考察しています。
ワーケーションの教科書では、地域にとって重要なこととして
「サードプレイスの設置」を上げています。これは、人間交際・コラボレーションを促進していくには欠かせない取り組みだと感じています。
(セレンディピティは、簡単にまとめると「予測していなかった偶然の幸運」だといえます。以下を参照してみてください。)
③ワークと休暇とその他活動が、7:1:2であるワーケーションの形(移住・教育型)
今まで説明してきた形は長期or短期滞在どちらでも可能なワーケーションのあり方でした。しかし、移住・教育型はあくまでも長期滞在を前提として議論を進めていく必要があります。
長期滞在によって、もちろん地域は大きなメリットを受けます。
上記でも挙げた通りですが、関係人口の創出・雇用の拡大・過疎化対策・空き家の利活用など列挙してもキリがありません。
しかし「長期滞在する側の視点」になって考えてみると、
他の要素を考慮する必要があります。
長期滞在には二拠点生活なども考えられますが、
今回は「移住」に焦点を当てて議論を進めたいと思います。
移住に必要な要素として、由利本荘市役所(後ほど説明)の方との議論を参考に
以下の考えに至りました。
仕事
教育(水準)
プロダクト(お店や多様なコンテンツなど)
この3つがすべて高いレベルで揃っているのが東京であり大阪であり「都心」です。人の流れや情報密度が高いからこそ実現できています。
では、日本の諸地域(都心ではない場所)は手も足も出ないかと言われると
そうではないと考えます。
仕事に関しては、説明している通りですが、
ワーケーションの目的・効果によって説明できます。
プロダクトに関しても、地域の魅力(人・食・伝統・自然)は都心のプロダクトとは、違う良さがあります。
では、教育はどうでしょうか?教育に関して、興味深い事例があります。
下記は、由利本荘市(後ほど説明)で行われている「ゆりほん保育園遊学2023」の募集要項から、実施目的を抜粋したものです。
このゆりほん保育園留学の事例は、
子供達に「原体験」を届けることができる教育体制であることがわかります。
これまで20年間と教育を受けてきた私自身の主観にはなりますが、
何かの「原体験」は、どんな学びよりも重要であるとの実感があります。
子供達が自ら主体的に考えて、作る・遊ぶ・学ぶ・体を動かすなどを
「大自然の中で」可能にしているのがこの事例から汲み取れます。
この施策の企画者の方にお話をお伺いしたことがあります。その方は、
「都心で制限されるような教育のあり方ではなく、ここでは『してはいけないこと』はほぼない。走っても大声を出しても、川に行っても畑に行ってもいい。失敗も成功も、喜びも悲しみも一度に体験できる。みんなで何かを作り上げるという経験もできる。これらの「実感」は、子供たちが育っていく上での「軸」となる。」とおっしゃっていました。
何かに疑問を抱く、成功体験を生み出す、協力する、など
一つ一つが確実に子供たちの成長や将来に繋がっていると確信しました。
もちろん、子供たちが保育園に通っている頃、大人たちは仕事に取り組んでいます。(仕事の効果・目的に関しては上記参照)最近では、子供達の通っている学校の空き教室などを利活用してワークスペースとして環境を整えている地域も出てきました。休憩時間にリフレッシュで、子供たちと一緒に遊ぶこともできますし、
子供たちの学びや活動をそばで気にかけることもできます。
実際この施策は、初期段階では短期でのプログラムとして設計されていました。
しかし、実際に参加したご家族が、
長期滞在・移住に至ったケースが複数あるそうです。
私個人的には、地域の教育的価値に関しても、
ワーケーションの大きな魅力と捉えるべきだと考えています。
社会人になって、家庭を持った場合に真っ先に考えることとして
子供に対しての教育を考える方も多いと推測しているからです。
もちろん地域の教育的価値を議論するには、
保育園・幼稚園教育から義務教育、高等教育、大学教育、社会人教育まで
シームレスで循環しているものだと考える必要があります。
地域での義務教育や高等教育に関して考える余地はまだまだあると感じています。
その部分は後述する「私自身の地域での学び」のところで
触れさせていただければと思います。
3.ワーケーションの今後の展望
私はワーケーションは、上記に挙げさせていただいた目的・効果などにとどまらず将来的にも大きな可能性/ムーブメントになると考えています。その可能性の一つに
「ワーケーションは地域/企業のDX戦略になりうること」が挙げられます。
例えば、富士通japanは、ワーケーションを通じて、沖縄において
「地域と人をつなぐ共創環境とマッチングサービスの提供」を実践しています。
この例は、地域におけるDX促進を、ワーケーションの文脈から企業が
アプローチしているモデルケースだと感じています。
距離的制約・時間的制約・心理的制約を取り払い、社会課題を抜本的に解決できる力を持つIT技術の利活用は、ワーケーションにも深く関わってきます。最近では、生成AIの話題も増えてきました。ワーケーションはDXの文脈からも、地域や企業に価値をもたらすものだと確信しています。私自身も、今後テクノロジー/DXの動きはキャッチアップできるように、学習・研究を続けていきたいと思います。
そして、今後はワーケーションを語る上では欠かせない要素になると予測します。今後のワーケーションのあり方として、一つ意識しておきたい観点です。
4.私がワーケーション研究をしている目的・理由
ここからは現役大学生である私が「なぜワーケーションの研究を行っているか」について述べていきます。幼少期の成り立ちから、行動経緯まで網羅的に説明しているのは以下の記事です。ぜひ参照してみてください。
一言で研究を始めた理由をまとめると
「働き方ってもう少しバリエーションあっても良くない?」
という至極ふわっとした疑問からでした。
仕事で苦しんでいる方々を見て(仕事・労働観における心理的側面)
地域の魅力を原体験として受け取って(地域活性化的側面)
テクノロジーの課題解決の力を実感して(DX的側面)
「大学生活の全てをワーケーションに捧げてもいいかな」
と思うようになりました。
おそらくワーケーションは様々な
基礎的な分野が組み合わさった応用分野だと思います。
上記で説明している通り、とても一つの要素・変数では説明できないことが多いです。しかし時間をかけて紐解いていくことで
見える景色も変わってくることを実感できています。
ワーケーションの研究では、常に「人」と関わりを求められます。
個人で理論構築をしていく研究とは異なり、
「人」との協働が高いレベルで求められます。
「人」も社会人の方から、学生、地域の方々まで幅広いです。
ただ関わっている方々全員が「ワーケーションの課題解決力」を信じています。
私もその一員として活動していくことはもちろん、大学生独自の視点や考え方を発信していくことが重要であると自認しています。
しかし、私はワーケーションの社会的確立がゴールとは捉えていません。
ワーケーションはあくまでも課題解決における「手段」であり、
「目的」ではないからです。
大学生が、小規模でもありながらも、ワーケーションを切り口として
「ソーシャルトランスフォーメーション」を実現する。
これが私がワーケーションを研究している目的です。
(「ソーシャルトランスフォーメーション」の捉え方は様々ですが、
私は社会変革の意味合いで言葉の意味をとらえています。
私(大学生)の行動によって、未来の結果が変革されることを目指しています。
例えば、DXとは「デジタルの力で、現代における企業/団体の差別化を図り、
圧倒的なプレゼンスを誇るビジネスモデルを確立し、
確立したビジネスモデルをもとに社会を変革していくこと。」と考えることができます。ソーシャルトランスフォーメーションは
デジタルにとどまらずあらゆる力で、
社会を変革していく意味合いを持っていると解釈しています。
それは、例えば教育的視点でも、地域視点でも、実現可能です。
関係者の方々とコミュニケーションを取ることによるノウハウ共有や
実践を通じて、小さな社会変革は始まっていると考えています。)
5.ワーケーション研究の中で、私が得た学び
これまで、私はワーケーション研究として
国内5ヶ所のフィールドに滞在させていただきました。
2022/6:妙高高原(新潟県)
2022/8:阿波池田(徳島県)
2022/9:小豆島(香川県)
2023/2-現在進行中:富士吉田(山梨県)
2023/7:由利本荘(秋田県)
今回は、直近の滞在の由利本荘市のワーケーション研究の
学びを紹介させていただきたいと思います。
他のフィールドの学びは基礎的な論考の方で紹介させていただいているため、
そちらもぜひご覧ください。
実際に地域の方々と話した時に感じたこと、
学びが深まったことを紹介させていただきます。
※由利本荘市について↓
結局移住に必要な要素って因数分解すると何?
飲み会の場で、由利本荘市の市役所の方々とのお話をさせていただける機会がありました。お話の中で、興味深かったのは「都心から地域に人が集まるには?
(移住という選択をするには)」というテーマでの議論でした。
結論から言えば、地域に人が集まるためには(特に今回ではワーケーションという意味合いでは)移住する社会人にとっての「Win(メリット)」を作り出すことが重要であると感じました。Winを作り出すためには、大きく
仕事
教育(水準)
プロダクト(お店や多様なコンテンツなど)
が揃っていることが条件です。
プロダクトに関しては、ものが溢れかえっていることや、
オンラインでも入手可能になったためそこまでの重要度は高くないと考えます。
しかし「都市にある、魅力的なもの」があればあるほど、
人々の生活は便利になるかつ、嬉しいと感じられるそうです。
教育に関しては、上記で説明した通りですが、
地域に持続的に関わっていく人材を増やしていくのなら、
保育園や義務教育だけでなく、高等教育も意識するべきだとの認識でした。
そして最後に仕事ですが、由利本荘市においてのワーケーションは形を柔軟に変化させることができると感じました。
もちろん、仕事の割合を増やすことも可能です。
そして仕事環境は非常に整っています。
秋田大学の隣にあるサテライトオフィスにおいて、
壮大な田んぼを横目に見ながら集中して仕事に取り組むことができます。
このサテライトオフィスは一人で集中できるブースと
他者とコミュニケーションが取れるスペースも用意されていました。
地域視点ではありますが、ワーケーションを通して「地域の関係人口を創出」する要素を垣間見ることができました。市役所の方々とのお話から、やはり、その土地に住んでいるからこそ見えてくる視点や考え方を吸収することは重要だと感じました。このプロセスが今学期の長谷部研のテーマである「再実践」だと解釈しています。
集落のおばあちゃんの姿勢から考えられる「人」という強み
由利本荘市には、坂ノ下集落という人口150人程度の小さな集落があります。
今回の滞在では、集落の民家でお昼ご飯をご馳走になりました。
格別に美味しい、お昼ご飯を食べながら、
大自然に囲まれている集落で自然の恵みを最大限に受け取ることができました。
その際に印象的だった会話を紹介させていただきます。
私は、人口が150人程度の地域ということもあり、勝手に自分の中で
「帰属意識があるのではないか」と仮説を立てていました。
しかし坂の下集落の方々は非常に寛容で優しく、
今でも多くの人を受け入れていると言います。
私はここで、由利本荘市ならではの強みを感じることができました。
「人の温かさ・寛容さ」です。
この要素を持ち合わせている地域はなかなかなく、
由利本荘市最大の強みであると考えました。
もちろん、私が関わった人達をソースとして分析しているため、
一概に一般化はできません。
しかし、この要素はワーケーションを実践していく時の
「他者との協働・コミュニケーション」とも深く関わってくる部分です。
由利本荘市におけるワーケーションの可能性を少し感じた瞬間でもありました。
6.私自身のワーケーション研究における今後の展望
私は、この一年半ワーケーションについて「知る」プロセスを経験してきました。それも二次情報に留まらず「自らの目で確かめて」実感から、
ワーケーションの効果や社会的影響力を感じ取ってきました。
そこには地域の方々含めて非常に多くの関係者の方々に
ご指導・ご鞭撻いただきました。本当にありがとうございました。
ワーケーションについて「知る」フェーズの後は、自らが
「組み立てる・実践する」プロセスに入っていくと考えています。
「組み立てる・実践する」プロセスでは、実際に地域に入り込み、
ワーケーションの社会的意義を卒業論文や研究報告の形で確立していくことが求められます。これからの動きとして、まずは自らの研究を実践できる「場所」を探していくことと「研究手法」を確立することが求められます。
7.皆さんにもワーケーション研究の魅力を感じてほしい
ここまでワーケーション研究をしてきて、大学生の私は何を学ぶことができたのか、獲得してきたのかを考えてみました。大きく3つあると感じています。
(ここでは完全に大学生視点で記述しています。)
①相手の視点に立って考える力
これは地域の方々や社会人の方々など、普段の大学での学びでは経験できない
コミュニケーションや関係性構築によって得られる力です。
研究では、ワーケーションに参加する側/導入する側orされる側など、
ワーケーションに関わる多くの人の状況や視点を捉え、
俯瞰的に考察していく力が求められます。
②複数の要素や変数を組み合わせて考える力
ワーケーションは決して一つの要素や分野で説明できるものではありません。
複数の複雑な要素が絡み合って、成り立っています。
ワーケーションについて、解釈する時や言語化する時には、複数の視点から
総合的に理論を構築していく力が求められます。
③変化に適応する力
ワーケーションは新しい概念であり、技術革新や社会の状況にも常に影響を受けます。そして、日本全国で新たなワーケーションの形が提案されています。
今まで考えていたことを踏まえて、新しいものを理解し、
さらには生み出すことが求められます。
これらの力を獲得できることも、もちろん魅力なのですが、
私は、大学生が研究する最も大きな魅力としては
「大学生自身の将来のキャリアや働き方に対して多くの知見を獲得できる」ことだと考えています。不確実性が高まっている現代において、
自身の「生き方」について考える機会は少ないと感じています。
ワーケーションのフィールドワークに行けば、
参加者の社会人の方々や地域の方々とのコミュニケーションを通して、
自らの価値観や考え方が根底からひっくり返されることになります。
この学びを私は、「10年先の自分留学」だと定義しました。
大学生は親以外に「大人・地域」と関わる機会は少ないと感じています。
10年先もわからない現代において、人生の先輩から多くの学びを吸収できます。
あなたもぜひワーケーションの魅力を体感し、
10年先の自分の礎を作る研究にチャレンジしてみませんか。
8.おわりに
まずはここまで読んでくださりありがとうございました。
私が最初に「ワーケーション」の概念を聞いた時、
社会を変える手段になると確信しました。
ある意味直感ですが、今も信じて突き進むことができています。
研究では、今やっとスタートラインに立てたと感じています。
勝負はここからです。自らデザインし、
価値を社会に伝えていくプロセスを経験したいです。
社会を変えていく「手触り感」を大学生のうちに感覚的にも掴み、
小さな規模で「ソーシャルトランスフォーメーション」を実践していきたいです。
最後に、この論考を書き上げるにあたり、
今まで支えてくださった皆さんに感謝したいと思います。
ありがとうございました。
そして、読者の皆さんへ。
読んでくださり本当にありがとうございました。
次回の論考で成果を発信できるように、
今日から実践研究を進めていきたいと思います。
まだ、20歳、ここからです。
これからも、よろしくお願いします。
2023.7.31 松浦嵩 (13,777字)
参考文献:
①観光庁ホームページ
②由利本荘市ホームページ
③秋田元気村(百合エリア)
④NTTデータ総合研究所
⑤親子ワーケーション情報サイト
⑥DX.WITH
⑦CNET Japan
⑧Re Innovate japan
⑨GLOBIS CAREER NOTE
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