腱反射はなぜ見るのか?–深部腱反射と病的反射の意義–
ふと「腱反射と病的反射を見る意味ってなんだろう?」と疑問に思いました。
運動器中心に見ることが多く、反射検査をDr.所見で済ましていることがここ最近多かったこともあり、腱反射自体考えられていなかったです。
ですが、ふとカルテ情報で反射検査を見たときに、そもそも何のために行っている評価なのかわからなくなったので一から勉強し直しました😅
今回は、腱反射の意義と臨床解釈の仕方についてまとめていくので、腱反射と病的反射の説明が怪しい人は読んでみてください!
反射とは
まずは、反射の概要についてなので、そこはいいよーって方は、次の項から読んでください😊
上記のように述べられていますが、専門用語いっぱいでわかりにくいですね😅
簡単に言うと、刺激に対して不随意(自動的)に起きる動きのことを指します。
この反射には、表在反射、深部(腱)反射、病的反射や自律神経反射などがありますが、今回は深部反射と病的反射をメインにまとめていきます。
深部反射
上記の画像が、深部腱反射で利用される反射弓になります。
諸々の説明をすると長くなるので、簡潔に深部反射の経路をまとめると、
伸張刺激
受容器(錐内筋線維)
Ⅰa ニューロン
α運動ニューロン
筋収縮(錐外筋線維)
こういった経路を介して反射が引き起こされています。
伸張刺激を受容器にある筋紡錘が察知して、Ⅰaニューロンを介してα運動ニューロンへ興奮性に伝達することで、筋収縮を発生させます。
これが深部腱反射、いわゆる伸張反射ですね。
反射はこの脊髄から抹消の刺激伝達で生じていますが、その他に大脳の運動野(皮質脊髄路)が関わってきます。
運動野が機能することで、伸張反射の感度調節(γ運動ニューロン)とⅠaニューロンの興奮性刺激に対する抑制を行っています。
今回は、γ運動ニューロンについては置いておきます。
つまり、伸張反射は上位中枢の制御を受け、刺激に合わせた反射を適宜発生させているということがわかりますね。
病的反射
では、病的反射はどういった原理なのでしょうか?
病的反射とは、
と述べられており、小児期に出現する原子反射を随意的に抑制ができなくなった結果生じたものと考えられます。
小児では、随意収縮で身体制御ができないため原始反射を用いることで身体制御を行っています。
その後、年齢と共に随意運動が可能となっていくため、原始反射が統合されて出現しなくなります。
つまり、後で話しますが、随意運動が難しい状態で病的反射が引き起こされてくるため、病的反射が陽性となった場合、上位中枢(上位運動ニューロン)に障害があると予測されることになります。
ここまで聞くと、中枢障害の鑑別に病的反射を用いるのは分かったけど、深部反射は何のために見るの?ってなりますよね😊
私もここが疑問に思ってました(笑
深部反射と上下運動ニューロン
深部反射を何のために見るのか?・・・
結論から言ってしまうと、筋緊張の程度・種類を判別するために行うものだと考えます。
それを踏まえて、深部反射について解説します。
まず、深部反射の意義を解説する前に、基礎として上位運動ニューロンと下位運動ニューロンについて把握しておきましょう。
上位運動ニューロンとは、大脳皮質から内包→脳幹→脊髄前角細胞までの経路のことで、錐体路がこれにあたります。
次に、下位運動ニューロンとは、脊髄前角細胞から末梢(筋)に至るまでの経路のことを指します。
さて、上位と下位運動ニューロンがわかったところで、それぞれの経路に障害が生じるとどのような症状が生じるのでしょうか?
上の図を解説すると、
上位は下位に対して抑制性の刺激伝達を行い、下位は筋に向かって興奮性の伝達を行っています。
つまり、上位の障害では下位の抑制が効かず、興奮刺激が過剰となってしまうため、筋緊張・深部反射・病的反射が亢進してしまうのです。
また、下位の障害では、筋に対して興奮性の刺激が伝わらないため、筋が弛緩し、反射も減弱から消失となってしまいます。
障害をまとめると、原則として3つのパターンが考えられます。
上位運動ニューロン障害 → 深部・病的反射亢進
下位運動ニューロン障害 → 深部・病的反射減弱〜消失
上下の共存障害 → 障害部位で減弱〜消失、障害部位以下の亢進
上記のパターンが挙げられますが、実際のところ健常者で反射が出ない人や亢進している人もいますよね?😅
そこが解釈を複雑にしてしまっているポイントで、神経疾患のない高齢者の5〜60%で反射消失or亢進を認めることがあると報告されています。
つまり何が言いたいかというと、反射の亢進・消失自体が神経疾患の有無を表していないということです。
なので、「反射亢進している!中枢の問題だ!」っていうのは間違いではないですが、正解でもないんですよね。
そのため、深部反射では、筋緊張の程度・種類の判別を行い、さらに神経疾患を疑う場合に、病的反射の検査を行うと評価の再現性が増してきます。
このことを踏まえて、次の話にいきましょうか😊
神経疾患の鑑別方法
先ほど、深部反射の亢進・消失だけで神経疾患の有無を判定しないと言いましたが、こうなったら異常だよねって状態はあります。
筋力低下・痙縮(上位疾患の症状) + 反射亢進
筋力低下・筋萎縮(下位疾患の症状) + 反射低下
反射の左右差
脊髄レベルの差
評価の際、上記のような状態であれば神経疾患の影響を疑って治療に臨む必要があると考えます。
簡単に解説すると、1と2に関しては、反射の亢進or低下を確認した際に、上位or下位の症状を疑い、筋力低下などの異常所見があれば神経疾患を疑って良いです。
逆に反射以外の症状がなければ、健常者の反射異常のパターンと考えます。
3に関しては言わずもがな、左右で反射の状態が違うということは筋緊張異常or神経疾患の問題があることはほぼほぼ確定していいです。
4は、損傷した脊髄レベルでは上位からの刺激は伝わっても、脊髄から出発する下位運動ニューロンが機能していないため反射は減弱し、損傷レベル以下には、上位運動ニューロンからの刺激が伝わらないため反射亢進となります。
そして、1〜4の異常所見を見つけた際に、合わせて病的反射を確認することで中枢疾患の影響を断定することが可能となります。
まとめ
今回の内容をまとめると、
★反射亢進で上位の障害を疑う → 病的反射陽性で錐体路障害を断定
※両側性の亢進+病的反射陽性+腹壁反射亢進 → ヒステリー性障害
★反射減弱or消失で下位の障害を疑う
→ 反射減弱or消失が両側性に認められ、感覚障害を伴っていれば、多発性末梢神経障害を疑う
つまり、結論「深部反射は筋緊張異常を評価するもので神経疾患の有無を断定することはできないが、病的反射を組み合わせることで神経疾患との鑑別が可能となる」となります。
運動器の症例などでも、筋緊張亢進している患者さんは頻回に見ると思いますが、なぜ筋緊張が生じているのか評価する際に、反射検査を加えることでより再現性のあるアセスメントにつながるのではないでしょうか😊
※下図が反射の程度で判別できる筋緊張の種類をまとめたものになります。
それでは、今回はこの辺りでおしまいです。
今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います。