今日のももたろう
ある所におじいさんとおばあさんが住んでおりました。
休日のある日、おじいさんは趣味の畑をしにでかけ、おばあさんはキッチンでお菓子作りをしておりました。
おばあさんがお料理を楽しんでいると、“リリリリ”電話が鳴り響きます。
「あれ、電話なんていったい何の用だろうか。」
電話からきこえる声はお義姉さんの声でした。
「子どもを一人預かってくれないか。」
おばあさんはびっくりして、急いでおじいさんに連絡をとりました。
お義姉さんの話を要約すると、“親戚が1カ月間、出張にいかなければならなくなり、その間学校が近いあなた達に子どもを預かってほしい”ということでした。
おじいさんとおばあさんは悩んだすえに、子どもを預かることに決めました。
子どもの名前は桃。桃はすくすくと育っている元気のいい男の子でした。
桃は慣れない環境の中でも元気に毎日を過ごしていました。
しかし、とある日、桃が落ち込んで帰ってきたのです。
「桃くん、どうしたの?」
おばあさんは優しく話しかけました。
「友達とケンカしたの。」
どうやら、学校でお友達の鬼くんと言い争いになったようです。
おばあさんは、午前中につくっておいたクッキーを渡し、
「仲直りしといで」と桃に微笑みました。
鬼くんはいつも公園で遊んでいる子です。桃は、飼い犬のイヌ吉に話しかけます。
「イヌ吉、いっしょに公園にお散歩に行こう。」
イヌ吉の大好きなおやつを差し出すと「ワン!」嬉しそうに吠えて笑ってくれました。
しばらく、イヌ吉と歩いていると、友達のマサルくんに会いました。
「桃、どこ行くの?」
「公園だよ。」
「え、でも鬼も、今日、公園にいたよ。鬼とお前、ケンカしていたのにいいのか?」
「うん、仲直りしにいくの。」
“あとで俺も遊びにいくから~”というマサルくんに、もらったクッキーを渡した桃は今一度気合をいれて公園に向かいました。
鳥たちは今日も優雅に大空を飛んでいます。
公園につくと鬼くんが遊んでいます。
「ねぇ」
桃が声をかけると鬼くんは少し驚いたようにこちらを見上げます。
「なに」
「今日はごめん。」
「俺もごめん。」
桃の渾身の一撃はしっかりと相手にも伝わったようで、すぐに仲直りをすることができました。
「その犬かわいいな。」
「でしょ。イヌ吉っていうの。」
恥ずかしそうに笑いあう二人。すっかり元通りです。
「いっしょに遊ぼ。」
キーンコーンカーンコーン
5時の鐘が鳴り響きます。
友達と時間いっぱいに遊んだ桃。
おじいさんとおばあさんが待つお家に笑顔で帰って行きます。
めでたし、めでたし。