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映画『最高の花婿』感想

予告編
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 先日WOWOWにて放送された『映画工房』の中で紹介されていた本作。当時のフランス映画祭では『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』というタイトルで上映されていたそうな。

 ……っていうか、もう10年近く前の映画なんですね。その頃まだ学生でしたよ。それだけ前の作品なので、宗教とか国籍とか、それこそ結婚観とか、今とはだいぶ違う感覚だった頃の感想文ですが、読んで頂けたら嬉しいです。続編の『最高の花婿 アンコール』の感想文はこちらから。 


シニカルな笑いがいっぱい でもハートフル


 国際情勢なのか、それともハーフタレントの活躍によるものなのか笑、小難しいことはわからないけれど、昔に比べれば現代は、国際結婚のハードルは低くなっています(多分)。

それでも、閉鎖的な印象がある島国な上に、宗教への関心も薄い日本に比べると、フランスは移民も多く我々の想像以上に文化や宗教の違いに疲弊しているのかもしれません。いや、多いからこそ寛容だったりするのかな? 本作の主人公家族だけでフランスの感覚を一括りにはできない。


 そんなフランスの敬虔なカトリックの(かなり)ブルジョワな家庭が舞台。フランス人に見下されるユダヤ人、中国人、アラブ人。その三すくみの中でも見下し、見下され……。でもそこにアフリカ系が入って来た途端、その三すくみは仲良さげに肩を組み、アフリカ系を見下す……。この構図がとても興味深くて面白いんです。まるで現実での関係性そのもの。大仰な言い方をしてしまえば、ある種、世界の縮図とも見て取れる。異質に対する敵意、敵意に対する敵意……と、どんどんと深くなる差別意識や仲違いの悪循環は、エッジが効き過ぎていて笑いに変えづらいけど、“世界” ではなく “一つの家族” を物語の核にしているから笑えてくる。



 両親夫婦、娘夫婦たち、そして末娘とその彼氏etc……。物語の起承転結ごとに、それぞれの夫婦の会話が同時進行で描かれていきますが、細かい文言や状況が違うだけで、やり取りや考え方がほぼ全部一緒なところが面白い。年代や国籍問わず、男の方が器が小さいんだなぁ、と思わされます。

この差別意識、夫婦間のいざこざが笑いの中枢だと思います。この点で言うと特に、末娘の旦那の弱みを握ろうと姉3人の旦那たちで尾行するシーンが、ピンクパンサーの雰囲気を意識したようなBGMも相俟って個人的に超ツボでした。



 差別などピリピリした要素が多数描かれている一方で、実は、それぞれが手を取り合えるようになるための、とても大切なことも描かれている印象。偏見や決めつけのせいで想像できていなかっただけで、思わぬことで共通点があったりするし、些細なことがきっかけで分かり合えることも描かれている。そういったことなどが、本作がフランスで多くの人に愛された証拠になるんじゃないかな。欲を言えば、クライマックスのシーンでは、頑固オヤジ2人にもっと暴れて欲しかったかな笑。


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