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#57 隣の芝生はいつも青い

この数年、僕にはとある口癖がある。

「羨ましい」という口癖だ。

誰かと話しているとき、ことあるごとに僕は「羨ましい」という言葉を口にしていることに気が付いたのである。
口癖なので衝動的な部分もあるけれど、僕は本当に他人のことをついつい羨ましく思ってしまうのだ。

何気ない会話の中で出る「羨ましい」

ケース1:同僚との会話にて

立竹「この夏はどこかに出かけたりするの?」
同僚「旅行はしないですけど、横浜に出かけます。美味しいものをたくさん食べたくて!」
立竹「おお、いいなぁ、羨ましい! 僕も美味しいもん食べてぇ」

ケース2:館長との飲み会にて

立竹「僕デヴィッド・ボウイが大好きなんですけど、館長はもしかしてリアルタイムでレコードを聴いてましたか?」
館長「ボウイはもうドストライクだよ。レコード屋行ってさ、そりゃもうひたっすらに聴いたねぇ」
立竹「だぁぁ、羨ましいなぁ。生まれてくる時代間違えたかなぁ……!」

ケース3:友達との飲み会にて

友達「こないだ、たまたまSNSの友達がチケット当ててくれて、ラルクのライブ2日間行っちゃってさ」
立竹「わー、羨ましい!!!

羨みすぎである。

ただこれはとても純粋な羨望といえる。
羨ましいと言いつつも、相手が楽しく話している様を見て、僕は満足できているところがある。

しかし、羨望という感情にネガティブをかき混ぜるとどうなるか。

嫉妬である。

嫉妬は心を重くする

口癖なのだから、今に始まったことではない。
過去の僕も今と同じように、他人に対して「羨ましい」と感じることは多々あった。
ただ、過去「羨ましい」と思っていたときは今のそれと違っていた。

あいつは勉強ができていいな。
あいつは彼女がいていいな。
あいつは金を稼げていいな。
あいつは皆から好かれていていいな。
いいな。
いいな…。
いいな……。

羨むときもそうだが、嫉妬しているときも大概は誰かと比較している。
しかし、上の会話例と大きく違うところは、比較してかつ自分を卑下しているところなのだと思う。

上の会話例では、夏に横浜に行けない自分、デヴィッド・ボウイをリアルタイムで聴けなかった自分、ライブに行けなかった自分を否定していない。

けれど、先の例だと、勉強ができない自分、彼女がいない自分、お金を稼いでいない自分、好かれていない自分をどこか否定している。
書いてはいないけど、「どうせ自分なんて」と思っている。
そして、それが他者への嫉妬心へと変わっていく。

このように僕は過去、「羨ましい」という口癖から、よく心が嫉妬に駆られることがあり、それに長い時間苦しめられてきた。
隣の芝生ばかりを見て、勝手にその青さに嫉妬して、自分を痛めつけてきたのである。

自分の芝生を見て育てる

嫉妬という感情は、自己肯定感の低さで生じるというのは心理学を学んだり、色々な記事や本を読んだりして理解することができた。
だから日記を書いたり、鏡の前の自分にポジティブな言葉を言ったりと、できる限り自己肯定をするように努めた。
けれどただただ「自分は素晴らしい」とか「自分は最高」とか、ポジティブな言葉を投げていても、そこに説得力が生まれない。

そこで、僕はふと思ったのである。
「隣の芝生は青い」という表現をよくするけれど、
果たして僕は「自分の芝生」を見たことがあっただろうかと。

自分の持っているものをちゃんと見たことがあっただろうかと。
自分は何も持っていないと決めつけてはいなかっただろうかと。

それから僕は、自分の芝生をきっちり見るよう努めることにした。
自分には何があるんだろう。
自分には何ができるんだろう。
自分は何がしたいんだろう。どうなりたいんだろう。
あまり考えたことがなかった。
人と比較するとき、「どうせ自分なんて」って考えて、何も持っていない気でいた。

つまり、「どうせ」という言葉を口にすることで、自分を知ることを放棄していたのに気が付いたのである。

自分は思った以上に、書くことが好きで、読書が好きだ。
自分には思っている以上に、一緒に呑みに行ける友達がいる。
自分が思っている以上に、人と話すことが好きだ。

などなど、日々自分に注目することで、本当の自分というのをなんとなく知ることができるようになった。

自分の芝生の青さを見つめられるようになったのだ。

それから一種の諦めも持つようになった。
いつ見たところで、隣の芝生というのは青いものなのだ。

隣の青より、自分の青を見よう。そして育てていこう。
そう思えるようになったとき、そこまで他人に嫉妬することもなくなっていったのである。

このnoteでの活動だって、自分の芝生を育てるための行動である。



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立竹落花
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