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地獄に堕ちた紫式部

今では信じられないのだが、『雨月物語』の序を読むと、「紫式部は『源氏物語』を著したので、一旦地獄に堕ちた」とある。紫式部堕獄説は中世説話集『宝物集』や『今物語』等にあって著名、と高田衛は注している。「嘘物語」を書いたからだとされる。

確かに『宝物集』に「紫式部そらことをもつて源氏物語をつくりしゆへに 地こくにおちて苦患をうくるはやく源氏をやきすてゝ 一日経をかきとふらふへし」と地獄の典獄が言う箇所がある。「そらこと」=「嘘言」なのか。

そして『今物語』には、「あれはなに人そとたつねけれは紫式部なりそらことを のみおほくしあつめて人の心をまとはすゆへに地獄に おちて苦をうくる事いとたえかたし」とある。翻刻と校訂は中川聡氏による

無論、これが累伝説の累の願いともつながるのだし、『ハムレット』で父親の亡霊がやってくるのともつながるだろう。このあたりから、もう一度考え直さないといけない気がする。


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