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詠むための一首評の練習(6) - 人恋ふにあらねきさらぎ雪積めばさ夜更けてひかりいづるわが髪/黒木三千代
人恋ふにあらねきさらぎ雪積めばさ夜更けてひかりいづるわが髪
黒木三千代『貴妃の脂』(1989年)
恥ずかしながら、文語の読みがあやふやだが、雪降る夜に髪の毛に降りかかった雪が輝いている、という光景と思う。
前半は、「人恋しい2月ではないが」と読むのか、「人恋ふにあらね」で切ると、「人を恋しく思うのではないが、2月の雪が、、、」となる。こちらの方は作中の主体がぐっと前に出てきて、後半と逆接で繋がる落差がより大きい。更に「さ夜ふけてひかり」は「さ」が入ることで8音にしていて、しかもここは明らかに句跨りだ。すると第二句も切ったほうが良いのか。初心者には難しい読みだ。「ひかりいづるわが髪」のイメージが美しいが、雪の降る光景に対して作中主体の心情が「あらね」と言いたかった心情をうまく言葉で語れない。
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「日々のクオリア」の評者は「人を恋う心が髪を光らせる」というのが下敷きにあると書いていてさすがだなあと思った。そういう発想はなかった。前半も「人を恋しく思っているせいではないが」と読んでいてやっと分かった。それにしても評者も言う通り、ひたすら美しい言葉の流れに打たれる。
(練習の題材として過去に砂子屋書房のWEBサイトに掲載されている「日々のクオリア」で取り上げている短歌を使わせていただいた。日々のクオリア自体が一首評の記事だが書く前には読まぬようにしている。
誰がどんな歌を詠んでいるのか、初学者にとって歌集を買うのに大変に参考になる記事である)