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映画『JUNK HEAD』感想

予告編


 本文中で「アップリンク渋谷で観た」と述べていましたが……そうか、まだアップリンク渋谷の閉館前だったのか、としみじみ……。

 ミニシアターなどで上映されていた中、一部で話題を呼び、この感想文を書いてしばらくした後にはTOHOシネマズなどの大手シネコンでも上映されるようになった本作。閉館(2021年5月)の直前、アップリンク渋谷で観た最後の映画でした。

 よければ読んでくださいー。


生命が何だとか


 これは確実に話題の作品になるっ!!……と言いたいところだったんですけども、本作の感想文を書いている時点(’21年3月31日現在)で、既にそこそこ話題になってるっぽくて……笑。完成までに約7年の歳月がかかっているとか、ほぼ一人の手で作り上げられたとか、本作には目を見張るような驚きの要素がいっぱいあるんですが、「話題になるっ!!」とまで言いたくなってしまうのは、これらの特徴云々以上に、「超面白い」というシンプルな理由によるもの。いや、この「話題になる」という言葉は僕の感想ではなく、もはや願望だったのかもしれません。『カメラを止めるな!』(感想文リンク)じゃないけれど、話題が話題を呼び、本作が一つでも多くの劇場で上映されることを大いに期待しているんです。僕はアップリンク渋谷で観たのですが、もしも大型のシネコンで上映される機会があるならば、絶っ対にもう一度観に行きたい。もちろんアップリンク渋谷も素敵な劇場ですが、大きなスクリーンで本作を観られたならば、どれほど幸せなことだろうかと思う。

 僕は映画館で映画を観るのが趣味の人間ですけど、普段ならパンフレットは買わない(お財布事情と、それから置き場所の問題で)。でも買っちゃったよ! なんでも、このパンフレットの売り上げも次回作のための資金源になるんだとか。実は本作は三部作構成のうちの一つで、しかも第二部。なんだこの『スター・ウォーズ』みたいな流れは! 観終わって間もないけども、既に続編が待ち遠しくて仕方がない。



 本作は、ストップモーションで撮られたアニメーション。その作り込み具合については先述の劇場用パンフレットにも載っているのですが、エンドロール中にも制作中の様子が映し出されるから、是非そこも観て頂きたいところです。「うわぁ、こんなに緻密に作っていたんだ」「実際のサイズ感はこのくらいだったのか」というシンプルな驚きを味わえます。

 そんな本作は不思議なことに、生々しいくらいにやたらと〈生命〉というものを意識させてくる。クレイアニメとはまた違う質感や、本作オリジナルの言語が飛び交う独特の雰囲気が漂っているからこそ、ふとした時やここぞという場面で浮き彫りになる生命の描写が印象的になる印象。序盤のシーンで、研究室っぽい部屋で主人公の顔が出てくるシーンなんて特に。機械に覆われた無機質な面を外すことで明かされる彼の顔は、あの空間、というかこの作品においてとても異質。首と胴体が離れ、喋ることもできず、もはや生きているかすら不明瞭なのにも関わらず、瞼を開け瞳が露わになった瞬間に〈生命〉というものを感じずにはいられなかった(この瞬間の目元を本作のポスター等に採用しているのも良い。作品のテーマを予期させてくれる感じ)。こんな感じで、〈生命〉とか「生きている実感」みたいなものを感じた瞬間がいくつもある。

 わかり易いのはやっぱり “血” かな、と。見た目は人形でも、血が流れる描写一つで大きく印象が違います。排泄シーンも同様。もちろん、食べる・食べられるといった食物連鎖というか弱肉強食の描写があるからこそなんですが、排泄行為のたった一つが描かれるだけで、人形に命が宿るようです。意外とこういう描き方は他には無いんじゃないかな?

 あと個人的には名前の存在が一番デカいと思います。ずっとバカやっていたあいつらの大活躍シーン(これは見モノ!)のラストに、ようやく明かされる名前が「え、お前そんな名前だったの?」という意外性以上に、彼らそれぞれの命をより色濃くさせてくれる気がしてならない。だからこそ、その直後のシーンまでもがより一層に映える。



 ところどころで見られるユーモアも面白い。やり取りの良さもあるけど、若干引き気味の間抜けに見える画角が面白さに拍車を掛ける。爆笑というよりは、ついつい笑ってしまうような感じかな。会話シーンも独特で面白い。本作だけのオリジナルの言語だから、言葉の意味はわからない。だからこそ音の響きや語感の良さといったシンプルな要素だけでユーモアに繋がる。どれだけ言葉数が多くても、この独特の雰囲気があるから最期まで楽しめるのかもしれません。



 説明すると長くなっちゃうので割愛しますが、物語の世界観も良い。〈生命〉を求めた結果、生も死もあやふやになった世界で、見たことのない世界や不思議な存在が与えてくれる新鮮な刺激が、「これって何かのメタファーなのかな?」というイマジネーションを活発にしてくれる。そしてこういった思考に陥った瞬間、想像力に浸り、エンタメを楽しみ、散りばめられたユーモアに笑う。ま、要するに最高ってこっちゃ笑。


 なんか色々書いたけど、とりあえずは観た方が良いと思います笑! 作品の面白さ、作り手の狂気も然ることながら、「オレはこの映画を映画館で観ることができたんだ!」という喜びも一入(ひとしお)です。もしも配信やレンタルで本作を観ていたならば、絶対に後悔していたことでしょう。……これに関しては「僕の場合は」ですがね。ほとんどエゴです、すみません。もちろん配信等で観ても十分に面白い映画です。


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