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#94 楽しく働く姿を見せること

子どもの頃、僕は漫画家になりたいと思っていた。
絵を描くのが好きで、話を考えることも好きで、そして周りの友達に読んでもらって「面白い」と言ってもらえることが何より好きだったから。
けれど、両親だったか親戚だったか、周りの大人にそれを伝えたときにこう言われたのだ。

「やめた方がいいよ。漫画家なんて大変だよ」

子どもながら無力感を覚えた記憶がある。
自分のなりたい姿は、自分の思ったようなものではない。
そう思った結果、夢が心から離れていってしまったから。

案外、自分の仕事のことも否定的に言う大人は多い気がする。
大学時代のアルバイト先では「こんな仕事は長く続けない方がいい」と言われたことがあるし、大学院では「研究職は食べていくのが大変だから、できるなら普通に就職した方がいい」と言われたこともある。

大人たちは皆、その仕事のリアルを知っているから「やめた方がいい」と伝えてくれたのだと思う。
けれど、その仕事を少しでも志す人間に対して、安易にそれを否定するのは、若い人たちの希望を摘み取ることにならないだろうか。

ある日、友達にこのモヤついた気持ちを話した。
友達は学生の頃からゲームが大好きで、自然とエンジニアを志すようになった。IT企業に数年勤め、今ではフリーのエンジニアとして活躍している。
そんな彼の言葉が、今でも胸に刺さっている。

「色々バイトをしてきたけど、なんか皆苦しそうに働いてたんだよね。そんな姿を見ちゃったら、そこで働きたいなんて思わないよな。
 だけど、エンジニアの先輩を見てたら、すごく楽しそうなの。だから、俺はエンジニアとして働き続けたいって思ったんだよね。
 だから俺たちは、下の世代に楽しく働く姿を見せることが大切なんだよ

そうだ。
大人として、若い人たちに伝えるべきは、仕事がつらいことではない。
大変だけど、働くことって楽しいんだよと伝えることなのではないか。

図書館では、近隣の学校から職場体験の学生を迎え入れている。
中には本が好きで、本気で図書館で働きたいという子もやってくる。

そんな子たちの夢を、僕は絶対に摘み取りたくない。
「図書館司書はね、大変なこともたくさんある。
 だけど誰かの知りたいことのために全力を出せる、とてもやりがいのある仕事なんだよ
そう伝えて、将来の図書館司書を生み出していきたい。

それが、大人が未来の社会を背負う若人にできることだと信じながら。



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