外側広筋の評価と治療−走行理解と研究から紐解くトレーニング方法−
早速note用の記事を作成しようと思い、何から書くのがベストか悩みましたが、私が専門としている整形分野について書いていこうと思います。
中でも、組織学や力学についての内容が特に好きなので、まずは筋肉についてまとめていきます。
1発目の今回は、大腿四頭筋に分類される外側広筋について書いていこうと思います。
さらっと書くので、気楽に読んでいただけると幸いです😊
外側広筋の走行
整形分野において筋の走行理解は基本であり、病態理解の根幹とも言えるので、まずは復習していきましょう。
【起始】大転子外側面、転子間線、殿筋粗面及び粗線外側唇
【停止】膝蓋骨の上縁及び外側縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面に付着
【作用】膝関節伸展
【神経支配】大腿神経L2~4
こう見てみると、外側広筋は他の広筋群に比べとても大きいことがわかりますね。
しかも、後面から見てもはっきり分かるほど、後面まで走行が広がってます。
画像では切り取っていますが、外側広筋の上には腸脛靭帯が走行しているのもポイントです。
外側広筋の評価
外側広筋の評価として有名なものとして、エリーテスト(ely test)があります。
このテストは、大腿四頭筋の短縮(柔軟性)の評価に使用されますね。
方法としては、腹臥位にて膝関節を他動的に屈曲させ踵が殿部に付くか確認します。
この時、踵が殿部に付かなければ大腿四頭筋の柔軟性低下、同側股関節屈曲が生じれば大腿直筋の短縮を疑います。
これらが一般的に使用されるエリーテストな訳ですが、手技を工夫することで外側広筋や内側広筋の短縮も鑑別することが可能なんです。
方法は簡単です。
先ほどの腹臥位にて膝関節屈曲させる際に、股関節を内転位と外転位に分けて実施するだけです。
外転位で陽性の場合は内側広筋、内転位で陽性の場合は外側広筋を疑います。
さらに、走行を確認した際に外側広筋の上を腸脛靭帯が走行していましたよね?
つまり、股関節内転のエリーテストが陽性の場合、オーバーテスト(ober test)を行うことで、膝屈曲制限が外側広筋によるものか、腸脛靭帯の影響を受けているのか判別することが可能となります。
大腿直筋との違い
大腿直筋と外側広筋の違い…
それは、二関節筋か単関節筋かということになります。
基本的なことになりますが、大腿四頭筋の中で大腿直筋は唯一股関節を跨いで下前腸骨棘に起始を持ちます。
そのため、外側広筋と違い股関節の運動に影響を与える訳です。
ただ、大腿四頭筋として一括りにされているためか、多くのセラピストが大腿直筋とその他広筋群を分けずにアプローチをしていることがほとんどだと思います。
しかし、スクワット動作一つにしたって大腿直筋と広筋群は違う働きをしています。
研究報告によると、
と報告しています。
つまり、体幹前傾によって大腿直筋にかかる負荷を抑制させられる訳ですが、正確には骨盤前傾によって大腿直筋が短縮位となることで活動が抑制されていると考えられます。
そして、この状態における広筋群の活動は逆に賦活されます。
というのも、大腿直筋による膝伸展モーメントが減少したことで膝関節の安定化を維持するために内側広筋・外側広筋が働き膝関節を支えていると考えられます。
そのため、大腿四頭筋の中でも外側広筋を賦活したいのであれば、スクワット動作時に骨盤前傾角度の増加を誘導するといいでしょう。
さらに言えば、股関節内転モーメントを加えることでより外側広筋の収縮を促通できると考えます。
まとめ
どうでしたでしょうか?
そんなこと当たり前だよって方もいれば、へぇーっと思った方もおられると思いますが、筋肉一つ考えるだけでも考察・治療の幅はぐんっと広がるはずです。
学生時代は、暗記するので精一杯で図表を見るだけで気づけば眠気との勝負なんてこともありましたが😅
組織学は知れば知った分だけ次の患者さんに活きてくることが多いので、これからもまとめていこうと思います。
それでは、今回はこの辺りでおしまいです。
今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います。