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映画『キングダム 大将軍の帰還』感想

予告編
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フィナーレ


 原泰久氏による同名人気漫画を実写化した映画『キングダム』シリーズの第4作目……ってね、もはや説明不要の話題作。とりあえず先に述べておきますが、めちゃくちゃ面白かったです!

 とはいえ、個人的には、一見さんに優しくないようにも見えてしまいました。本作は「また新たな物語が始動~」みたいな話ではなく、前作から引き続きのストーリーが描かれていきます。本編冒頭には、これまでのあらすじを紹介するシーンが組み込まれており、一年ぶりの続編にお客さんが置いてけぼりを食ってしまわない配慮はありましたが、それでもやはり、一見さんにはオススメしません。内容に着いて行けないというよりは、感情に追い着かない。本作は、興奮や感動といった “ドラマとしての盛り上がり” が多く見受けられるのですが、そういった展開があまりにも早々にやってくる。登場人物への思い入れなり、感情移入なり、過去作未見では確実に置いてけぼりのはず。

 公開日が迫る中で、地上波で過去作が放送されていたのは、『キングダム』を予習するための猶予だったんじゃないかと。特に、僕のように原作漫画未読の人間にとってはなおさらに。なので、過去作を鑑賞した上で本作を観ることを絶対オススメします。……なにより、本項では本編のネタバレがあります故。悪しからず。




 さて本題。過去作同様、大迫力の本作は大きなスクリーン、ならびにIMAXやドルビーなど音響が充実した鑑賞環境に限ります。後半、追い詰められたかのように見えた王騎(大沢たかお)が敵兵たちを一気に吹き飛ばすシーン。それまでのシーンでも重低音が活きる瞬間は多々ありましたが、ここでの槍剣の一振りに重ねられた重低音は、本編中でも最も大きく、強く、劇場に響いていた瞬間でした。

 正確に比較したものではなく、僕自身の体感によるものでしかないのですが、これはきっと間違いない。この重低音の際立ち一つで、追い込まれ、疲弊してなお、如何に王騎という男が強大なのかが一瞬で窺い知れる。と同時に、彼のかっこよさが際立つ。単に迫力や臨場感のためだけではなく、その戦場に居る兵士たちの目に王騎がどう映るのかさえも如実に伝えてくれる音響。


 挙げたら切りがありませんが、本作はシリーズの主人公・信(山崎賢人)ではなく、兎にも角にも王騎が輝きまくっていた映画でした。


 その煌めきは、彼の死に様すらも光り輝かせてくれる。何を言うでもなく、倒れるでもなく、死する正にその瞬間、逆光のためにその姿に影がかかる。そうやって色が抜けて見えることにより死を表現し、同時に、それこそ逆光のおかげで、死してなお、信にとって、秦国の者たちにとって未だ王騎が眩しい存在であることを教えてくれる。もうホントに、語り出したら切りが無くなってしまう。この魅力は、是非ご覧になって味わって頂くしか他にありません。




 シリーズ4作目にして、最終章。どんな着地を決めてくれるのかと楽しみで仕方がありませんでした。先ほどから「王騎、王騎~」と繰り返してはきましたが、なんだかんだで最後はやっぱり、信、そしてもう一人の主人公格である嬴政(吉沢亮)が輝いていたんじゃないかな。そんな話を述べていこうかと。


 王騎と凄まじい闘いを繰り広げた龐煖(吉川晃司)は、因縁の決着に横槍が入ったことに対し「だから戦場は嫌いだ」と吐露する。

 また、戦術的に秦国を追い込み、馬陽の戦いを裏で支配していた李牧(小栗旬)も同じく、勝利のためとはいえ汚れ役や憎まれ役に回らざるを得ない立場などを憂いながら「だから戦は嫌いです」と口にする……。

 一方、本作での戦いを経て、自身の死期すらも悟っていた中、王騎だけは「これだから乱世は面白い」と明言する。このそれぞれの真意の差異によって、如何ほどの強者であろうと、王騎という偉大な男、その魂や精神は、決して計り知ることができないのだと思わされるよう。


 しかし、そんな王騎が認めた者が、二人 ——信と嬴政——。

 「素質ありますよ」という言葉、そして己の槍剣を託すこと。また、自身が仕えるに値する王であることを認め、前王からの遺言を伝えること……。形こそ違えど、それぞれが王騎からのバトンを渡されたことによって、改めてW主人公が強調される

 王騎という偉大な大将軍を失い落ち込む秦国軍の兵士たちの中では信が、王宮にいる高官たちに囲まれる中では嬴政が、この二人だけが大将軍の帰還を誇っていた。戦場と王宮、異なる場所に居ながらも、志や気持ちが共鳴していた二人が描かれての終幕。素晴らしい着地。


 (少し話が逸れますが)ある時、王騎が信に「馬鹿者」と言うシーンがありましたが、クライマックスでは昌文君(高嶋政宏)が王騎に対し「馬鹿者」と言っていた。これはただの誹謗ではなく、「まったく、あなたという人は…笑」というような温かなニュアンスが含まれた言葉……。

 これもまた挙げ出したら切りがありませんが、先述した「素質」や「バトン」についての件、或いは今しがた述べたクライマックスでの信と嬴政の描写等々。単に対比としてだけではなく、前出のシーンが後出のシーンに呼応することで生まれる感動や興奮が、本作にはたくさん詰まっています。本項冒頭辺りで「ドラマとしての盛り上がりが多く見受けられる」と述べたのは、そんな理由から。


 遂に終わりを迎えた映画『キングダム』シリーズ。とても濃厚な5年、製作期間を含めれば8年といったところでしょうか。大きな戦いや長い旅を終えた心地よさに包まれるようなラストでした。エンドロール中の場面写真もまた、これまでの数年間を噛み締めさせてくれる気がします。文句なしのフィナーレ。いやぁ、楽しかった。



ちなみに過去作の感想文もありますんで、よければどうぞー

映画『キングダム』感想文
映画『キングダム 遥かなる大地へ』感想文
映画『キングダム 運命の炎』感想文


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