読書日記『ミ・ト・ン』
「だれかにミトンをあんであげるということは、
その人にあたたかさをプレゼントすることでもあるということ」
私は、このお話をあたたかいお話だと感じました。物語なのでもちろん冷たい場面もあります。けれども、全てが愛に包まれているのです。
物語は、ルップマイゼ共和国に住むマリカが産み落とされてから、旅立つまでの一生を紡いでいきます。
装丁はミトンの模様と思われる赤と青と黄色の可愛い文様。
“おかあさん”や“おじいさん”の登場人物。
そして、やさしい物語。
それらが、私を童話を読んでいるような気持ちにさせます。
私がこのお話を読んでいて思ったのは、このお話は“マリカ”のためのお話だということです。
最初の場面、お話は、マリカが産まれるところから始まります。
“おとうさん”は赤ちゃんの名前を考えます。
“おとうさん”は“お兄さん”に「マリカ、っていうのは、どう思うかな?」と名前について意見を聞きます。
私はその時点ですでに思ってしまったのです。
「なんてピッタリな名前なんでしょう。」と。
それぐらい、この子にはマリカという名前しかあり得ないし、マリカにはこの子しかあり得ないと思ったのです。
もちろん、読み進めた後にも、この人生にはマリカという名前しかあり得ないし、マリカにはこの人生しかあり得ないという結論に達しました。
そんなマリカの人生を覗いて、私はとてもあたたかい気持ちになりました。
マリカは読み手である私達にもミトンを編んでプレゼントしてくれているのかもしれません。
〈あらすじ〉
昔ながらの暮らしを守る小国ルップマイゼで、波乱に満ちながらも、慎ましく温かい生涯を送った女性マリカ。彼女のそばにはいつも、神様が宿る美しいミトンがあった――。小説・小川糸と版画・平澤まりこのコラボレーションが紡ぎだす、愛しい物語世界。
(HAKUSENSHA BOOKS より https://www.hakusensha.co.jp/books/9784592732952)
物語の終わりには、作品のモデルとなった国である「ラトビア」を旅するイラストエッセイも収録されています。物語じたいも童話のように分かりやすく、約170ページの読みやすい長さの本です。
『ミ・ト・ン』
著者/小川糸・平澤まりこ
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