Casual Meets Shakespeare“MACBETH”
先日(というかさっき)Casual Meets Shakespeare "Macbeth" シリアスver.を観劇してとても楽しかったので多幸感に包まれたまま筆を取った。
頭の中にある演劇への感想をダラダラと自己満で書き連ねる快楽を知ってしまったからかも。
また、観劇を始めて1年ほどの観劇初心者なので解釈や言葉選びが間違っているかもしれないが、ただの自己満なのであしからず。
話が逸れた。
まずこのシリーズは「普段着でシェイクスピア」をコンセプトとしており初心者でも分かりやすい、いわば“シェイクスピアへの入り口”である。
私がこのシリーズを知ったのは前回のオセローでありまだまだ新参者だが前回とても楽しかったので今回も楽しみにしていた。
ちなみに私のシェイクスピア歴としては
ロミジュリ、ヴェニスの商人、お気に召すまま、テンペストに関しては戯曲を読んでおりオセローはこのシリーズで観劇しただけの、まだまだシェイクスピア初心者と言っていいものである。
当然マクベスを読んだこともなかったのでとても楽しみにしていた。(シリアスを観劇する前にコメディも観劇した。そっちも楽しかった。)
まず驚いたのはカンパニーの息の合い方である。
初っ端、開演して10秒。
暗転したあとスポットライトがつくとそこには登場人物があらわれる。
今回の劇場はあまり大きくなく、私は比較的前に座っていたのに彼らが現れたことに驚いた。何故そこにいるのか分からなかった。
だって10秒前にはそこには人一人いなかったから。
これから始まる悲劇を予感する驚くべき初手には圧倒された。
それを作り上げた松崎史也さんの演出も応えた役者の方たちの物語への没入も素晴らしかった。
これによって私は一気にマクベスの世界へと引き摺り込まれた。
私はもともと史也さんの演出が好きだ。通路まで劇場を使った驚きに溢れた演出はいつだってワクワクして幸せな気持ちのまま劇場を後にできる。今回その劇場を目一杯使う私の大好きな史也さんの演出の真骨頂を見た。
客席と舞台の距離が近いあの箱で、役者は通路、バルコニー、舞台上を縦横無尽に駆け巡り芝居をする。それによって出来上がるシーンの奥行きには魅了された。
(ここからはネタバレがあります)
役者の方たちの演技も素晴らしかった。
一人一人が登場人物の生き様をこれでもかというほど見せつけてくるお芝居で、圧巻だった。
まず主人公、マクベス。戦場で突如魔女から予言を受け、混乱し、欲に身を任せ、破滅していく。彼のその破滅への転落していく様子が哀れで、愚かで、美しかった。
特に夫人に煽られて一度殺すことに同意するも怖気付き夫人に叱られるシーンと最後のマクダフに殺される直前が素晴らしかった。
叱られるシーンは彼のまっすぐな心根と王への忠誠、魔女の予言によって生まれてしまった小さなシミのような私欲によって揺れ動き、妻の狂気に取り憑かれていく様は愛おしいとさえ思った。また野心に染まりきって堕ちていったマクベスの最後のシーンもカッコよかった。鯨井さんの演技は彼の心の動きが声色、声の震えその他諸々から強く伝わってきて素晴らしかった。
マクベス夫人は情緒が不安定でずっと危ういのが見て取れるマクベスと対照的に努めて冷静に見えて狂っていく様子が印象に残っている。
あの覚悟の決まったマクベス夫人の目は忘れられない。素晴らしかった。また西葉さんの演技を見たい。
そしてマクダフ一家も素晴らしかった。マクベス夫妻同様、マクダフ夫妻も強い絆で結ばれており献身的に夫を支える良き妻である夫人とその支えに感謝し妻を愛する夫、そして二人の愛を一身に受けて育った純真で可愛い息子。特にマクダフの息子、董絃くんは凄かった。本当にまだ小学生なのか。彼のお父さんを心から尊敬している無垢なあの台詞。暗殺者への恐怖はこちらまで伝わってきた。また、北村健人さんの妻と子を失ったマクダフの悲しさや苦しさもすごい伝わってきて思わず涙した。
そして暗殺者1、2。
二人とも殺陣がカッコよかった。感嘆した。
マクダフの息子を殺すことに躊躇してしまう暗殺者2も、容赦なく殺すも何かを抱えている暗殺者1も、きっと二人にしか知らない過去があり覚悟を決めてこの仕事をこなしていると考えたら本当に好きになってしまった。特に赤澤さん演じる暗殺者1がマルカム王子に詰められた時放った「お前に何が…!」というセリフが忘れられない。(公演アンケートにも書いた)
スコットランドの言葉も分からないのにマクベスに雇われるということはそれだけ場所を転々とし、ようやく安定した給料を払ってくれるような雇い主に当たったんだろうということは想像に難くない。そんな二人(暗殺者1)が全てを持って生まれてきたマルカム王子に攻められた時咄嗟に出たその言葉は心身をすり減らしながらも生き抜くために人を殺してきた暗殺者1を怒らせるには充分だった。
そこのシーンの暗殺者1は本当に鬼気迫っていて好きだった。
あと衣装が素晴らしかった点にも言及したい。黒とシルバーを使った衣装は複雑で美しかった。
生地も少しずつ違うものを使ったりしていて見ていてとても楽しかった。
お芝居の内容としては暗く、ずっと空気が張り詰めていてしんどいものだったが観劇体験としては楽しく幸せなものだった。
カーテンコールで西葉さんが「ドレスコードがあった方がいいんじゃないかと言うくらい洗練されていた」と仰っていたが、本当にその通りだと思った。
はー、お芝居って楽しい。