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モンゴル、ポルトガル、ブータン、チリ、タヒチ…マイナーな国で撮られた(でもちゃんと面白い)映画5選

皆さんは、映画大好きですか? 私も大好きです。

世界中の様々な国で映画を作ってますが、映画好きを自負する皆さんでも、観ている映画の制作国はせいぜいアメリカ、日本、韓国、イギリス、フランスなど10カ国にも満たないのではないでしょうか。世界には約200の国と地域があって、おそらく半分以上の国や地域は映画を制作しています。でも、様々な事情により、というかアメリカ映画の伝播力が強すぎて面白すぎて、ほとんどの国の映画は観られる機会がありません。一方、配信や宅配レンタルの時代になって、かなりマニアックな国の映画も私たちは見ることができます。私は行ったことがない国のことを想像しやすくするために、いつも映画を見ます。もちろん小説や音楽からもイメージは可能ですが、やはり映像になっている分、映画の方が都市や国をイメージしやすいというのはあります。様々な国名や都市名が会話中に出てきた時に、少し知ってる自分でいたい方にもおすすめです。

そこで! 今日は皆さんが観たことがないであろう5つの国(マイナーだけどちゃんと面白い)の映画を紹介します!


【1本目】モンゴル映画 『セールス・ガールの考現学』

モンゴルの現在地を表す秀逸な映画

あなたはモンゴルという国を知ってますか? さすがに知ってますね。ではモンゴルに行ったことある人は? 行動派の「楽園の地図」読者でも少ないですね。本当は近い国なんですけど。ではモンゴル映画を見たことある人は? おそらく0に近いはずです。なぜならこんなにたくさん映画を観る私でも、モンゴル映画を観たのはこれが初めてだからです。

1本の面白い映画(ドキュメンタリーではなく自主制作でもなく娯楽作)が途上国で撮られるには、それなりの資源が必要です。才能のある映画監督と、面白い脚本が必要ですよね。役者、音楽家、映画制作に精通したカメラマン、音響さん、小道具・大道具など美術スタッフ、照明技師、その他様々な技術のある人々。そして何より映画制作のための予算が必要です。ということは、その国にある程度映画のためにお金を費やす国民が必要です。もちろん国外の視聴者を増やせば映画にお金を費やせる国民の数が少なくてもどうにかなりますが、その場合は国際的なツテを持ったプロデューサーが必要ですし、国際的な視聴者に合わせたそれなりの作品のクオリティが必要になります。

このように考えると、1本の面白い映画がその国の中で作られるということは、それなりに優秀な人材も含めた豊かな資源が必要ということになります。世界には200ヵ国より少し少ない国の数がありますが、おそらく映画を制作していない国の方が多数派です。アメリカや日本のような、毎年見切れない量の映画が制作される国というのは、実はかなり珍しい状況なのです。

さてモンゴルは、映画を作らない国から作る国へと進歩しつつある。そんな予感を感じる映画が『セールス・ガールの考現学』でした。何よりも素晴らしいのは、主題歌、主役、監督、全てがちゃんとモンゴル人が作っているというところです。世界中の人々は、特に若者は、愛と自由を求めるものですが、凍てつく極寒のモンゴルにもちゃんと自由の芽は噴き出てきていると感じさせる、素晴らしい作品です。

私はこの作品で使われているMagnolianというアーティストが好きです(文末にSpotifyのプレイリストを載せておきます)。主題歌や挿入歌のほかにちらっと映画本編にも出演していますが、ウランバートルの街並みを眺めながら走るバスのシーンがかなり好きです。急に映画本編と逸脱するのでミュージカルシーンと一緒で好き嫌いは別れると思いますが。。。

映画の題材として、ポルノショップに勤めることになったと主人公というところから、モンゴルの性事情も垣間見れます。

【2本目】ポルトガル映画 『ポルトガル、夏の終わり』

映画の良し悪しよりも、ポルトガルのシントラに行きたいが上回る!笑

お次は、地球で最も大きなユーラシア大陸、その西の果てにある素敵な国、ポルトガル。そしてポルトガルの世界遺産の街、シントラを舞台にした静かな映画を紹介します。

上記の予告編を見ていただければうなづけると思いますが、私はこの映画の出来そのものよりも、この映画の舞台となっているシントラに行きたくて仕方がない気分になりました。

シントラは市街地に3万人ぐらいの人口が住む、小さな地方都市です。ポルトガルの首都リスボンから、電車で40分ほどで到着します。イギリスの詩人バイロンはこの地を訪れ「エデンの園」と形容したことでも有名です。

シントラはポルトガルの中でも標高が高いので、避暑地として知られていて、ポルトガル王室の離宮「シントラ宮殿」があったり、かつてこの地を支配したムーア人による「ペーナ宮殿」など見どころがたくさんあります。シントラ市内ではありませんが、ユーラシア大陸西端の地、ロカ岬も近いです。

もしも私たちに許される時間があれば、こんな街でのんびりと時を過ごしてみたくはありませんか。そんな気分にさせてくれる雰囲気映画です。

【3本目】ブータン映画 『ブータン 山の教室』

最も早い手段でも、7日間かかる村に派遣された先生

世界には様々な理由で教育を受ける機会を与えられない子供がたくさんいます。多くの理由は貧困や飢餓、情勢不安によって教育の機会を受けれないのですが、ブータンのルナナ村の理由は少し異なります。僻地すぎて、先生を派遣できないか、できてもすぐにいなくなってしまうという理由です。

世界一幸福な国とも言われるブータンは、たった人口80万人、全国民合わせても、山梨県ぐらいの人口しかいません(ブータンは海がないので海なし県で例えてみました)。そんなブータンの首都ティンプーからバスでガサという街へ1日かけてドライブ。そこからなんと7日間歩き、やっと到着するのがこの映画の舞台となるルナナ村です。人口は56人。地球の裏側の街まで早ければ24時間以内に到達する現在、どんなに頑張ってもたどり着くだけで8日以上かかる場所が地球上にあるというのが私たちにとっては驚きですよね。

そんな道路もない村ですから、先生を村へ派遣するのも大変です。ですからこの村には時期によって先生がいたりいなかったりするようです。ティンプーの都会?に暮らす主人公の教育実習生が、村に住んで教材もない中で子供たちになんとか教育を施すうちに、彼自身の心にも大きな変化が現れます。

幸福な国ブータンの、幸福なストーリーをいかがでしょうか?

【4本目】チリ映画 『チリ33人 希望の軌跡』

実際に起きた事故を映画にしたトゥルーストーリー

お次は南米よりチリの映画を紹介します。サンホセ鉱山、あるいはコピアポという地名は知らなくても、チリの鉱山で崩落が起こり、33人の作業員が生き埋めに会うも、事故から69日後に全員が生還するという2010年に起きたニュースを頭の片隅で覚えていらっしゃるかもしれません。この映画はそれを題材にした実話を元にした映画です。物語の多くが鉱山の中で起こるので、観光映画としては少し物足りないかもしれません。それでも私がこのコーナーでの紹介を強く勧めるのは、一つ目に映画としてとても面白いこと、二つ目にこの映画の中にチリ人の明るさが詰まってると思うからです。

もし33人の日本人が鉱山に取り残され、わずかな食料とともに過ごすとしたら、中ではどんな人間模様が繰り広げられるでしょうか。あるいはアメリカ人だとしたら? そこで描かれるのは、国民性でなければなんでしょうか。彼らはチリ人としてこの困難に立ち向かいます。息をもつかせぬ展開ですが、これが事実だなんてたった1人でも死人が出ていたらドキドキハラハラの展開だなんて言ってられません。

10数年前にニュースを見て、どうやってこんな長期間洞窟の下で喧嘩することなく、誰1人欠けることなく生き残ったか不思議に思った方へ。この映画にその疑問への回答が余すことなく描かれております。私はチリ人に生まれ変わってもいいと思った。

【5本目】タヒチ映画 『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』

フランスの画家ゴーギャンは、なぜ晩年をタヒチで過ごしたのか

最後の映画は、制作国はタヒチではありませんが、全編タヒチでロケが行われてますので、太平洋の島国、タヒチの映画として紹介します。

芸術の都パリに生まれた画家のゴーギャンは、フランスの地方都市 ポン・タヴァン 、カリブのフランス領の土地マルティニーク島、一旦ヨーロッパに戻って南仏のアルル、そして太平洋上ポリネシアのタヒチ島に居住を移したものの滞在資金が尽き、一旦パリに戻ったものの、タヒチ滞在が忘れられず、再びタヒチへ。晩年はタヒチ国内のさらに孤島、ヒバ・オア島に移り住み、そこで一生を終えました。

こう見るとゴーギャンは南の島の楽園が大好きで労働が大嫌いという意味で私にそっくりなのですが(笑)、そのゴーギャンがこれほどまでにタヒチにこだわった理由が気になりませんか。どうやら少女(今の時代感覚で言えば完全にNGです)を妻にめとったようですが、それだけでゴーギャンがこの地を愛したとは思えません。豊かな自然、島に残った文化、パリの堅苦しい芸術コミュニティへの嫌悪と様々な理由が考えられます。定職に就かず、エスタブリッシュメントな東京のメディア業界とも距離を置き、ひっそりと書きたい原稿を書く私にとって、ゴーギャンも同じようなノマド人生を過ごしたという事実はとても心強いものでした。少女愛好はいけませんが。。

おまけ

モンゴルのミュージシャン・MagnolianのSpotifyプレイリスト

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※冒頭の写真、ドイツ映画美術館(フランクフルト)

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