映画『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』感想
予告編
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昨日、今年の劇場版クレヨンしんちゃんの本編映像の一部が公開されました。
今年は初のCGアニメということで、一体どんな話になるのかと思っていましたが……
↓ ↓ ↓ (今年の劇場版の予告編)
『エスパー兄妹』の話じゃん!笑(原作コミック26巻より)
既に一度アニメ化されたエピソードではあるものの、予告編を見る限り、どうやらまた新たな要素も加わっているっぽい……?
つーか何より映像が素晴らしすぎる♡
ということで今日は、同じく原作エピソードから着想を得て作られている劇場版クレヨンしんちゃんの『激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』の感想文だゾ
ラクガキは自由な心の象徴 芸術以上の輝き
めっちゃ観たかったけど公開延期が重なり、なかなか観ることが叶わなかった作品のうちの一つ(2020年9月中旬。コロナ禍の影響で公開延期が続いていたので)。『雲黒斎の野望』以来となる原作漫画のエピソードが原案の映画で、且つ、ぶりぶりざえもんの銀幕復帰作っ!! んもぅ、楽しみで楽しみで仕方が無かったよ!!
描いた落書きが実体化する魔法のクレヨンがキーアイテムとなる本作(以下、実体化した絵を“ラクガキ” と表記)。嬉しそうに好物のお菓子・チョコビを描いたり、しんのすけの想い人である女子大生・ななこお姉さんを描いたり……。けれど残念ながらラクガキのチョコビは不味く、ラクガキのななこお姉さん(以下:偽ななこ)も本物とは似ても似つかない見た目・雰囲気になってしまう。その原因は、原作にもあった通り “絵が下手だから” なのは観ていればわかるのだが、本作ではしんのすけの「オラは絵がおへただから」「(チョコビが不味いのは)下手だからかな…」といったセリフがカットされている。この辺りはとてもイマドキらしいですよね。
とはいえ、原作とは多少の変更を加えていながらも、『クレしん』の本質的な部分はしっかり残っていたのは嬉しい。(ネタバレ......ってほどでもないんですけど→)原作とは若干違うものの、仲間を失ってしまったしんのすけの悲しい心理状態を、雨の描写の変化で表現するシーンがあるんだけど、ここが正に『劇場版クレしん』って感じで良かったですよね。雨が降りしきる中で、ワンカットだけ雨の描写が変わる。それまではずっと “線” で描かれていた雨が、そのカットだけは “丸(=雨粒)” で表現されている......。表現手法自体は決して目を見張る程のものではないかもしれないけれど、表情を映さずにしんのすけの心情を表すことは、しんのすけの(或いは『クレヨンしんちゃん』という作品自体の)ハードボイルド性——笑う時は第四の壁(観客側)に背を向けたり、基本的には泣き顔を見せなかったり——が変わらず残っている証拠だと思うんです。
監督を務める京極尚彦氏、脚本の高田亮氏のお二人は、劇場版『クレしん』での監督・脚本は本作が初めてだと聞いていたけど、こういった “作品の精神性” みたいなものが生きているのは流石だと思います。素晴らしい。監督が変わっても、声優が変わってもクレしんの良さは変わらない。臼井先生が亡くなってしまった後もコミックが続いていたように、アニメでもチーム、ファミリーが出来上がっているんだ、『クレヨンしんちゃん』は永久に不滅なんだと思えた瞬間でもあるんです。
変わらぬ良さで言えば、ぶりぶりざえもんも忘れちゃならない。「お前やっぱりそういう奴だったのかー!」と、お馴染みのセリフを言いたくなる言動の数々は、苛立ちではなくむしろ楽しみ。「そうそう、こいつはこういう奴だった」という喜びがあります。
そして、自身の最期を目前にしても他人の後ろ髪を引くようなことを口にせず、しんのすけのことを励ますような捨て台詞を “しれっと” 残していくスタイルも変わっていなかった。皮肉屋気味なひねくれ者で、ナンセンスなユーモアを持ち、でもキメる時はキメてくれる......。一見すると似ている訳でもなさそうなのに、実はどことなくしんのすけと共通する部分が多い彼。上手く実体化できないラクガキだらけなのに、彼だけは忠実に実体化されていたのは、彼を創り出したしんのすけ本人が、彼のことを深く理解している証なのかもしれない。しんのすけとの凸凹コンビとしては最上級のイマジナリーフレンドだよね。
僕が東京生まれだからそう思うのかな? 今は子供が外で遊べる場所なんてどこにも無い。ましてや落書きなんてした日にゃ、親だとか先生だとか御近所さんだとか、大人同士での揉め事になってしまう。本作で繰り返し口にされていた “落書き=自由” という概念が正しいのだとすれば、今の時代に子供たちの自由は無いと言っても過言ではないかもしれません。
けれど本作のラストでは、今の時代だからこその新しい形での落書きを示唆してくれている。タブレットで絵を描くというのはとてもイマドキっぽいけど、こうやって自由に描けるものがまだあるんだよ、しかも決して消えたりしないんだよと言ってくれているみたい。主題歌の「消さないで 離さないで 残しておいて」という歌詞ともリンクするような気もするしね。この部分の歌詞は、先述の “クレしんの変わらぬ良さ” とも相通ずるものがある気がするから、それもまた良い。
物語の終盤、ピンチに陥った春日部......。しんちゃん達だけが頑張る中で、なんとか状況を変えようと、自分にできることを考え行動するユウマが、遂に我慢できなくなり街の人々に向かって大声で吠えるシーンは面白い。うーん、面白いというか、まるでドラゴンボールの魔人ブウ編で、ミスターサタンが元気玉に協力しない人類に一喝入れたシーンのようにも見えたんです笑。そこで改心(?)というか、しんちゃん達に協力するために踵を返し出すのが、大人ではなく子供主導というのもGood。子供が観る映画としては素晴らしい展開でした。
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