読んでみた③:「夜のピクニック」
何者を読み終わって、翌日にはこちらも読み終わりました。
今回は、恩田陸さんの「夜のピクニック」
第2回の本屋大賞、第26回吉川英治文学新人賞受賞作品です。
何ぞや?と思ったのでWikipedia載せときます。
本に数多触れているであろう書店員さんの投票で決まるのが本屋大賞…自分のような「どの作家さんを見たらいいかわかんない!」方にはピッタリのような。
あと、本の後ろのほうにある他の本の宣伝?からおっ、と思ったものもあったりなんかして。
読後感爽やか
で本題。
舞台は高校。
高校3年生が最後の歩行祭に、というところから始まる。
途方もなく長い距離をほぼ夜通しで歩く、それだけのイベント。
それだけ、ではあるけれども個人ではなくてそれぞれ仲の良い友達とできるからこそ乗り越えられる。
そうでもない仲のクラスメートも絡んでくるから身内だけではない濃さになる…
どれだけ仲の良い友達でも、言えないような秘め事って実際にあると思う。
自分も今の状態にあることはごく親しい人達にしか伝えていないし、それも相談していたから報告しただけに過ぎず…相談していなかったらそもそも誰にも言っていないと思う。
自分の人生で忙しいのに巻き込むのも申し訳ない気がしている。
それ以上のこともきっと、数多生きていればあるだろうと想像に難くない。
そんな風に言ったことで気を遣わせてしまうだとか、罪悪感があるから、ってことで口を閉ざしてしまうことって案外ある気がする。
普段はそれを閉じる余力があるけれども、この歩行祭では体力もそうだしコンディションも磨耗してくる状況。
深夜になると周りが暗くもなってきて、そんな余力がいつの間に失われて、本心がポロポロ出てくる。
それを対話を重ねて消化していくうちに、クラスメートの介入やらなんやらがあってわだかまりも解けていく、といった読後感が爽やかな作品だった。
自分は作品にあるような男女隔てなく話して、青春と感じさせるシーンがなにひとつ出てこないで高校生活を終えて10年以上経過してしまったけれども、わだかまり抜きにしてもこういう青春、それぞれに悩みを抱えながらも凛と感じさせる爽やかな高校生でいたかったなと後悔の念を覚えるような羨望も少し感じた。
それとクラスメートに絡みつつもそのわだかまりを解してくれたのは共に歩いた親友といえる存在も大きなもので。
ここに出てくる友達関係は全てに同調してくれるわけでもなくて、それぞれ違う観点から指摘してくれる存在で。
そういった人間関係の結びつきって素敵だなと思うし、自分はそこについては満たされていると思えるからそこはいいなと感じ入りつつ。
ただ、気に入るからだとか気が合うから一緒にいるわけで、その思考回路がコピペされているわけではないから、そこにもどかしさを覚えることもあるのが人間の不器用さなのか、なんなのか…
当事者側でないとわからないことも多いし、言われたとしても抱えきれるかわからないことを言っても…と特定の話題に閉塞的になってしまうのはわかる気がした。