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日本武道館

大好きなバンドが私を武道館まで連れて来てくれた。日本武道館の日の丸の下でバカでかい音を鳴らす4人を見ていると、どこまでもいけるような気がした。そんな夜の話。

夜行バスで東京に向かい、無駄に多い路線から正しいものを探して九段下にたどり着いた。城門をくぐって歩いた先、放課後Bタイムの文字が見えた。開場時間が近くなるにつれてどんどん人が増えてきて、思い思いの場所で待機する様子を、うきくんは公演内で「放課後みたいだ」と言っていた。17:30を過ぎ、中に入ると体育館の舞台のようなステージが視界に入って鳥肌が立った。18:30を迎えるまでの1時間弱、高鳴る鼓動を抑えることはできなくて、苦しいほどだった。
開演前のアナウンス、曖昧な記憶にはなってしまうけど、とーやま校長が「ハンブレッダーズがいてくれるから大丈夫でしょーーーー!」みたいなニュアンスのことを声をはりあげて言ってくれたときに涙腺が崩壊した。本当にそうだった、ハンブレッダーズに出会ってから今まで、どんなことがあってもハンブレッダーズが大丈夫にしてくれた。いちばん苦しくてつらい場所にいた私を、いちばん楽しくて幸せな場所に連れてきてくれた。ハンブレッダーズがいたから大丈夫だったし、これからもきっとハンブレッダーズがいるから大丈夫になるんだと思う。私たちリスナーの声をそのまま代弁してくれるみたいなアナウンスが嬉しくて仕方なかった。ハンブレッダーズは色んな人に愛されていて、それはハンブレッダーズが音楽で色んな人を愛しているからだと思う。改めて、私が出会ったバンドのすごさを体感したし、この出会いは必然だったんだろうと思った。

ムツムロアキラが手を挙げてSEを止めたあと、4人が鳴らした1曲目がDAYDREAMBEATで、さすがに、というかもう当たり前のように涙が溢れた。この曲がなかったら私はハンブレッダーズに出会えていなかったし、この曲がなかったら私に今はなかったかもしれない。武道館の1万人の前で歌っても、やっぱり私の歌だと確信した。きっと同じように思っている人は沢山いるんだろうと思ったし、みんなでずっとそんな素敵な勘違いをしていたいな、とも思った。この曲を1曲目に持ってきてくれたハンブレッダーズの意図を考えると余計に涙が出た。「終業のベルで一目散 牢獄を抜け出した 一緒に帰る友達がいなくてよかったな」たった1行の言葉遊びが私の光になった。あんなにも消してしまいたかったはずのこの過去は、今となっては私だけの宝物になっている。あの頃ずっと、唇だけで歌っていたこの曲を、みんなで歌える幸せを噛み締めた。
大好きな見開きページのイントロが流れて、ステージ上の幕が開いて映像がページをめくるようになったとき、本当に嬉しくてかっこよくてあまりにも4人が輝いていて、息を呑んだ。私にとって、退屈ばっかの日々に現れた「君」はハンブレッダーズだし、出会ってしまった「夢中になれるモノ」もハンブレッダーズで、この出会いが私にくれたものの大きさを改めて実感した。「大好きなものに大好きって言わなくちゃ!」の歌詞に何度救われたか分からない。「君のせいだよ」ずっと歌ってくれますように。
光の歌い出し「眠れない夜をいくつ数えて 指先に触れた小さくても確かな光」も、私とハンブレッダーズのことを歌ってくれているみたいで、リリース当初何度も何度も繰り返し聴いた。そんな曲をここで聴けて胸が熱くなった。最後、無数の紙吹雪が舞った。ライトに照らされたそれは本当に輝いていて、小さな光、星のようだった。「転がり続けた僕らに星が似合っている」という歌詞とリンクした景色は一生忘れられないと思う。大好きな曲をもっと大好きにさせてくれてありがとう。
ムツムロアキラが「ロックバンドってなんなんでしょうか?」と問いかけ、その答えは「声が出せない人の声を代弁すること」ではないかと伝えてくれた。それを聞いて、このバンドに出会えて本当に良かったと改めて思った。私のことだと思って聴いてきた曲がいくつもあって、私のことだと思えたからこのバンドに救われた。やっぱりこの出会いは必然で、私の人生にハンブレッダーズは必要不可欠なんだと思えた。この言葉から始まったグーでは、みんなの拳が挙がるのも、ピースになるのも、開くのも、全部見えた。止まらない涙で視界が霞む度に涙を拭った。最初は偶然、カミナリ炸裂、そんな出会いが私を日本武道館まで連れてきてくれた。いつの間にか私の人生は、こんなにも幸せで溢れたものになっていた。生きててよかった、本気でそう思う。
アンコールの最後、ムツムロアキラの「最後、全部台無しにして帰りましょう!」の言葉で今の4人で撮ったMV冒頭部分のオマージュが映し出されて、チェリーボーイ・シンドロームが鳴らされたときはさすがにもう笑うしかなかった。こんなにも涙だらけの夜だったのに、最後は笑顔にしてくれる。だから好きなんだ、が詰まっていて、バカでかい声で歌ったし周りもそうだった。初めてハンブレッダーズと出会った夜に、私の全ては始まった。音楽ひとつに人生を変えられるなんて思ってもなかったな。

帰り道、東京駅から夜行バスに乗った。翌朝到着して、バスを降りてから、おみやげのQRコードを読み取って、再生した。ムツムロアキラが言った「1人になってから聴いてください」の言葉の意味がわかって、朝からまた泣いた。この先何度も思い出してしまうような、最高の夜が終わっても、こんな風に希望をくれる。だから生きていける。何回だって言うけど、どん底にいたあの時に出会えたのが他でもないハンブレッダーズでほんとに良かった。この出会いが私の誇りなんだ。


15周年、本当におめでとう、それとありがとう。
あのさ、ほんとに、音楽ってヤバイな。





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