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シカゴでデザイン大学院生活はじめました。1年前に。(遅

はじめまして👋

現在イリノイ工科大のInstitute of Design(ID)でFoundation+MDes(Master of Design)+MBAのデュアルディグリープログラムに留学しています、Ranです。Desirability(望ましさ)、Viability(実行可能性)、Feasibility(実現可能性)を両立した人に優しいデザインを習得するべく日々修行を積んでいます。

なぜ今noteを始めたのか

実は私が入学したのは2021年の8月。なんと一年も前のことになります。
留学するからには自分の経験を記録したいと前から思っており、noteを始めたいとずっと思っていたのですが、今まで着手できませんでした。理由は極めてシンプルで学校がめちゃめちゃ忙しかったからです🥺特にDual Degreeになると毎学期フル単(18単位)取らないといけないこと、土曜日にMBAの授業があったりと、ほぼ余暇の時間はありませんでした。1学期目は特に4時間睡眠が普通で、5時間寝られたらとっても嬉しい、という感じでした。(私の要領が悪すぎるという説はあるのですが)
やっと留学1年目が終わって落ち着いてきたこの夏休みのタイミングで今までの記録を文字に起こそうと思った次第です。

2021年卒業のShinさん(Foundation+MDes)とEddieさん(Foundation+MDes+MBA)が管理されているこちらのページも参考になるかと思います!

留学前は何をしていたのか

留学前は外資系IT企業のデザイン系組織にシニアコンサル兼UI/UXデザイナーとして5年ほど働いていました。なんだ、デザイン経験者じゃん、と思われるかもしれないのですが(まぁ実際そうなのかもしれませんが)大学では英語学、国際関係論、政治学などを学んでおり、デザインとは縁もゆかりもない生活をしていました。会社にもコンサルタントとして入社し、案件に入っても最初の方は要件定義サポートや要件の詳細をドキュメント化したりしていました。何なら最初の仮配属はSAP系の部門でした。ただ、入社1年目の冬に縁あってエアラインの航空整備士向けiOSアプリを作るプロジェクトに参画させていただき、初めてUIデザインという世界を知りました。
特に私の勤務先のオファリングはB2B(Business to business)系ソリューションがメインだったのですが、B2Bのアプリデザインってかなりロジカルなプロセスなんだなということに気づきました。奇を衒ったかっこいいデザインを作るよりも、どういう理由でこの画面遷移/情報配置になっているのかきちんとお客様に説明できることのほうが重要な能力なのだということです。(※B2C(Business to customer)の文脈では企業のブランディングやビジュアル面での他社との差別化も重要な要素になるのでクリエイティビティがより必要になってきます。)
しかも、弊社では実際にエンジニアの方々が開発もするのですが、そうなるとよほどの理由が無い限りOSが提供する標準的な部品を使ったほうが(Human Interface Guideline, Material Design)開発難易度も低くなるし、バージョンアップ時の保守性も高い。私は要件に沿ってOSのUIテンプレートから一番適したものを選んで一番使いやすいように配置し、その意図を説明できればよかったんです。変な話、美大やデザイン系の学部を出ていない私でもB2B文脈であればロジカルシンキングスキルとクライアントとのコミュニケーション能力(要件を聞き出して精査する能力)があればUI/UXデザインができてしまったんです。(SketchなどのツールとOSのデザインガイドラインは独学しました。)そんなこんなで紛いなりにもUI/UXデザイナーを名乗るようになりました。
社会人1-2年目はコンサルとして、3年目以降は主にUI/UXデザイナーとして構想策定から要件定義、モックアップ作成、テストケース作成などなど開発の一連のプロセスを(コーディングとプロジェクトマネジメント以外)担当していました。

なぜデザイン留学を決めたのか

そんなかんじで実務では特にそこまで困っておらず、上司/同期/先輩/後輩にもとても恵まれていた気がします。それでも30歳を目前にして留学を諦められなかったのは3つほど理由がありました。

Pixel Pusherとしての働き方に飽きてしまった
いくら要件定義でのクライアントとのセッションやユーザーインタビューがあってもやっぱり、Sketchファイルとにらめっこしてああでもないこうでもないと数パターンのレイアウトを作るとうという時間が大半です。3年経って純粋にそれに飽きてしまった感があります。どっちのレイアウト案でもユーザー体験的には大差ないのでは、と思ってしまったり、デザイン経験ゼロのコンサルに「このボタン、目立たせたいんですけどボタンの背景色を赤にしてもらってもいいですか?😄」という無邪気な指摘に対応するのに嫌気がさしていました。(苦笑)何かデザイナーとしての新しいスキルセットがほしかったんです。

UIデザイナーとしてはスキルセットに限界があった
前述したとおり、私はB2Bの文脈でのUI/UXデザインはできましたが、B2C案件であったり少しでもクリエイティブな要素が入ってくると、戦力外であることを痛感していました。B2Cでは逆にOS標準のUIコンポーネントを使うと「おもしろくない」のでUIの見せ方は工夫が必要です。しかし、デザイン系の学部を卒業していないというコンプレックスもあり、型から外れたデザインを考えるのが非常に苦手でした。
B2B案件でもお客さんにロゴのアイデアがほしいと言われることが多々ありました。もちろん私はグラフィックデザイナーではないので、できるはずは無いのですが、専門外ながらも全くアイデアの一つも出せないことに悔しさを感じていました。クリエイティブなデザインを、責任の無い環境で(案件ではない形で)自由に色々試してみたいという思いがありました。

ビジネスデザイナーになる修行がしたかった
Takramの佐々木康裕さんやBIOTOPEの佐宗邦威さんが近年「ビジネスデザイナー」「ストラテジックデザイナー」という肩書で複数書籍も出版していらっしゃいます。ビジネスデザイナー、ストラテジックデザイナーは私の解釈では、何らかのビジネス課題を解決して、人々に良い体験を提供するのですが、同時にそれをビジネスモデルとして成立させる(経済的に持続可能である)ことに責任を持つデザイナーだと理解しています。
弊社では特に特定の業界に深い知識とコネクションを持つマネージャー/パートナーレベルのコンサルタントが提案の段階でどんなソリューションになるのかお客様となんとなく合意しているので、案件が正式に始まって私たちデザイナーが参画した後もそのそも何をするのかに関してはだいたい既定路線でした。なのでどんなにデザイナーがデザイン・シンキングワークショップをしたり、ユーザーリサーチをしても、あまり意味無いのではという感がありました。(リサーチの結果、当初想定していたソリューションが役に立たない、とわかってもそこから全く違うアイデアを提案するのは難しい。。。)つまり提案の段階でデザイナー/ビジネスパーソン両方の目線でお客様にヒアリングをし、解決する課題を特定、あるべきユーザー体験を考え、ビジネスモデルまで考えるスキルが必要です。当然ながら私には現状そのスキルがない且つ日本にはそれが学べる学校もなかったので、佐々木さんや佐宗さんが学ばれたInstitute of Designに留学を検討しはじめました。

あとは会社の先輩が海外の大学院にデザイン修行に行き、輝かしい実績を積まれているのも海外留学に憧れた理由だったと思います。

なぜInstitute of Designなのか

私はID含めて4校受験をしましたがほぼ以下の理由でID一択でした。他の学校は(記念受験も1校ありますが)滑り止めでした。(合格率はIDの方が圧倒的に高い気がしますが笑)

  • 佐々木康裕さんや佐宗邦威さんを始めとするアラムナイ
    特に佐々木さんはIDを「デザインスクールの皮を被ったビジネススクール」だと表現しており、私が学びたいことを学べるような気がしました。(ただ、佐々木さんが在校していた時の名物教授は今ほぼいらっしゃらないので、IDに興味がある方は現在在籍している教授のリサーチが必須だと思います。IDに限らずどの学校もそうだと思いますが、教えるのが上手な教授とそうでは無い教授がいますのでその時々の在校生に聞くのが一番有効かと思います。。。)
    また、IDは特にMDM(Master of Design Methods)という1年のプログラムに入学するミドルキャリアの方々(30代以降、社会人10年目以降)が多いので自分の人脈を広げる意味ではよい学校だと思いました。

  • MBAとのDual Degree
    デザイン系のマスターとMBAを一度に履修できる学校は世界的にも少なく、アメリカに2-3校しかないと思います。MBAはInstitute of DesignではなくStuart School of Businessというイリノイ工科大系列の別の学校で提供されるプログラムです。(このMBAに関してはIDのデュアルディグリー生の間でも賛否両論あるので、もしこのプログラムの履修を検討されている方はご相談ください笑)

  • Foundationプログラム
    アメリカのデザイン系大学院ではデザイン系の学部を卒業していなくてもApplyできる学校がたくさんあります。ただ、入学後どれくらいデザイン未経験者向けのプログラムが提供されているかどうかはよくわからない部分がありました。具体的な例でいうとIllustratorやPhotoshopなどAdobe Creative Suites系のツールが使えない学生でも授業についていけるような配慮(特別コースの提供など)があるのか、もしくはそのようなツールを使わなくても成り立つ授業(紙と鉛筆、もしくはパワーポイントなどで成立する?)なのか。後者だとすると私は前述したとおりブランディングなどのクリエイティブスキルも身につけたかったので私のやりたいこととマッチしません。
    IDではデザインの学部を出ていない学生向けにFoundationという半年のコースが1学期目に提供されます。(その後Master of Designのコースが始まるのでFoundationを履修する生徒は自動的に2年半のプログラムになります)そこではInteraction Design(UI/UX系授業)、Visual Communication(情報設計、ダイアグラム作成、InDesign/Illustrator)、Photography(カメラ、Photoshop)、Product Design(ダンボールを使った工作)などという幅広いクラスが提供され、デザイナーとしての基本的なハードスキル・ソフトスキルを身につけることができます。詳しい授業に関しては後日別途ご紹介しますが、このプログラムは他の学校にはない差別要因だった気がしますし、実際にこのプログラムへの満足度は非常に高かったです。

  • STEM OPT
    IDのMDes(Master of Design)はSTEM認定されているプログラムで、卒業後、法的に3年間アメリカで働くことが許されています。通常の大学は1年だと思います。留学に来る前は、卒業後はぜひアメリカで実務経験をつもうと思っていました。…が、日本人のパートナーと近々入籍することになったので、あちらのキャリアのこともありますし今の所卒業後は日本に帰ってくる可能性が8割くらいです。人生は何が起こるかわかりません。😂良くも悪くも思い通りにはいかないものですがその時々自分が納得いく決断をしたいものです💪

受験した大学院と合否結果は以下になります。

  • Institute of Design, Illinois Institute of Design(Foundation+MBA+MDes)
    合格($45,000のMerit Based Scholarship獲得)

  • Parsons School of Design(Transdisciplinary Design)
    合格 (学費の35%分のMerit Based Scholarship獲得)

  • Royal College of Art(Service Design)
    合格

  • Massachusetts Institute of Technology (IDM)
    不合格

1年Institute of Designで勉強して

正直、期待を上回った部分と下回った部分がありますが(今後少しずつご紹介します)、全体的には非常に満足しています。ただ、IDと他の学校の間で迷っている方に明確にお伝えできるのは、GeneralistになりたければID、特定のデザイン領域のSpecialistになりたければ他の大学院をおすすめします。IDでは、いろんな領域の授業が提供されていて、短ければ7週間で完結します。なのでいろんな領域のデザインを少しずつたくさん学びたい人にはとてもおすすめできる環境です。一方で一つの分野をとことん極めたい方にとっては、その分野の授業の選択肢が少なく感じてしまう可能性があります。私は留学前から、コンサルもしたいし、デザインもしたいし、という形でスキルの幅が自分の強みでしたし、今後もそのように生きていきたいと思っています。(Generalistというより、複数の領域でSpecialistであることが理想的ですが)なので、IDで様々な種類の授業を履修することができて、とても幸せです。
ただ、Generalistになりたい場合でも、すでに実務でデザイナーとして働いている場合や社会人経験が長く、自分の専門領域は変えずに少しデザインの知識を得たい人は2年〜2年半のMDes(Master of Design)ではなく1年のMDM(Master of Design Methods)をおすすめします。今までデザインに関係のない仕事をしていて、デザイナーにキャリアチェンジしたい場合などはMDesがよいと思います。

私は会社に勤めていたら絶対経験することのなかったプロダクトデザインの基礎を学んだり、今まで我流でなんとなくやっていたユーザーリサーチの方法論を学んだりと、当初学びたいと思っていたことは実現できていると思いますし、デザイナーとしてスキルの幅を広げられているという感覚があります。最近2nd semester目が終わってやっと必修が一息ついた(あと3科目ほどありますが)感があるので、次の秋学期からはサービスデザインやシステム思考など、本当に興味がある授業を取ることができるようになると思います!今からとても楽しみです!

終わりに

少し文章が長くなってしまったので、今回はここで終わりといたします!
これからほそぼそと大学院受験対策、シカゴでの暮らし、大学院での学びなどを記録していこうと思います!🍕

この記事がお気に召したら是非スキしてくださると嬉しいです〜!投稿はかなり不定期になりますのでフォローも是非!🐕

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古仲 蘭🇺🇸🍕@Institute of Design
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