部下指導なんてガラじゃない…と嘆くサラリーマンさんを応援📣最高の上司は【見て聞いている】人
2021年、もうすぐ夏です。
そろそろ4月に入社した新入社員が研修期間を終えて、それぞれの現場に配属されてくるという会社も多いのではないでしょうか。6月1日付、7月1日付、また9月・10月が配属だという会社でも、現場を体験させるOJTに切り替わったりする時期だと思います。
社員数の多い会社では、「チューター」とか「指導社員」というような名称で、部署に配属されてきた新人をマンツーマンでサポートする役割が設定されています。
先日は、そんな役割を担うことになった32歳のサラリーマンさんの相談を受けました。
入社しておよそ10年。ようやく色々なことが主体的にもできるようになり、仕事は楽しいんです。自分の業務量はどんどん増えていて、社内でも最も体力と気力がある世代として期待もしてもらっている。だから自分の業務に邁進したいところなんですが、まあ、そこは下を育てないと未来がないのもわかるので、、、笑。
ただ、そもそも人を指導するなんてガラじゃないんですよね。何をどうしたら良いのやら。
ポジティブに成長意欲を持って仕事に臨んでいるハイパフォーマーには、似たような気持ちを持っている方が多いかもしれませんね。
正直、新人のお世話なんて面倒だ。それよりもお客様のお役に立って、成約を増やしていく方が、自分がやるべき会社への貢献だと思う。
それは一理あります。お気持ちわかります。笑
でも相談者さんのおっしゃるように、下が育ってこないと会社の将来は厳しくなります。また、下を育成することは自分の能力アップにも必ずつながります。
対面する経営者の方と話すのにも、部下育成の経験はあなたの厚みを持たせてくれるでしょう。なにせ、人とコミュニケーションして、その人が成長することを支援するというのは、そう簡単なことではないからです。
せっかく回ってきたお役目、ぜひ、自己成長のためにも活かしてください。
【したつもりのコミュニケーションがゼロに?!】
1、人は、聞きたいことだけ聞く
伝える側が、抜け漏れなく全体を伝えていても、受け取る側は、それを全てキャッチするとは限りません。
人は、自分が聞きたいことだけ選択して聞いてしまうのです。
これを「確証バイアス」と呼びますが、人は「自分が受け入れたいこと」や「信じたいこと」だけを、膨大な情報の中から無意識に選択して、そこだけ強く印象づけて、自分の脳にインプットするというクセを持っています。
誰しもそうです。
毎日通っている通勤路で、ずっと前から貼られていたポスターに全く気づかず、何かのきっかけで関係のある事象に目が向いた朝、初めて目に止めて「うわ、こんなことが書かれていたのか」と驚くようなものです。
そこに、変わらずあったものをキャッチするかどうか、見えているもの=視覚には刺激が入ってきているもの、のうち、何を脳に届けるか、意識に入れるかという選択が、毎日、膨大に行われているのです。大半の視覚や聴覚の情報は、脳に入ることなく、感覚器を素通りしていきます。
2、人は忘れる
せっかく上記のフィルターを突破して、脳にインプットされた情報であっても、人間には「忘却」という壁があります。
1日経つと、半分以上は忘れている。忘却曲線とググっていただくと詳細の情報は山ほど出てきます。
さらに、厄介なことに、人は、
「何を話したかは覚えていない」くせに、その時にどんな気持ちになったかという「感情」だけは長く記憶に残すということをやっています。
何を話してたか忘れちゃったんだけど、「めっちゃいい人だったよ」とか
何を言われたか、もう思い出せないけど「とにかく腹の立つ人だったよ」というような話は、皆さんも聞かされたり、言ったりしたことがあるのではないでしょうか。
内容は忘れてしまうのに、感情は覚えている。しかもネガティブな感情ほど長く残ります。
1と2からはっきりわかるのは、
「言った」という伝え手の感覚≠伝わったという事実
「言えばわかる」と考えるのは、あまりにも楽観的すぎる
ということですね💦
人は【自分の話】をしたい動物
おもしろいデータがあります。
人は日常的コミュニケーションのうち、60%は自分の話をしているというのです。これがSNSとなると、実に80%以上とも言われています。ほぼみんなが自分の話を発信しまくっているということですね。誰も聞いてない。笑
また、ハーバード大の研究では、人が自分の話をしているときには、快楽を感じる脳内物質=ドーパミンが放出されていることがわかっているそうです。その量は、一説によると、ドラッグ/とても満足できる食事中/興奮するほどのお金を得た時などと同量のドーパミンだというのです。
自分の話をすることは、気持ちがいいということですね。
これは指導者がぜひ、知っておいた方が良いことです。
部下の話をしっかり聞くだけで、「いい人だなあ」「ありがたいなあ」「この人といると気持ちが上がるなあ」と感じさせることが出来てしまう構造になっているのです。
一方で、「昔の俺はな」「わたしが新人の時には」と指導者の「自分STORY」は、新人にとっては、ドーパミンは出ないもの。選択的に気に入ったところだけを記憶に止め、明日には半分以上忘れている情報、ということになってしまうのが、デフォルトだということです。
一層、やる気がなくなってしまいましたか?笑
一生懸命、自分の新人時代を「講義」してあげる準備は不要です。
新人が、「自分の話をしても良い場なのだ」とリラックスして、本当にあったこと、本当にしてしまった失敗、心の奥で人知れず抱えているトラブルの火種を、話せるようにしてあげることが第1だと思います。
人間の習性を逆に活用すると、あなたは新人との人間関係にあれこれ煩わされて手間を取られることもなく、新人の元気なやる気を引き出して、相手が「欲しい」ところで助言をすることで、一度言ったことを覚えていてくれるようになる…つまりは、「何度も同じ注意をしなくてはならない」ような事態を、回避しやすくなるのです。
指導者の役目は【聞くこと・見ること】
話を聞き、相手が答えを出せるように一緒にいることが指導者=コーチの最も重要な役目だとわたしは考えています。
その時に、相手の思考を深めるための武器が「質問」することです。
あなたからの質問に対して新人の中で内省が深まり、自分の頭で考えて、改善するための思考や行動を導くことができるため、記憶が定着しやすいです。
さて、この最適な「質問」を繰り出すために、どうしても必要なことが1つあります。
それが、普段から相手をよく見て、話を聞いておくことです。
【指導の基本的なフォーマット】
良いコミュニケーションによって、相手の育つ力を引き出すためには、とにかく観察することです。
それによって、いつでも、相手の思考を深める有効な質問をすることができるようになります。相手についての事実をたくさん集めておくことが、相手を育てるための1番の材料になるのです。
指導のフォーマットは基本的には下記の要素で出来ています。
1、事実の収集
いつ、どこで、誰が、何をしたか。
育成する相手が仕事で何をしたか、具体的に観察して起きた「事実」をメモしておきましょう。業務の都合で、目が届かないところに相手がいる場合は、近くで見ている人に協力をあおいで、情報収集をしておくことが良いです。なるべく具体的に事実を集めてください。
2、どんなインパクト(影響)があったか
育成する相手の具体的な行動によって、どのようなインパクトが生じたのか、そこまで事実を集めてください。
気を利かせて余分に資料を準備したことにより、お客様の同伴人数が増えても慌てずに対応できたなど、細かいことから大きなことまでなんでも構いません。
3、それは「わたし」から見るとどう見えるか
「フィードバック」にあたる部分ですね。
最新技術を結集した宇宙ロケットも、打ち上げ直後から大気圏突入までの最初のローンチ段階では、1秒に何回ものフィードバックが、ロケットと指令センターの間で繰り広げられます。
人類の叡智を結集した精密なものであっても、打ち上げてみた直後から、実際に起きている事実をもとに、計画とのズレがあるのか、ないのか、フィードバックを繰り返すことによって、無事に真っ直ぐにすすむことができるのです。
会社に入ったばかり、ローンチ直後の新人さんには、大量のフィードバックが有効です。
実際に起きたこと=事実に基づいて、良いことも悪いことも適切にフィードバックしてあげてください。これが指導社員の最も重要な任務です。
フィードバックする時は、「なぜ良いと思うか」「なぜよくないのか」について、先輩であるあなたの「アイ(I)メッセージ」=(僕は、こうだからこう感じるんだけど、どうかな?)を持って行ってください。
この流れで行くと、事実もそれに対するフィードバックも、全ては育成する相手の話です。一般論や、一方的なこちらの体験談で話されるよりも、新人さんにとっては何倍も興味が持て、脳にインプットしやすいものになります。
4、どう感じたか、これからどうするのが良いと思うかを考えさせる
最後は、こちらの「アイメッセージ」を聞いて、自分としてどう考えるか、よりよく成長するためにできることがあるとしたら何か、という質問を投げて、本人に考えてもらいます。
5、約束の相手になる
「こうする」「次からは事前にコレをやる」など具体的な行動が目に浮かぶところまで決めることができたら、【約束の相手】になってあげましょう。人は、密かに自分の心の中だけで決めた約束は、なかなか守れませんが、一度、言語化して口に出した約束については、実行力が飛躍的に上がることがわかっています。
応援目線で、約束を知っている相手になってください。
【最後に】
部下指導は、立派なお手本をやってみせることでもなければ、持論をトウトウと演説して感服させることでもありません。
よく見て、よく聞いてあげること。
事実を収集すること。
具体的な事実に対して、フィードバックをしてあげること。
それを聞いた相手の思考や新しい行動について言語化させ、約束の相手になってあげること。
これが指導社員の役目ではないかとわたしは考えています。
口は1つしかない。目と耳は2つずつある。
人が人を変えていくほどの影響を与えるためには、自分が話すことではなく、目と耳を使うことです。
二流のコミュニケーターは、口を動かす。
一流のコミュニケーションができる人は目と耳を動かす。
という言葉があるほどです。
一緒に、後輩の成長に寄与できる先輩でいられるように少しずつトライをしていきましょう。応援📣しています。
大澤弘子
サラリーマン応援コーチング
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