ノベルゲームを作ろうと思ったら15年かかった話【第22話】再開編⑤この世に神は存在した、それも複数〜素材集め再び〜
これは、サウンドノベルの持つ魅力に取り憑かれ、「自分でもノベルゲームを作ってみたい」という思いを抱き、終わりのないゲーム制作に足を踏み入れた1人の個人ゲーム制作者の物語である。
Nscripterで人生初のノベルゲーム作りを始めた落柿(らくし)。7年の休止期間を経てティラノビルダーで制作を再開した。最初に制作を始めたときからは約10年の歳月が流れており、制作周りの環境の変化に戸惑う落柿であった。
「CDって寿命あんのか……」
落柿は3枚のCDを前に肩を落としていた。
テーブルの上に重ねられているのは「音・辞典シリーズ」。
これらは落柿が「そうだ、ノベルゲーム作ろう!」と思いついたときに集めた効果音素材集である。クローゼットの奥深くから引っ張りだしてきたものの、10年の歳月を経てこれらのCDは起動しなくなっていた。
次に、以前作ってもらっていた効果音をチェックする。こちらは大丈夫そうだ。ただティラノビルダーの公式ガイドブックを読むと、ティラノビルダーで使える音声ファイルはogg形式らしい。以前の効果音はMP3形式で納品してもらっていたため、形式を変換する必要がある。
「今の時代、こう、何かちゃちゃっと無料で変換できるやつがなんかあるやろ!」
時代の変化に気を良くしていた落柿は即座に検索する。あった! その名もVideoProc! いろいろ機能があるらしいけど、とりあえずogg形式にできりゃあなんでもいいや。これもドラッグ&ドロップで簡単に操作できるやんけ。この時代にマジ感謝。
しかしなぜかいくつかのデータはエラーが出て変換できなかった。そして制作担当者とは(自分のせいで)音信不通となっている。残る効果音をどうやって調達するか?
「音・辞典を買い直すか? いや、この時代、きっと効果音もwebデータで販売していたりするはず。検索してみよう」
この時代……2020年に過剰な期待を抱く落柿。
「ああああったーー!! しかも販売どころか無料配布してる? それも複数のサイトで? この10年でなんでこんな神サイトが爆誕してるんですかぁーーーーーーーー???」
時代は期待を裏切らなかった。当時は有料でも見つけることができなかったかゆいところにも手が届くような効果音の数々が無償で配布されていた。
す、すげえ! 何でも揃うよ! ここは何でもありの楽しい駅? ハッチポッチステーションですか??
落柿が「アカイロマンション」を作ったときにお世話になった効果音の主なサイトは以下の通り。「こういう音があったらな?」と思う音は大体見つけられた。すごいよ2020年。
「これなら、背景画像もちゃちゃっと集まっちゃうんじゃないか?」
前回、以前の写真が使えなくなって落胆していた落柿は、喜々として検索を始めた。そして落柿は投稿型の素材サイトの存在を知る。
「会員になれば、撮った写真を誰でもアップロード・ダウンロード可能。クレジット表記不要で一部条件を除き、商用利用も可、だと……」
なんだ。なんでだ。ゲーム制作を再開しようと思ったとたんに、自分に都合のいい情報ばかりが手に入る……? これは、もしかして……運命???
(違うよ?)
「俺のこの手が真っ赤に燃える。ゲームを作れと轟き叫ぶッ!!」
どこかで聞いたような台詞を吐き、落柿はその指を叩きつけ……ることはせずにポチッとキーボードを押した。会員登録作業完了。落柿は「写真AC」の有料会員となった。
「しかし本当にすごい。検索にコツはいるけど、探せばどんな写真でも出てくるな? これなら舞台となるマンションも自分で撮影しなくてもいけそうだ。なんなら選び放題だ。うひひひ……」
しかし落柿はこのときまだ、「選べること」の落とし穴に気づいていなかった。
「いや、このアングルは違うな? もうちょっとこう、引き気味の写真がいいというか……。目線ももう少し高めで……」
「さっきの写真との整合性が取れないな? この床の色・質感と同じような部屋の写真はないのか? もうちょっと探すぞ……」
落柿はPC前に貼り付いて写真素材選びを続ける。
たった1枚の写真を選ぶのに平気で1時間以上を費やし、落柿の時間は溶けていくのだった……。
「アカイロマンション完全版」の完成まで、あと4年。
そんな作者が15年かかって作ったゲームはこちら。
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