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🔶私の好きな奈良 アーカイブ② ~2024/11/17

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奈良のいろいろなところを訪れた記録です。あまり馴染みのない人が読んでも魅力が伝わる様、わかりやすく紹介できればと思います。
「🔶私の好きな奈良」シリーズは、月3本ぐらいのペースで新作を公開しています。公開してしばらくは無料…
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記事一覧

🔶私の好きな奈良:世尊寺 日本初の木彫り仏像を安置 太子と推古建立の東西塔

写真は、奈良県南部、大淀町にある世尊寺(せそんじ)です。 一見、田舎にある寂れた古寺ですが、実はこの世尊寺、古くは比蘇寺(ひそでら:比曽寺、窃寺)、吉野寺、現光寺、栗天奉寺と呼ばれ、日本で始めて造られた木彫りの仏像である「放光仏」が祀られていたということで日本書紀にも記載のある由緒ある寺なんです。 古くは聖徳太子が建てた東塔(豊臣秀吉、徳川家康の手を経て現在は滋賀県の園城寺:おんじょうじ に移設)、推古天皇が建てた西塔があった(いずれも現在は塔跡のみ)などの由緒があり、平

🔶私の好きな奈良:秋篠寺 苔生す境内に残る本堂と天平仏 我が国唯一の伎芸天

奈良市の秋篠寺。 秋篠宮殿下の名称の由来となったこともあり、奈良の有名寺院の一つとして知られていますね。 一方で、静寂を重んじるこのお寺は、多人数の団体による拝観は受けつけていないため、奈良には修学旅行で来ただけという方の場合、コースには入っていなかったかも知れません。 人気のお寺ですので、既に個人的に訪れたという方は多いかと思います。 今回は、まだあまりご存じない人にもお伝えできる様、創建からの歴史や現在の姿について、書いてみたいと思います。 創建と歴史 奈良時代末

🔶私の好きな奈良:葛城一言主神社 雄略天皇と対面 のち役行者と対立の伝承

葛城一言主神社(かつらぎひとことぬしじんじゃ)をご存じでしょうか。 奈良県御所市で葛城山東麓に東面して鎮座する神社で、延喜式神名帳における式内社です。 全国の一言主神社の総本社となっており、地元では「いちごんさん」と呼ばれています。一言の願いであれば何でも叶えてもらえる神とされ、「無言まいり」の神として篤い信仰を受けています。 この一言主とは、古事記の下つ巻が初出で、第21代の雄略天皇との対面が描かれています。また、その後も続日本紀や日本霊異記などに登場し、修験道の祖であ

🔶私の好きな奈良:室生寺 女人高野 多くの国宝を有する山峡の名刹

室生寺を訪れたことはありますか? 大和高原と宇陀山地に囲まれた山峡の地にあり、最寄りの近鉄室生口大野駅から7km。駅からのバスは蛇行する室生川の流れに沿って進みますが、途中には集落がほぼありません。 この先に多くの国宝を有する巨大寺院が本当にあるのか?と不安になりながら、途中の停留所には殆ど停まることなく進むと、室生寺前のバス停に到着してほっとします。門前の宿やみやげ物店が、静かに並んでいます。 昔は女人禁制であった高野山に対し女人高野と呼ばれていました。奥まった山峡の

🔶私の好きな奈良:西大寺 出家した孝謙女帝が信頼する道鏡と戦勝祈願し創建

写真は奈良市にある西大寺の東門です。 東と西が違うだけですが、大仏で有名な世界遺産の東大寺と比べると、ちょっと知名度が劣るのではないかと思います。ところが実はこの西大寺は、奈良時代には東大寺に相対・匹敵するほどの大寺だったのです。 今回は西大寺について、その創建から衰退、復興までの歴史と、現在の姿について書いていきます。 孝謙天皇の即位 西大寺の建立を発願したのは、奈良時代後半の孝謙天皇(のちに称徳天皇として重祚=ちょうそ:再び天皇として即位すること)です。 孝謙天

🔶私の好きな奈良:石上神宮 伝承通りに神剣が出土して150年 日本最古の神宮

天理市にある石上神宮(いそのかみじんぐう)。 タイトルの写真は国宝の拝殿、左後方に屋根の千木(ちぎ)が見えるのが本殿です。 日本書紀に記された「神宮」は、伊勢神宮と石上神宮だけで、この石上神宮は日本最古の神宮と言われています。 ところで、「神宮」というのは「神社」とどう違うのか、ご存じですか? 神社本庁のホームページには、以下の記載があります。 整理すると、 ・「神宮」、「大社」、「神社」などは神社名につけられる「社号」 ・「神宮」は皇室の祖先を祀っているか、特別なゆか

🔶私の好きな奈良:聖徳太子の斑鳩宮 三井の地に法輪寺 世界遺産の法起寺三重塔

タイトルの写真は、奈良県斑鳩町の法起寺です。 三重の塔は現存最古の三重の塔として、世界遺産「法隆寺地域の仏教建造物」のなかでは唯一、法隆寺外から登録されています。 法隆寺については47の建造物が登録されており、あまりにも膨大な数の構成資産があるため別の機会に譲るとして、今回は飛鳥の地を離れて斑鳩宮を築いた厩戸王(聖徳太子:574-622年)のこと、当時の時代背景など大まかな流れを整理し、斑鳩三塔に数えられる法輪寺、法起寺に触れてみます。 斑鳩宮建設は推古天皇の時代 日本

🔶私の好きな奈良:吉野神宮 南朝正統論が高まり明治に創建された官幣大社

タイトルの写真は、奈良県南部の吉野町にある吉野神宮の拝殿です。この奥に本殿があります。 8月のある日、お昼前に撮った写真ですが、何か気が付くことはないでしょうか? 光の当たり方とか、影の具合とか… 夏の太陽が建物の背後から射し、逆行気味の写真となっていますね。 ふつう、神社や寺院ではあまり見ない光の当たり具合です。 そう、多くの寺社では本殿が南あるいは東向きに建っているのに対し、この神社の本殿は北向きに建っています。 主祭神である後醍醐天皇が、京都のある北を向いているから

🔶私の好きな奈良:岡寺 草壁皇子が住んだ岡宮跡 名僧達を育てた義淵が創建

岡寺をご存じでしょうか。 明日香村の東側、岡山の中腹にあるこの岡寺は、西国三十三所観音霊場の第七番札所として、また日本最初の厄除け霊場としても知られています。 もともと東光山・真珠院・龍蓋寺(りゅうがいじ)という山号・院号・寺名がありますが、古くから、飛鳥の岡にある寺という意味で、親しみを込めて「岡寺」と呼ばれており、宗教法人としての名も龍蓋寺ではなく岡寺となっています。 開祖である義淵(ぎえん)は、703年に朝廷から僧正(僧官の最上位)に任命されました。大仏建立に尽力

🔶私の好きな奈良:鏡作坐天照御魂神社 三種の神器を造った鏡作職人の氏神

古代の鏡というと、どのようなものを思い浮かべますか? 弥生時代に、中国や朝鮮半島から青銅鏡がもたらされたのが、日本列島における鏡の始まりとされます。当時、鏡は祭祀の道具であり、古墳時代以降は副葬品となるなど、その後も特別なものとして大切に扱われてきました。 八咫鏡(やたのかがみ)が、草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)とともに三種の神器として皇室に伝わっていることはみなさんご存じの通りです。 今回は、そんな鏡を造る古代工人鏡作集団がいたとされる鏡