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コロナ禍日記

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コロナ禍と出会い直すためにあの頃の日記を載せていきます. ひとりで戦い続けた,面会制限解除までの道のり.
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#コロナ禍の記録

2020年6月23日

「まだ面会できないんですか?」 「身体の痛みだけでなく,精神的な苦痛も和らげていただけると思っていたのに残念です」 毎日のように詰られる. ホスピスのパンフレットを握りしめ皆,初診外来にやってくる. 「家族のケアも行います」 「付きそう家族が宿泊できる部屋があります」 「ボランティアによる行事の数々」 など,商業的な温かい写真とともに添えられた言葉たちが,パンフレットに虚ろに並んでいる. ここに書いてあるのは嘘なんですね,と呆れられることもある. 私も「騙してごめんな

2020年6月17日

ホスピスではゆったりとした時間が流れる中,自分は症状だけにしか目を向けなくなっていた. 痛み,呼吸困難,せん妄・・・ 朝昼のカンファレンスでも,私の口からは薬の話だけ.オピオイドの話,眠剤や抗精神病薬の話,鎮静の話. 「〇〇さん,自宅に帰りたいと行っています」 「そうですか・・・」(こんな時期に無理でしょう.そういえば家族の顔も思い浮かばないな) 「△△さん,ここに来てから全然良くならないって言っています」 「そうですか・・・」(△△さんの病状認識はどうだったっけ・

2020年4月8日

悪疫で最期を迎えた方の物語を報道で知ると胸が苦しくなる. 感染拡大を防ぐために、愛する家族すら患者本人に近づくことさえ許されない.液晶越しに別れを告げられればまだ良い方で,入院した後,最期まで会えぬまま,国によっては遺灰すら戻ってこないという. 私の職場でも感染拡大が日々深刻化するにつれ,「原則面会禁止」の「原則」が「鉄則」になりつつある. そして,私の目の前では,当然のごとく普段と変わらぬひとつひとつの死がある. この悪疫に対する考え方は,事ここに至っても個人差がかな